カイト・カフェ

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「老後を在宅で頑張らない人たち」~次の20年をどう生きてどう死ぬのか②  

10年あるいは20年後、
それでも夫婦がそろっていれば何とかなる。
問題はひとり欠けたそのあとだ。
誰もいない家で、ひとりでどれだけ頑張れるのか、
という話。(写真:フォトAC)

【次の20年をどう生きてどう死ぬのか】

 昨日は自分の家族を見ながら、世代ごとに特徴的な生き方があることを発見し、私たち夫婦もそろそろ子育てを完全に終え、母の介護も終わりに近づき、この先20年、いや10年を待たずして「何かをしてもらうだけの人」になるだろうというお話をしました。
 問題は「何かをしてもらうだけの人」になった時、どこで何をしているのかということです。

 曲りなりにも夫婦が揃っている場合は何とかなります。
 現在の予定だと妻よりも私の方が先に老いぼれて、妻に面倒をみてもらうことになります。だからその時になって無碍に捨てられないよう、今のうちから尽くしておきましょう――というか、すでにずいぶん尽くしてきました。
 そしていつしか私は多少世間に迷惑をかけながら、なんとか往生する。今の望みはガンで余命を知りながら、準備を整えて死ぬことですが、こればかりは希望が叶うとは限りません。不慮の事故で明日にも死んでしまうかもしれないからです。

 不慮の事故と言えば予定が狂って妻の方に事故があり、私が妻の介護することになったり、私ひとりが残されたりと、そんなことも考えられます。ですからその場合のことも考えておく必要があるでしょう。
 どちらが残るにしてもひとりになった私もしくは妻は、そのとき我が身の振り方をどうしたらよいのでしょうか。

【母のデイ・サービス施設が潰れそうで・・・】

 しばらく前から、母がデイ・サービスから帰ってくるたびに、
「最近、ひと(利用者)がどんどん減ってサ、寂しくなる一方なんだよ」とか、「一緒にいた◯◯さんも✕✕さんも来なくなって、でも代わりのひとも入って来ないんだワ。だから人が減る一方で・・・」とか言うようになりました。しかし私があまり気にかけないでいたら、いよいよ先日、
「今日、帰りに施設長からお話があって、いよいよ潰れそうだから友だちに声をかけるとか、近所の人を連れてくるとか、なんとか協力してほしいとか言われた。でもお友だちはデイ(サービス)にしかいないしねェ」
とかいった話になりました。

 高齢化社会高齢化社会と言われて久しく、今年あたりからは団塊の世代が続々と後期高齢者になっていくことを考えると、高齢者施設が潰れるなんておよそ考えられそうにないのに、いったい何が起こっているのか――、そう思って先日、母のケア・マネージャが自宅に来てくれた折に訊ねてみました。するとこんな事情を話してくれたのです。

【在宅で頑張らない人たち】

「Tさん(私のこと)のお宅とは、お父様の時から数えるともう20年近いおつき合いになりますけど、最近はこういう例が減って1年程度のおつき合いで終わることが多くなっているのです。
 団塊の世代よりちょっと上くらいの人たちから下は、高齢化社会高齢化社会と言われ続けてきたので、お年寄り自身にそこそこの貯えがある、お金を使い切らないように注意して年老いてきた様子があるのです。
 加えてそのお年寄りの子どもたち、いま働き盛りの40~50代はほとんどが共働きで、お金よりも仕事が大事、時間が大事という人たちがばかりです。

 親子両方にお金があって、しかも子ども世代は忙しすぎて親を支える力がない、なんとか金で解決できる方法はないかと探し始めると、とりあえず有料老人ホームという選択肢が見えてきます。親からすれば別居の子たちにはそもそも自分を支える条件がないし、同居であっても息子の嫁にシモの始末をしてもらうのはいかがなものかと思う、そうなると最近のお年寄りはあまり在宅で頑張ろうとしないのです。さっさと身の回りを整理して有料老人ホームに入ってしまう。その方が楽でいいのです。

 介護保険の中でやろうとすると入れる施設は限られ、なかなか簡単にはいかないのですが、お金を出すとなると選択肢はたくさんあります。だから私とのお付き合いも1年くらいで終わり、あとはどこかの施設を終の棲家としてそこで暮らし始める、というのが普通になっているのです」
 なるほどね、時代は動く。

【一方の極北:やすらぎの郷

 6~7年ほど前、テレビ朝日系列で「やすらぎの郷」という昼ドラマがありました。倉本聰のオリジナル脚本で石坂浩二浅丘ルリ子加賀まりこといった錚々たる役者が総出演でした。物語は高級有料老人ホーム(と言っても個々の部屋はバンガロー形式)の「やすらぎの郷」を舞台に展開するのですが、これにはモデルがあって介護付有料老人ホーム「油壷エデンの園」(*1)がそれだと言われています(こちらはバンガロー風ではない)。

 サイトで調べると、入居時に65歳以上(夫婦で入居の場合は二人とも)で、かつ身の回りのことが自分でできることが条件のようです。費用は一人で入居の場合は2550万円~8020万円、ふたりで入居の場合は4100万円~9570万円だそうです。

 もちろん私にそんな大金はありませんし油壷まで行く気もないのですが、夫婦で好きなだけ働いて貯金ができ、相続する子どももいないといった、今日だとあまり特殊とも思えない状況の人なら、大いに考える余地もあるのかもしれません。残すお金をゼロに近づけられるという意味でも、清々しい選択です。

 いや、いや、いや、話が逸れました。もっと現実的に考えてみましょう。今話しているのは、そこまで高級でなくても、ある程度の段階になったら自ら有料老人ホームに入る、それが最も現実的な選択肢なような気がしてきたということです。
(この稿、続く)