カイト・カフェ

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「ルールをつくると、親がたいへん」~ルールは単純で、少なければ少ないほどいい

子育ての指南書はいくらでも出ているが、
細かく具体的な部分となるとかなり厄介だ。
小遣いをどうするか、勉強をどうさせるか、ゲームとどう向き合うか。
それらは結局、親の能力に関わるのだ。
という話。(写真:フォトAC)

【子どもの小遣いをどう考えるか】 

 子どもの小遣いをどう考えるのかというのは永遠の主題であって、「必要に応じて買ってやればいいのだから小遣いはいらない」という人もいれば、「月額で渡さなければ自主性もやり繰りも身につかない」という人もいます。 
  私の知っている最大の猛者は「毎月5万円渡すから、それで服も学用品も塾の月謝も全部やりなさい」と言って、次の週にはもう大幅値引きのゲーム機(数万円)を買ってあげた小学生の保護者ですが、案の定、このやり方は数カ月を経ずして破綻してしまいました。5万円をすぐに使い果たして、塾の月謝などは親に払ってもらうことになったからです。
 大人もそうですが、金持ちはやり繰りなど考えないのです。小学生に5万円渡してやり繰りを覚えさせようという試み自体が無謀です。

 この問題について、私はひとつの答えを持っています。それは週給制です。
 一カ月に1000円渡していいなら、四分割して毎週250円を渡すのです。わずか250円ですので値の張るものは買えない、しかし菓子など買ったりするとあっという間になくなってしまいます。しかし貯蓄ならできる。こうして子どもは500円のものが欲しければ2週間、1500円のものが欲しければ6週間、手持ちの金を握りしめて頑張ればいいのです。月給制だと2カ月待たないと1500円のものは買えないでしょ?

【我が家の失敗】

 今でもこの「小遣い週給制度」は優れた方式だと思っています。しかし所詮は理想論です。私は身をもってそのことを知りました。
  何がまずかったかというと「毎週250円」を私が守れなかったのです。渡すことを忘れてしまう。“小銭がないからあとで”と言って忘れ、“夜帰ってきたら”と言っては忘れる。

 少額ですので娘の方ももらうことを忘れますが、いつか思い出して、
「お父さん、先週250円もらわなかった」
 それだけだったら「ゴメン、ゴメン」と言って渡すこともできますが、
「先週もらわなかった、その前ももらわなかった」
となると首を傾げます。親を騙して金をむしり取るような子ではありませんが勘違いということはあります。けれど勘違いだと指摘する自信もない。

 カレンダーに記録するということもやってみましたが、書くことを忘れる。金を渡した瞬間は覚えているのですが、近くに書くものがなく、“あとで”と思ったことはすべて忘れられてしまうのです。
 結局わが家も平凡な月給制に戻ってしまい、娘は一週間で使い果たして、欲しいものを手に入れるために2カ月も我慢しなくてはならないという、常識的な小学生になってしまいました。

【ルールをつくると、とにかく親がたいへん】

 ルールや約束の難しさは、守る方より守らせる方の負担が大きいということです。国の法律だって守らせる側の警察が使う資金やエネルギーは、全犯罪者の実行費用およびエネルギーのより何百倍・何千倍も多いはずです。
 
 親子だって同じ。一日1時間は勉強しないさいとか、玄関掃除は毎日しなさいとか、ゲームは1時間までにとか、何を決めてもきちんとしようとすると苦労するのは親の方です。チェックしないきまりは、なし崩しになるのが普通だからです。
 もちろん厳しい親はいくらでもいて、毎日にしても1時間にしても、やったかどうか必ず確認し、やっていなければその場でやらせる、といったこともできます。しかしたいていの親は言いっ放しで、一カ月も放置してからある日気づいて、怒鳴りまくるということになりかねません。
 子どもにしても毎日気を遣って守るより、一か月にいっぺん、1時間ほど怒鳴られる方が楽に決まっています。まさか殺されることもないでしょうから。
 こうしてルールは有名無実になってしまいます。
 
 そうなると分かっているのですから、最初から玄関掃除やゲーム1時間などといったルールはつくらなければよかったのです。つくって上で守らせることができないなら、「親との約束は守らなくても何とかなる」と誤学習させるだけです。
 もちろん勉強1時間はやらせたいですから、1点のみきまりにして必ず守らせます。1項目なら親もできるでしょう。1時間の勉強はしてもらえるのですからゲームについては諦めるか、そもそも買わなければいいのです。
(この稿、続く)