常々「注意しましょう」と申し上げているにもかかわらず、畑のど真ん中の丁字路で車にぶつかりそうになりました。
後部座席左に座っていた89歳の母が
「止まって! 止まって! 止まって!」
と叫んだので慌ててブレーキを踏んだのと、相手の車の運転者(女性)の停止も間に合ったので事故にはなりませんでしたが間一髪のところでした。
母は「見えなかった?」と聞き私は「見えなかった」と答えましたが、本当に見えなかった、天から車が降ってきたか、地から湧き出てきたか、いずれにしろ突然目の前に降って湧いて出てきたのです。
何が起きたのか。
【そのとき何が起こったか】
幸い私の車には車載カメラが乗っていたので、家に帰ってから改めて確認してみました。
①この時点では相手の車は見えていません。
風景としては右に野球場のフェンスがあったりその先にアパート群があったり、また、私は突き当りで右折するつもりでしたので、その点でも気持ちが右方向に重くかかっていたのかもしれません。
実はその時、対象の車は左の農業用ハウスの陰にいたのです。
②ハウスの陰から車が出てきました。
③1秒後、車はフロントガラスのほぼ同じ位置にいます。
④さらに1秒後、車はむしろ左に下がります。
⑤車はフロントガラスの中で、さらに下がります。正面に一旦停止の標識があり、路面にも書いてあるのに、おそらく私は右方向に気を取られています。左には何の問題もないと思っているのです。
⑥車はさらに左に移動してピラーに近づきます。ただしもちろん近づいた分、車体は大きく見えるようになっています。
⑦もうぶつかる直前ですが、私は気づきません。
⑧急ブレーキ!!
センターラインを越えないところで停止しましたのでどっちみちぶつからなかったと思いますが、危機一髪でした。
【コリジョン・コース現象】
このように、同じ交差点に直角方向のから、ほぼ同じ速度入ってくる車があると、それを見失ってしまう現象をコリジョン・コース現象というのだそうです。
人間の目は“動いているものには反応しやすいが止まっているものは見落としやすい”という性質があり、上記の条件下では、一連の写真で見た通り、フロントガラスの中で車が止まってしまい見落としがちになるのです。
これについては7年前に
kite-cafe.hatenablog.comというタイトルで紹介し、つい先ごろ新しい知識とともに改めて記事にしました。
kite-cafe.hatenablog.com
そして田舎道を走ることの多い私としては十分注意してきたはずのことです。
今回それにもかかわらず事故直前までいってしまったのは、ひとつにはコリジョン・コース現象は十字路で起こるという思い込みがあって丁字路についてはまったく考えていなかったため。もうひとつは母の用事に付き合って慣れない道を通っていたいたことなどがあげられます。
しかし実は、もうひとつ大きな要素があったのかもしれません。
家に帰ったあと、母からこんな話があったのです。
「あの丁字路ね、私も昔そっくり同じ感じで飛び込んじゃって、車をぶつけちゃったことがあるのよ。それで運転をやめる気になったったんだけど、その時も軽トラが突然横に出てきた――」
親子二代が30年近い年月を経て、同じ場所で同じようなことをやっていたのです。
それは因縁などではなく、あの場所が特に事故を起こしやすい交差点だという証明なのかもしれません。そう言えば畑のど真ん中に一時停止の標識というのも贅沢です。コリジョン・コース現象を起こしやすい魔の丁字路なのかもしれませんね。
皆さまもお気を付けください。
*このあと、フロントガラスの左隅を気にしながら運転してみたのですが、通常その部分はほとんど見えていないことに気づきました。火の手が上がるとか強いフラッシュ光があるといった特別なことのない限り、そこに意識が向かうことはないように思われます。
やはり見晴らしがよく退屈な道でこそ、意図的にあちこち見ながら運転しなければならないということなのかもしれません。