カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「私はほんとうにバカになったのかもしれないと思った瞬間」~今年最初のドッキリ! 

 雛人形について長年の疑問があり、
 それについて調べながら書く中で、適当なウンチクも加えようと考えた。
 そして最後の下調べとして自分のブログを確認したら――、
 とんでもない事実が判明した。

という話。

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(写真:フォトAC)

【記事を書く上での計画】 

 このブログも17年目、長期休業を除けば週日はほぼ毎日書いますが、一方で手慣れて早くなるとともに一方でネタ枯れで、すんなり進むときとえらく困難なときに両ぶれします。しかし今日の記事ついては3日前から構想が固まっていて、ものすごく速く進む感じがしていました。

 昨日の「3月になりました」をもとに、今日は桃の節句の前日だから「お雛様」について書く。材料としてはつい先日見たNHKチコちゃんに叱られる」に出てきた「内裏雛はなぜ男雛が左?」の答え「大正天皇がそう決めたから」と、これまた最近ネット記事で読んだ「『右に同じ』は、日本語で縦書きの場合、右から左へ行を並べていくために同じ記載が続くときは『同右(右に同じ)』で省略する」という知識。

 文の流れとしては、

  1. 内裏雛は男雛・女雛どちらが右でどちらが左か、長年の悩みだった。
  2. 写真で見るとどちらの並びもありそうだ。
  3. しかし全体として男雛が左の方が多いし、今上天皇の即位の儀でも天皇は明らかに向かって左にいた。
  4. だから男雛は左でよさそうだが、左大臣と右大臣では左大臣が向かって右にいる。官位としては左大臣の方が位は高く、実際に雛人形では年長者に見える。
  5. そうなると内裏雛では(男尊女卑社会では)偉いはずの男雛が向かって左にいて、大臣は偉い方が右にいるという明らかにおかしな状況にあるわけだ。これはどういうことか。

  6. ところで日本語には「右に同じ」という言葉がある。つまり並んだ状態で右の方が上席、つまり向かって左が上席なのだから内裏雛が正解で大臣の方が間違っていることになる。
  7.  いやそんなはずはない。間違っているのは解釈の仕方だろう。

  8. そこでかつて私は、「雛飾りというのは実は特別な場面を切り取ったものだ。それは宮中の大広間で、左右大臣、三人官女、五人囃子などが拝謁している最中、一番うしろにいた絵師が今でいう「ハイ!記念写真を撮りますよ~」みたいなことを言って、そこで男雛・女雛以外の全員が一斉にうしろを向いた――その状態を絵に描いてやがて雛飾りにした。だから男雛は左のままだが、左右大臣は振り向いたために格上の左大臣が右にいるようになってしまった」といった珍説をぶち上げた。

  9. ところが先日、NHKの「チコちゃんに叱られる」を見ていたらこの問題が取り上げられていて、チコちゃんの説明によると、本来は向かって右が上席で、古い雛人形および今日でも「京雛」と呼ばれる人形では古式を守って男雛が右にいる。実際の内裏でも古来ずっと天皇が向かって右(皇后は左)だったが、明治以降、日本が近代化されると西洋に倣って男性を左に置く必要が出てきた。
  10. それを初めて行ったのが大正天皇で、以来、雛人形の世界にもそれが取り入られるようになったのだ。
  11. なお、左右大臣は男性同士なのでこれを変えなかった。また私のこだわった「右に同じ」も実は文筆上の約束事で、実際の人間の位置関係に適用されるものではなかった。
  12. 私はなんと愚かだったのだろう。

――と、こんなふうになる予定だったのです。

 さらにもうひとつダメ押しの小話をつけて、
「ついでですが、替え歌で有名なシンガー・ソングライター嘉門タツオさんが童謡『ひなまつり』の曲に乗せて、『アサリを入れましょ、ボンゴレに~』と歌ったことがあり、以来、ボンゴレはミートソースとナポリタン以外で、私が唯一どんなものか説明のできるスパゲティとなりました」
で締めくくる予定だったのです。
 ところが――
 

【私はほんとうにバカになったのかもしれないと思った瞬間】

 記事を書くに当たって最後の下調べとして、自分が何年か前に書いた『雛飾り=記念写真説』を探したところ、「桃の節句」~男雛・女雛問題に決着をつける - カイト・カフェ、が当たりました。そして愕然としたのです。
 なんと2014年の文の後半は、今日私が書こうと思っていた1~12にまったく同じだったのです。
 違っていたのは男雛が左に変わったのは「明治から」と「大正天皇から」と、情報源が「チコちゃん~」でなかったこと、それくらいです。嘉門タツオさんの「アサリを入れましょ~」まで入っていました。

 つまり7年前、私は長く抱えていた疑問をきちんと解いてブログに残したのに、その後どこかで文字通り“洗脳(=脳みそを洗い流す)”してしまい、すっかり忘れて今ごろになって、新鮮な話としてそっくりな文章を書こうとしていたわけです。

 ああ! 

 私はほんとうにバカになったのかもしれません。
 過去によく知った、あの、同じ話をさも初めてのように重々しく語る「じっ様」の仲間入りです。