押印廃止と文書のデジタル化・オンライン化で保護者は楽になり、教員は苦しむ。
それだけならまだしも、子どもの躾が妨げられるとしたらどうだ?
親が楽をするほど子どもはダメになっていく。
それを考えると私はもう狂死しそうだ。
という話。
それだけならまだしも、子どもの躾が妨げられるとしたらどうだ?
親が楽をするほど子どもはダメになっていく。
それを考えると私はもう狂死しそうだ。
という話。
(写真:フォトAC)
【公務員(教員)の負担増による有権者(保護者)の負担減】
日本は先進国の中でも最も公務員の少ない国のひとつ(公務員の数の国際比較《2016》)ですが、行政改革のおかげで必要な人員まで減らされ、今回のコロナ禍で保健所は死ぬほど苦労していますし、児童相談所は児童虐待に対応しきれず、学校もアップアップです。
今回の2020.10.20「学校との連絡もハンコレスに 国がデジタル化へ通知」にしても、
保護者の負担を減らし、教員の業務効率化を図る。
の前半はそうであるにしても、後半の「教員の業務効率化」が達成されるかははなはだ疑問なのです。保護者が楽をするために教師が苦労する仕組みになっていないか、眉に唾をつけて吟味しなくてはなりません。
【デジタル化で保護者の負担は軽くなるか】
もちろん楽になるに決まっています。政治家が有権者に苦痛を強いることはありません。
これまで紙ベースで届いていた学校だよりやらアンケートやらがオンラインで届くとなったら、小学校入学以来、毎日毎日、延々と繰り返されてきた親子の会話、
「ねえ、今日は金曜日なんだから学年だよりがあるはずでしょ。なぜ帰ってきたらすぐに出さないの」
「え? 忘れたって? あんたいつも何してんのよ。先生からもらったらすぐにカバンに入れればいいだけじゃない。帰りの会で配られて、そのとき目の前でカバンの口が開いているわけでしょ? どうやったら忘れることができんのよ?」
「え? あった? 当たり前じゃない。それでなかったらあんたはバカよ」
「ゲッ!? 何これ? グチャグチャじゃない、おまけに端はちぎれているし、どういう入れ方をしたの? まさか丸めて入れたわけじゃないでしょうね? ちょっとカバンを見せてごらんなさい?」
「エッ!? これなによ? 先週渡したPTA研修会の申し込み、結局、出してなかったの? どーすんのよ、もう締め切り過ぎてんのに!」
「あんた、いったい、どういうふうにカタつけてくれんのよ!? このこと」
が、すべて胡散霧消してしまうのです。それだけでも保護者の負担減には大きなものがあります。
朝日新聞の別記事(2020.10.20「学校便りもデジタル化? 保護者ら歓迎『メールで十分』」)には、保護者のこんな声が紹介されています。
次男の通う公立小学校では「お便り」はすべて紙。なくしたり、ランドセルの中で眠らせていたりすることも少なくない。
親が深夜まで仕事で、すぐに対応できない家庭もあり、押印して提出しなければ参加できない水泳指導などの書類は、自分で押印している子もいると聞く。女性は同じクラスの保護者でLINE(ライン)グループを作り、「今日、これ提出です」などと情報交換して、提出忘れがないようにしてきた。
これまで紙ベースで届いていた学校だよりやらアンケートやらがオンラインで届くとなったら、小学校入学以来、毎日毎日、延々と繰り返されてきた親子の会話、
「ねえ、今日は金曜日なんだから学年だよりがあるはずでしょ。なぜ帰ってきたらすぐに出さないの」
「え? 忘れたって? あんたいつも何してんのよ。先生からもらったらすぐにカバンに入れればいいだけじゃない。帰りの会で配られて、そのとき目の前でカバンの口が開いているわけでしょ? どうやったら忘れることができんのよ?」
「え? あった? 当たり前じゃない。それでなかったらあんたはバカよ」
「ゲッ!? 何これ? グチャグチャじゃない、おまけに端はちぎれているし、どういう入れ方をしたの? まさか丸めて入れたわけじゃないでしょうね? ちょっとカバンを見せてごらんなさい?」
「エッ!? これなによ? 先週渡したPTA研修会の申し込み、結局、出してなかったの? どーすんのよ、もう締め切り過ぎてんのに!」
「あんた、いったい、どういうふうにカタつけてくれんのよ!? このこと」
が、すべて胡散霧消してしまうのです。それだけでも保護者の負担減には大きなものがあります。
朝日新聞の別記事(2020.10.20「学校便りもデジタル化? 保護者ら歓迎『メールで十分』」)には、保護者のこんな声が紹介されています。
次男の通う公立小学校では「お便り」はすべて紙。なくしたり、ランドセルの中で眠らせていたりすることも少なくない。
親が深夜まで仕事で、すぐに対応できない家庭もあり、押印して提出しなければ参加できない水泳指導などの書類は、自分で押印している子もいると聞く。女性は同じクラスの保護者でLINE(ライン)グループを作り、「今日、これ提出です」などと情報交換して、提出忘れがないようにしてきた。
【親は躾をしなくていい】
LINEグループをつくってママ友から提出物を聞くなんて、恥ずかしくないのでしょうか? 私なら舌を噛んで死にたくなるところです。
子どもが毎朝ランドセルの中を整理して、本やノート、宿題を確認する、親から渡された提出物は学校で真っ先に先生の机の上に置く、帰りに学校で渡されたプリントはきちんとクリアファイルに入れて持ち帰り、家に着いたら真っ先にテーブルに置く――って、基本的な躾じゃないですか。
もちろん難しいことですよ。難しいからいつまでも繰り返さなくてはならないのですが、やめていいことではありません。だって「忘れ物をしない」「書類はきちんと扱う」「カバンの中はいつも整理しておく」等々は大人になっても必要な最低限の技能じゃないですか。営業職に就いて取引先で、
「あ、すみません。書類、忘れました」
「あ、契約書、グチャグチャになってしまいましたけど・・・いいですよね?」
で認めてもらえるほど、世間は甘くないでしょ?
