カイト・カフェ

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「残食率はどれくらい?」〜学校給食の話②

 JBpressの『給食の「食べ残し」はどうすれば減らせるのか』について記事を書いたとき、私は目先のことに気持ちを奪われて丁寧な読み込みをしていなかったようです。というのはそこに現れる数字の奇妙さに気づけなかったからです。 例えば、
 環境省は2015年4月、初の大規模調査となった「学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査」の結果を発表した。それによると、2013年度、小中学生1人あたり年間で約17.2kgの食品廃棄物が出たという。また「残食率」つまり出席人数分の給食の提供量に対して残された給食の量の割合は、これを把握する全国約3割の市区町村での平均値で6.9%だったという。
 この6.9%という数字は多いのか少ないのか。100分の7ですから食卓にある料理のうち「味噌汁の半分が残った」、そんな感じの量です。

 私の家は食べ残しの一切出ない家庭(そのように躾け、躾けられた)ですし、一般の家庭では好まれるもの・食べられるものしか出てこないのが普通ですから毎日完食ということも珍しくないでしょう。その一方で7%(ひとりにつき味噌汁半分程度)ならバンバン捨ててしまうといった家庭も少なくないのかもしれません。しかし学校給食は違います。

 子どもたちは自分の好きなものを選んで注文することはできませんし分量も自由に決めることはできません。それなのに7%しか出ないというのはほんとうに少ないと言えるのかもしれません。しかし他方、担任からは個人指導、クラスからは集団圧力をかけられながらそれでも残すと考えると7%もかなり多いような気もします。いったいどうなっているのでしょう。
 記事を読んでいくと謎はさらに深まります。
 農林水産省によれば、既に日本は、年間5800万トンの食糧を輸入しながら、その3割を廃棄している「食品ロス大国」だ。
 日本全体では3割なのに学校給食では7%ととなると、7%はかなり小さな数字に見えます。

 北海道浦河町は、文部科学省の「栄養教諭を中核とした食育推進事業(地域食育推進事業)」の一環で、食に関する指導の計画見直しなどを行った。子どもたちの発達段階に応じた指導などを検討したそうだ。すると、協力校における小学5年生の給食残食率は、3カ月間で30.1%から25.5%に減ったという。取り組めばすぐに効果が現れることを示す事例だろう。
 ちょっと待て。統計の取れた日本全体の3割の学校の残食率が6.9%なのに北海道浦河町では30.1%もあったのが25.5%まで減った」と喜んでいるのです。このレベルで5%強の改善といえば、体重200㎏の人が10㎏痩せるのと同じで、それほど大変ではないのです。ほんとうはもっと減らせていいはずです。

 また、新潟県三条市では、2003年度に11.8%だった小学校の給食残食率が、2015年度には3.3%まで減った
 3.3%は“おめでとうございます”という数字だが、もともとの11.8%は全国平均の2倍近い量です。

 大阪市立の中学校では、給食の3割弱が食べ残しになっているという。  
 もうこうなると無茶苦茶です。

 一般に同じような統計なのに数値が大きく異なるときは「基準が違う」「数値に嘘がある」「統計上のミス」のいずれかです。
 上記の例で言うと、 農林水産省によれば、既に日本は、年間5800万トンの食糧を輸入しながら、その3割を廃棄しているの多くは賞味期限切れで食品工場および店舗の段階で廃棄されるものですから、学校給食の残食率と比べるべくもありません。基準が違うのです。
 では他の数字はいずれかがウソかといえばそうでもないのです。

 学校給食に関する数値で一番信用できるのは環境庁「全国約3割の市区町村での平均値で6.9%」。次が三条市「2003年度に11.8%だった小学校の給食残食率が、2015年度には3.3%まで減った」です。なぜなら環境庁の数字は母数が「全国の3割の小中学校」だからです。とんでもなく大きな数字でこれだと各学校ごとのばらつきはなくなります。
 次の三条市も「市全体」ですからそこそこの数になります。
 しかし北海道浦河市の“協力校”はせいぜいが数校、“大阪市の中学校”は1校でしょう。これだと学校の個性が数値に出てしまいます。
 浦河市の場合は特に残食率の高い学校が協力校になったとも考えられます。大阪市の場合は、本文中にもありますが、学校給食の歴史も浅く、外部委託の弁当方式なので冷たいということもあろうかと思います。
 いずれにしろ本の学校給食の残食率は平均で7%ほど、しかし内容には大きなばらつきがあるというのが実態のようです。

(この稿、続く)