カイト・カフェ

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「教員の給与の仕組みと現状」~教員の給与と出世① 

 教員は出世や昇給に対してどんな思いを持っているのか
 そもそも教員の給与体系 昇任の仕組みはどうなっているのだろう
 それに関する優良な記事を見つけた
 しかし――

という話。

f:id:kite-cafe:20191105104427j:plain(「東京都庁」PhotoACより)

【教員の給与と出世】

 ネット上で副校長42万円、校長45万円…「小学校教員の平均給与」調査という記事を見つけました。

 タイトルからは全く想像できないのですが、これは教師の給与体系について、現場の教師が現場の感覚で解説したもので、とても分かりやすく素直に書かれていますから、部外者はもちろん、教員でも自身の給与に不案内な方は是非ご一読いただきたいと思います。

 給与明細を見ると、「当月給料表級号」の欄には、「○級△号」と表示がなされています。あまり知られていませんが教員は副校長・校長以外にも役職が分かれており、等級は役職により変わります。
(中略)
 ただ等級が上がったとしても、教諭から主任教諭だと月数千円、主任教諭から主幹教諭・指導教諭にステップアップしても月数千円~1万円弱程度アップの世界です。責任と仕事量は格段に上がるにもかかわらず、です。
 こういった部分を意識するだけでも、学校や教員に対する見方は変わって来るでしょう。

 また制度と内実の乖離という点でも教えられることは少なくありません。
 中でも民間企業と違って売り上げや契約数といった具体的数値で測れない教員の給与査定に関して
 校長の立場に立って考えると基準があいまいである以上、部下の評価は主観に頼ることになります。しかし「この教員は評価を高くして、あの教員は評価を低く……」としてしまうと、教員同士がギクシャクしてしまうかもしれません。そうなると、円滑な学校経営はできなくなってしまいます。
といったくだりなどは、管理職に近い立場の人間でないとなかなかわからないことです。

 このような背景から校長は、波風立つような評価を嫌う傾向にあります。横並びの好きな公務員らしく、みんな4号昇給、というような、ある意味平等な評価になるわけです。
 その通りです。ことの善悪は別に判断するにしても、現実はそうなっています。普通の教員は、特に悪いことをしない限り、毎年着実に号俸の上がっていく年功序列が基本なのです。

 ただその件に関して不満を言う人も不条理を感じる人もあまりいません。
「教員は給与が安定している」などと、世間から羨望を受けることがありますが、多くが大きな志をもって教師になっています。「子供たちがより良く育ってくれること」は、教師にとって「やる気・喜び」の源であり、その結果が「給与」につながっていると考えているため、正直給与にこだわる人はほとんどいません。

 民間の方の中には眉に唾をつけて聞くかもしれませんが実際その通りで、これだけ働いているのだからもっともらってもいいはずだとか、逆にこれしかもらっていないからこの程度の働きでいいとかいった考え方はほとんどないのです。

 たとえば最近とみに有名になった「教職調整手当」。記事に、
 教員には残業代がありませんので、その代わりとして、給料月額の4%にあたる「教職調整額」と呼ばれる特別手当が基本給に上乗せされています。
とある通り一般職員に自動的に与えられるものですが、これも記事中にある平均年齢43歳の平均給与35万円で計算すると月額1万4千円。文科省の調査では中学校教員の8割弱、小学校教員の55%が毎月100時間以上の超過勤務をしていますから時給に直すと140円以下で働いていることになります。

 無関心にならざるを得ないとはいえ、この“給与に対する無関心”こそが、現在の過重労働の遠因だといえば、一部の人は了解してくれるかもしれません。

【考えを異にする点】

 記事の筆者は板橋区の小学校の現役主幹教諭とのことで、学校では校長、副校長に次ぐ高位に当たります。
 児童生徒と教育のことだけを考えていればいい一般教諭とは違って、学校経営にも気を配らなくてはならない立場です。学校内における活躍の場が変わってようやく給与体系にも気が回るようになってきた、そんなところなのかもしれませんが、優秀な人が勉強しなおして説明してくれると、話はこんなに簡単になるのかと感心させられます。ただしおっしゃることに全面的に賛成できるわけでもありません。

 教員の長時間労働が問題視されている中、「年功序列の是正」「やる気に直結する能力や仕事量に対する評価基準の構築」「役職アップによる魅力的な昇給システム」の3つをクリアしたならば、教員の質は向上し、よりよい職場環境作りにつながると考えます。それらの実現によって、教員が気持ちよく仕事をできるようになることはひいては、その教員と友に過ごす子供たちにもよい影響を与えるのではないでしょうか。
 優秀な人がいかにも言いそうなことです。けれど役職や給与によって教員の意欲を引き出そうという試みがどこまで成功できるかは、眉にたっぷり唾を練りこんで見なくてはならないことです。

 それは筆者ご自身がおっしゃるように、
「子供たちがより良く育ってくれること」は、教師にとって「やる気・喜び」の源であり、その結果が「給与」につながっていると考えているため、正直給与にこだわる人はほとんどいません。
だからです。

 給与にも地位にもほとんどつられない――だから教師は面倒くさくて教育改革はうまくいかないのです。
 その難しさは東京都の制度改革自体が証明しているように思うのですがいかがでしょう。引用した記事の筆者は東京都の方で、だからこそ気づいていないかもしれませんが。

                        (この稿、続く)