次男の通う公立小学校では「お便り」はすべて紙。なくしたり、ランドセルの中で眠らせていたりすることも少なくない。
などと、プリントが届かないのは息子が悪いのではなく、紙で発行する学校が悪いみたいな言い方をする母親です。自分で子どもの躾をするなんて真っ平だと思っているのかもしれません。命に関わる水泳カードの押印さえ面倒くさがる人ですから、躾が面倒だというのも無理はないのかもしれません。
(私は子どものもってきたカードに押印するよりも、スマホの電源を入れてアプリを開き、そこから水泳カードのページを探して「水泳可」のボタンをタップする方が楽だという若い世代の気持ちがわかりません)
子どもが毎朝ランドセルの中を整理して、本やノート、宿題を確認する、親から渡された提出物は学校で真っ先に先生の机の上に置く、帰りに学校で渡されたプリントはきちんとクリアファイルに入れて持ち帰り、家に着いたら真っ先にテーブルに置く――って、基本的な躾じゃないですか。
もちろん難しいことですよ。難しいからいつまでも繰り返さなくてはならないのですが、やめていいことではありません。だって「忘れ物をしない」「書類はきちんと扱う」「カバンの中はいつも整理しておく」等々は大人になっても必要な最低限の技能じゃないですか。営業職に就いて取引先で、
「あ、すみません。書類、忘れました」
「あ、契約書、グチャグチャになってしまいましたけど・・・いいですよね?」
で認めてもらえるほど、世間は甘くないでしょ?
次男の通う公立小学校では「お便り」はすべて紙。なくしたり、ランドセルの中で眠らせていたりすることも少なくない。
などと、プリントが届かないのは息子が悪いのではなく、紙で発行する学校が悪いみたいな言い方をする母親です。自分で子どもの躾をするなんて真っ平だと思っているのかもしれません。命に関わる水泳カードの押印さえ面倒くさがる人ですから、躾が面倒だというのも無理はないのかもしれません。
(私は子どものもってきたカードに押印するよりも、スマホの電源を入れてアプリを開き、そこから水泳カードのページを探して「水泳可」のボタンをタップする方が楽だという若い世代の気持ちがわかりません)
【メールを開くな】
そんな調子ですから学校に対する要求には際限がありません。
「担任に相談があって電話しても、会議や授業でなかなかつかまらないこともあり、メールでやりとりできたら本当に便利です」
はい、そのメールのお返事、先生は会議も授業もない時間、つまり勤務時間外に書くことになるのです。
学校が教員あるいは学校自体のメールアドレスを公開することは、危険だと私は思っていますが、文科省は気にならないようです。
中央省庁は縦割りが徹底しているそうですから、つい先日、河野行政改革担当大臣がウェブサイトに「目安箱」を置いたら、9時間で3000件もの書き込みがあって慌てて閉じたという事実を知らないのでしょう。
教師や学校のメールアドレスはそのくらいの覚悟がないと開いてはいけないのです。
匿名の電話ならかけ直すこともしなくて済みますし、手紙ならそもそも最初の返事も書かなくて済みます。しかし電子メールはすべてに返事を書かないと、中に必ず激怒する人が出てきます。だから教師は届いたメールすべてに返事を書き続けるしかないのですが、それでも文科省は保護者の利便性を優先するのでしょう。
萩生田大臣なら、勤務時間外の大仕事という点は大問題としても、保護者と学校を繋ぐ大切なツールだなどと平気で言い出しそうです。
「担任に相談があって電話しても、会議や授業でなかなかつかまらないこともあり、メールでやりとりできたら本当に便利です」
はい、そのメールのお返事、先生は会議も授業もない時間、つまり勤務時間外に書くことになるのです。
学校が教員あるいは学校自体のメールアドレスを公開することは、危険だと私は思っていますが、文科省は気にならないようです。
中央省庁は縦割りが徹底しているそうですから、つい先日、河野行政改革担当大臣がウェブサイトに「目安箱」を置いたら、9時間で3000件もの書き込みがあって慌てて閉じたという事実を知らないのでしょう。
教師や学校のメールアドレスはそのくらいの覚悟がないと開いてはいけないのです。
匿名の電話ならかけ直すこともしなくて済みますし、手紙ならそもそも最初の返事も書かなくて済みます。しかし電子メールはすべてに返事を書かないと、中に必ず激怒する人が出てきます。だから教師は届いたメールすべてに返事を書き続けるしかないのですが、それでも文科省は保護者の利便性を優先するのでしょう。
萩生田大臣なら、勤務時間外の大仕事という点は大問題としても、保護者と学校を繋ぐ大切なツールだなどと平気で言い出しそうです。
【大臣は言った。「すべて今まで通り。その上でデジタル化を進めよ」】
ところで記事の表題となっている『学校便りもデジタル化? 保護者ら歓迎「メールで十分」』の学校だより、どういう形式で送られてくるのでしょう?
