カイト・カフェ

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「正月の我が家に見る世代相とその行く末」~次の20年をどう生きてどう死ぬのか①

 今年の正月は我が家の構成員全員が揃った。
 そしてそれぞれの世代の現在が、鮮やかに浮かび上がった。
 子どもたちはすでに子どもではない。
 私たちはもうすぐ、何かをしてもらう人になる。
という話。(写真:フォトAC)

【正月の我が家に見る世代相とその行く末】

 正月に娘の一家と息子夫婦がともに帰省し、96歳の母も呼んで9人の大所帯で過ごしたら、いくつもの新発見・再発見がありました。そのひとつは娘のシーナも息子のアキュラも30歳代になり、今でも我が子ながらすでに「子」ではないということです。当たり前ですが。

 特にアキュラが一回り大きくなった感じがするのは、娘に言わせると「男は結婚によって育てられる」とかで、とにかく新婦と社会(宝石店・結婚式場・旅行会社等々)の間に挟まれて、やること、やらされることがやたら多く、成長せざるを得ないのだそうです。そう言えば途中で一度、アキュラも「もう、心が折れそう」と嘆いたことがありました。
 
 シーナの夫のエージュは30代半ばに差し掛かり、社会人経験も10年を越えました。そのくらいになると一通りのことは目を瞑っていてもできるようになり、自然と余裕も生まれてきます。
 
 かつて同僚だった独身の若い女性教師が、友だちの母親から結婚のことを聞かれ、
「素敵な男性はみんな結婚している」
と嘆いたら、その母親はこともなげに、
「そうじゃないのよ。男は結婚してから素敵になるのよ」
と答えたそうですが、エージュはまさにそのレベルに達してきて、年長で同性の私から見ても魅力的です。シーナには、
「エージュはこれから10年がもっとも誘惑の多い時期だから、誰かに盗られないように気をつけろよ」
と冗談交じりに言いましたが、実は半分以上本気のアドバイスです。
 もっともそう言う忠告をしなくてはならないほどエージュが魅力的になったのも、シーナが中学生のころから私が伝えてきた、
「できあがった男性を探すのではなく、良き素材を見つけて結婚して、それからじっくり育てなさい」
という忠告を良く守って――というか、良き青年と一緒になって誠実に日常を送って来た結果だと、私は誇らしく思っています。
 ふたりの子に、親として教えることはもうなくなりました。

【四つの世代の世代相】

 母と私たち夫婦と娘や息子の世代、そして孫たち――4つの世代は、いまそれぞれの特徴的な生き方をしています。

  1. 孫のハーヴとイーツは、要するに自分のことだけを考えていればいい世代です。自分のことだけで精一杯です。そんな時代があと20年くらいは続きます。
  2.  娘夫婦と息子夫婦の世代。30代から50代くらいまでの30年間は、家族を守るとともに、自己の人生を生き生きと生きる時代です。生涯で一番面白い時代で、親たちも元気ですからまだまだ介護の問題は考えなくて済みます。
  3. そして私たち――子育てからも仕事からも解放され――というよりは剥がされ、しかし親の介護という点では、まだ多少なりとも社会に対して行うべきことがあります。
  4.  今年97歳になる母も含めて80歳以上は、面倒を見てもらう立場です。この世代が社会や子ども世代に対してできることがあるとすれば、可能な限り健康で、少しでも長く自分のことは自分でできる体力・気力を残しておくこと。しかしこればかりは、気持ち通りには進まないかもしれません。

 この仕訳が、20年ほど経つと一斉にひとつずれます。孫のハーヴたちが人生の最も面白い部分を生き始め、娘や息子たちがそろそろ子育てと仕事からの引退を考え始めます。私たちが介護を受ける側に回り、さすがに20年経てば私の母はいません。私も8割方いなくなっている公算が高い。
 今年の正月は、そういうことが具体的に、はっきりと見えた時でした。あと20年、いや10年ほど過ぎれば、私は何かをしてもらうだけの人になります。
(この稿、続く)