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「受け皿がないまま、部活動が終焉に向かおうとしている」~先生たちの気持ちも、もうずいぶんと冷めた

 部活動の地域移行がいよいよ本格化して、
 部活に向かう教師たちの思いもいよいよ冷めてきた。
 しかしそれにもかかわらず、現実はさほど進んでいないのだ。
 これは校長の怠慢--と、やがて内外から責められる日が来る。
 という話。(写真:フォトAC)

【部活指導に、教師が口出しする時代は終わりつつある】

 昨日のYahooニュースに「『報酬が支払われても部活動の指導はしたくない!』小中学校 教員の約77%」という記事がありました。もともとは熊本放送のもののようです。

newsdig.tbs.co.jp

 これは熊本市教委が実施したアンケートの結果ですが、わざわざ「『部活動の地域移行』を前提として調査したものです」と言っていますから、「地域移行が行なわれた場合、それでも~」という条件付きで問われたものでしょう。そうでなければ77%という大きな数字が出てくるはずがありません。
 これまで中学校の教員にとって部活動はやるのが当たり前でしたから「やりたいですか?」という質問自体が思い浮かばないのです。「やりたくない」と言っても通るものではありませんし、無理に通せばその顧問はすっかりヨボヨボになって部活指導の現場から外された年配教師や、採用試験に忙しい臨時講師に回されてしまいます。ですから断るわけにはいかなかったのです。
 
 しかし今や時代は変わりました。
 熊本市教委は「『部活動の地域移行』を前提として」調査しているわけで、遅くとも数年後、地域移行は完了していなくてはなりません。だとしたら担当競技に専門の知識と技能があって、部活動に生きがいや自己効力感・楽しみなどを見いだせる人は別として、普通の教師がわざわざ「やります」などと手を上げるのは僭越でしょう。
 多くの部活顧問は競技経験があるから指導をしているのではなく、異動先でたまたまそこしか空いていなかったから始めた、といった極めていい加減な理由でその場にいるのです。教員ですから真面目に、誠実に努力はしたはずですが、指導の専門家を上回ることはなかなかできません。いままさに専門家が出てくるとすれば、黙って身を引くのが大人の適切な態度です。77%はそうした意味も含んだ数字なのでしょう。しかし実際に地域移行は進むのでしょうか?

【地域スポーツクラブの立ち上げは難航の様子】

 昨日はたまたまNHKの朝のニュースでも、部活動の地域移行の問題を扱っていました。取材を受けたのは長野県の松本市で地域移行の受け皿となるためにつくられたバドミントンの地域スポーツクラブです。先月から活動を始め、取材日には4中学校7名の生徒が参加していました。
 インタビューを行うと子どもたちは専門家の指導を受けて技能が高まることを喜んでいる様子ですし、中学校の顧問も時間ができたことでよりよい授業ができるのではないかと歓迎していました。
 しかしすべてが順調なわけではなく、松本市内の公立中学校には9種類の競技部活動があるにもかかわらず、地域クラブができたのはバドミントンだけで他の8競技については目途すらついていないというのです。
 これは全国的な傾向で、日本教職員組合の行った教職員2300人の調査では、72・5%が指導者を確保できないことを大きな課題として挙げていると紹介されていました。
 
 また、現在、実際に部活指導員を行っている人の話では、指導は週3回、1日3時間で時給は1700円ほどだそうです。つまり月収は7万円弱です。指導員は「責任のわりには報酬が低い。いつまで続けられるか分からない」と言っていますが無理なからぬことです。
 部活動の地域移行、うまく進んでいる様子は見られません。

【「新宅を立てる前に旧宅を壊してはいけない」が・・・】

 私にはどうしても思い出せなくて困っていることわざがひとつあります。それは、
「新宅を立てる前に旧宅を壊してはいけない」
といった内容のものです。どなたかご存じないでしょうか?
 
 部活動の地域移行についていえば、受け皿としての地域スポーツクラブや部活指導員の組織もできていないのに、学校から部活が切り離されることが早々に決まってしまいました。
「とりあえず休日から始めて、やがて平日も」
という話でしたが、誰も休日のみの話だとは思っていません。前述の松本市のバドミントンクラブも、
「今は週2回ですが今後は活動日数も生徒も増やしていくつもりです」
と言い、例として紹介された現役部活指導員も週3回の活動だといっていました。休日のみという中途半端は、最初から無理だと思われているからでしょう。予算さえつけばすぐにも週6回~7回にもできるようになります。しかし全面的な予算づけなどできるはずがありません。部活は、何といっても生徒の自由参加だからです。市町村が地域スポーツクラブの面倒を見るといっても、今より充実することはないはずです。

【顧問の先生方、もうしばらく頑張ってください】

 文科省が部活は地域に移行すると高らかに言ってしまった以上、教師もそのつもりになります。まさか現在抱えている部活動を放り投げることはしないと思いますが、異動の際にはひとことあるに違いありません。
 やがてなくなる部活動です。慣れた競技ならまだしも、今さら新しい競技の顧問に任じられても努力が無駄になるだけです。今後は新任の先生を中心に、顧問拒否の動きが次第に大きくなっていくことでしょう。
 
 地域指導者を探し出すのは校長の仕事です。一般の教員の預かり知らぬところです。顧問がいなくて廃部にせざるを得ない場合も、その責任は校長にあります。いずれにしろシンドイ仕事です。
 かくて、今度は校長の成り手がなくなります。これは近未来の予想図というより、実際に始まってもいることです。
 
 大型連休を部活に費やしておられる先生方、もうしばらく頑張りましょう。次の学校では顧問なんかしていないのですから。