カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「犯罪に巻き込まれる」Ⅲ〜イタリア奇行④

 一刻も早く回線を停止しなければならない。その事態に私たちが最初に考えたのは、日本国内の家族に代行してもらうことです。そこで日本時間午前3時の自宅に電話して妻を起こそうとしたのですがどうにも電話がつながらない
 日本の国番号(81)は知っていましたから「81」を押して市外局番から打ち始めるのですが、それで通じない。その理由が回線の不都合なのか、番号の押し間違えなのか、はたまた別の何かの理由なのか、それすら分からない。
「国際電話のかけ方が分かっていない」からだと理解できば、スマホからネットで「国際電話のかけ方」と検索すればよかっただけのことです。答えは目の前にあったのですが、私たちは間違った方向に誘導されます。電話が掛けられなければLINEの無料通話を遣えばいいやということです。

 妻は、通話はガラケー、ネットはiPadですから呼び出しに応じる可能性はありません。そこで娘のシーナに電話するのですがこれが出てくれない(あとで聞くと通話機能は停止しているのだそうです)。
 そこで日本時間午前3時に起きていそうな息子の友だちを呼び出し、対応してもらうとすぐに返事。それによると回線は本人または家族でなければ停止できないそうで、問い合わせ先の電話番号も知らせてくれますが、国際電話がかけられない状況には変わりありません。ふりだしです。
 そして仕方ないのでもう一度最初から調べ直し、そしてようやくわかるのです。

 海外から日本に電話するには「+」(「010」でも可)をおしてから「81」を打ち、市外局番の「0」を省略してあとは普通に番号を入れればいいのです(ちなみに「+」は電話のキーボードの「0」を長押しすることで入力されます)。
 そんなことは海外旅行をする人のほとんどが事前のどこかで引っかかっているはずです。しかし私たちは親子そろって他人(シーナは他人ではありませんが)任せのいい加減旅行をしているので、まったく引っかからないのです。いい加減の代償をここで支払わされます。

 いったん電話会社に国際電話が通じるとあとはスムースです。
 担当者は親切で、ロックがかけられている以上不正使用や情報漏えいはあまり心配しなくて済むだろうということ、転売が目的だろから中身まで調べられる可能性は少ないこと、ICチップは抜かれてもそこに個人情報は入っていないから悪用される心配もないことなどを知らされます。その上で、「お気を落とさず、元気で頑張ってください」と励ましてももらいました。

 盗まれてから回線を切断するまでおよそ1時間。ロックをかけていなければ許される時間ではありません。そして正直を言うとその時点に至っても、LINE上にあげたクレジットカードの画像について、私は思い出さなかったのです。

 そうとう悔しい思いはしました。しかし私たちは安心して夕食に出て、その夜は静かに眠りにつきました。明日は旅行の最終日。バチカン美術館という最大の目的地が待っています。失ったものは大きいですが、その後得るものを少なくする必要はありません。気持ちを切り替えて楽しんでこよう、そんな気持ちでした。
 朝、目をさますと別の大変が待っていることは想像もしないことでした。

(この稿、続く)