メール本文の形で流されているのでしょうか? PDFファイルが添付されてくるのでしょうか?
PTAの役員募集など重要な連絡がある一方、ほとんどは学校の近況報告や生活上の注意といった内容で、「これならメールで十分」と感じていたという。
先生が勤務時間外に一生懸命書いた学校だよりが「こんなもの」扱いされるのもシャクですが、スマホでPDFというのも読みにくくて大変ですから、メール本文かHTML(インターネットの形式)の専用フォームに打ち込んで流すことになるのでしょうね。
それもひと仕事です。しかも紙のお便りがなくなることもありません。
なぜなら昨日紹介した記事に、
デジタル対応が難しい家庭向けに、書面による連絡にも対応する配慮を求めた
とあるからです。萩生田大臣も、
「あくまでハンコをなくすだけで、今まで通りの連絡ツールも残す。デジタルとアナログのハイブリッドで進めることが必要」
とおっしゃっているのです。
ハイブリットとはよくも言ったものです。要するに今までの仕事に加え、デジタル化の仕事も同時並行で行えというだけの話なのです。
メール本文の形で流されているのでしょうか? PDFファイルが添付されてくるのでしょうか?
PTAの役員募集など重要な連絡がある一方、ほとんどは学校の近況報告や生活上の注意といった内容で、「これならメールで十分」と感じていたという。
先生が勤務時間外に一生懸命書いた学校だよりが「こんなもの」扱いされるのもシャクですが、スマホでPDFというのも読みにくくて大変ですから、メール本文かHTML(インターネットの形式)の専用フォームに打ち込んで流すことになるのでしょうね。
それもひと仕事です。しかも紙のお便りがなくなることもありません。
なぜなら昨日紹介した記事に、
デジタル対応が難しい家庭向けに、書面による連絡にも対応する配慮を求めた
とあるからです。萩生田大臣も、
「あくまでハンコをなくすだけで、今まで通りの連絡ツールも残す。デジタルとアナログのハイブリッドで進めることが必要」
とおっしゃっているのです。
ハイブリットとはよくも言ったものです。要するに今までの仕事に加え、デジタル化の仕事も同時並行で行えというだけの話なのです。
【教師は仕事を増やせ、オマエは死ね】
オンラインと紙ベースの平行業務。
ところで通信費が払えなくてスマホを止められた保護者は「来週から紙のお便りやアンケートでお願いします」と言って来なくてはならないのでしょうか? 可愛そうですね。
そもそもスマホを持っていない家の子も含めて、クラスに2~3人しかいない「紙でもらう子」は惨めではないでしょうか? 陰で嘲笑われたりしないでしょうか?
もちろん先生たちは、精一杯の配慮をして支えてくれるはずです。なにしろこれまで1クラス40枚も印刷していたお便りが2~3枚に減って印刷・配布業務が軽減され、業務効率化も進み、たあ~~~~~っぷり5分くらいの余裕ができた先生たちですから、そのくらいは頑張ってもらわなくてはなりません――と荻生田大臣は思っているのでしょう。
それが昨日から今日まで、私がキレたまま、脳溢血の手前まで行っている理由です。まるで「オマエは死ね」と言われているようなものです。
ところで通信費が払えなくてスマホを止められた保護者は「来週から紙のお便りやアンケートでお願いします」と言って来なくてはならないのでしょうか? 可愛そうですね。
そもそもスマホを持っていない家の子も含めて、クラスに2~3人しかいない「紙でもらう子」は惨めではないでしょうか? 陰で嘲笑われたりしないでしょうか?
もちろん先生たちは、精一杯の配慮をして支えてくれるはずです。なにしろこれまで1クラス40枚も印刷していたお便りが2~3枚に減って印刷・配布業務が軽減され、業務効率化も進み、たあ~~~~~っぷり5分くらいの余裕ができた先生たちですから、そのくらいは頑張ってもらわなくてはなりません――と荻生田大臣は思っているのでしょう。
それが昨日から今日まで、私がキレたまま、脳溢血の手前まで行っている理由です。まるで「オマエは死ね」と言われているようなものです。