「何をやっても部活顧問の負担増につながる」~部活動の新しい試み 2

 新潟県燕市ではじまった「つばくろいきいきスポーツクラブ」
 素晴らしい試みだが 結局 部活顧問の負担増につながっていくだろう
 現在のシステムをそのままに
 時間だけを減らそうとしても無理だ
というお話。

f:id:kite-cafe:20190718064842j:plain(「バレーボールの試合」phtoAC

燕市の取り組みは素晴らしいが――】

「つばくろいきいきスポーツクラブ」――学校における部活動の時間・日数を制限する代わりに休日の活動の場を与える、しかも指導は実業団の複数名という新潟県燕市の取り組み、画期的であると同時に現在の体制の中では、おそらく最良のものだと評価することができます。

 しかしどれだけ長続きするか――。
 私は疑問に思っています。

 それは自分が燕市内の中学校バレー部の顧問だった場合、この事態をどう受け止めるか、それを考えると分かります。

 

【とりあえず歓迎して自分も参加する】

私は自分が顧問をしているバレー部に強くなってほしいと願っています。別に県大会で優勝したいとか全国大会に行きたいとかいった野望があるわけではありません。子どもたちがボロ負けに負けて、コート上でなぶり者になるような経験だけはさせたくないと思っているからです。

 監督の技量を含めた練習環境、選手自身の努力や才能に差はあるにしても、同じ中学生、同じ2年半を同じ競技に打ち込んできた者どうしで、私の生徒がコート上で手も足も出ず、ただなぶられるに任せて敗戦し、それが中学校部活動の最後となる――それではあまりにも惨めです。

 負けるにしても「よく頑張った」「惜しかったね」と言える範囲でなくてはなりません。
 しかし昨日お話したような飛び抜けたチームに対しても、ある程度善戦できる力をつけようとすると、ハンパな努力では済まなくなるのです。

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 ですから市が用意してくれた「つばくろいきいきスポーツクラブ」のような試みは私のような三流顧問にとって、絶好の機会なのです。これを奇貨として、私はすべての子どもに参加するように呼び掛けるでしょう。参加費もありますし会場までの送り迎えもありますから強制はできませんが、「技術を高める絶好のチャンスだ。できるだけ行ってごらん」くらいは言うはずです。

 もちろん私も付き添いのようなフリをして勉強に行きます。学校の部活で事あるごとに「いきいきクラブのコーチはこんなふうに言っていました」ではかないませんし、指導の一貫性という意味でも大切です。実業団の指導者を押しのけて主張するほどの理論も経験もないのですから、最初からひれ伏して学ぶべき――そう考えると、子どもからの又聞きよりも実際にその場に行って指導の様子をみる方がいいに決まっています。
 
 

 【参加顧問は次第に増える】

 しかし私が自校の大半の選手と一緒に「いきいきクラブ」に行ったと聞くと、隣の学校の顧問たちも落ち着きません。誰だって自分の怠慢や指導力不足のために子どもが惨めな思いをするのは見たくないのです。そこで第2回~第3回クラブあたりからは数名の部活顧問と百名近い中学生が参加するようになります。

 もちろん節度を守って参加しない顧問もいます。「いきいきクラブ」の趣旨からすれば、本来顧問の行くべき場ではないからです。ただ、その顧問は信念に燃えて不参加のまま通すでしょうが、数年後、人事異動によって新たに赴任してきた教師は必ずしもそうではないでしょう。

 かくして「いきいきクラブ」への顧問と選手の全員参加は常態となり、学校の課外活動ではありませんから「燕市小中学校 いきいき課外活動のあり方に係る方針」の制約すら受けることなく、時間も日数も、関係なく延々と続けることができるようになります。こうして顧問教師の負担が増えていきます。

 本来の趣旨とは違ったかたちですが、そうならずるを得ないのは経験上明らかです。
 活動時間を厳しく制限する、地域ボランティアに任せる、社会体育の枠に入れるといったこれまでの試みは、すべて顧問教師の負担増の憂き目にあってきたからです。

 

 【結局どうしたら良いのか】

 多忙というのは仕事量に対して労働力の少ない状況をいいます。これを解消する方法は「仕事を減らす」か「労働力を増やす」のいずれかしかありません(もちろん両方ということはあります)。

 部活動の時間や日数を制限するのは一見仕事量を減らしたかのように見えますが“顧問”とう仕事がなくなったわけではなく、仕事の目標が落ちたわけでもありません。部活動の今日の状況を造り上げてきた条件――学校教育行政、国のスポーツ行政、組織、システム――を放置したまま練習時間だけを減らそうとするのは、企業が成績目標を放置して残業ゼロを掲げるのと同じくらい愚かなことです。

 実際には部活動の過熱を抑える形式的方法というのはいくらでもあって、例えば学習指導要領を一行書き換えるだけでも可能です。部活はいつでも廃止できます。
 そこまでしなくても、活動を抑制したいというなら中学校体育連盟への補助金を減らすだけでかまいません。全国大会はおろか県大会ですらできないとなれば、技能の目標値は下がり、そのための練習量も自然に減ってきます。
 高校や大学のスポーツ推薦の禁止も効果的ですし、スポーツを理由とした授業料免除もやめさせます。それだって効果的でしょう。

 しかしこれだけ歴史があり成熟したスポーツ環境を劇的に減らすことなど、現実には絶対にできません。このシステムの中で生活を支えている人も、生きがいとして働いている人も大勢いるからです。
 中学校スポーツのレベルを下げると、将来のオリンピックメダルに直接響く競技もあります。

 そうなると、教員の多忙を解消する方法は「労働力を増やす」の一点しか残らなくなります。

 とりあえず最も過酷な一群、学級担任をしながら部活顧問も同時に行っている教員たちを整理しなくてはなりません。顧問が部活動をしている間に学級担任は事務仕事をしている、せめてそれが可能になる程度に人員を増やさないと、この問題はいつまでたっても解決しないはずです。