「学校でもありそうなこと」〜日報とファイリングと無責任体質2

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 なかったはずの自衛隊の日報が次々と出てくる。防衛省の情報は膨大で、ある意味、真剣に探していなかったのだから「なかった」ものが「あった」ことは分かるが、なぜ今ごろになって公表されるのだろう。見つけた人がもみ消してしまえばよかったのに――というか、紙なら燃やせばいいし、電子データなら消去してしまえばいいのに、なぜしなかったのだろう。

 それが昨日のテーマでした。私なら、たぶんやっちゃいます。やった上で、口をつぐんで地獄まで持って行けばいいのですから。ある意味、それが一番平和な解決方法です。

【日報のコピーは山ほどあった?】

 考えられる理由のひとつは日報のコピーが山ほどあって、自分が発見した分をもみ消しても、全部を消去することはできないから、ということです。

 南スーダンイラクでは、派遣部隊は毎日現場の状況をまとめて「日々報告」という数十ページの報告書を作成し、上級部隊である中央即応集団司令部に送ります。稲田元大臣を辞任に追い込んだいわゆる「日報」は、この「日々報告」のことを指します。
 ただ、「送る」といってもメールに添付するような形ではなく、防衛省のプライベートネットの、いわば掲示板のようなところにアップロードして、それを中央即応集団司令部がダウンロードする形を取ったようです。なぜなら一定期間「掲示板」に置くことで、南スーダンイラクの現状に関心のある自衛官が自由にダウンロードして閲覧できるようにしたのです。

 派遣部隊はアップロードと同時に「日々報告」をコンピュータから消去します。「掲示板」からダウンロードした自衛官も閲覧の後、消去することになっています。

 「日々報告」をダウンロードした中央即応集団司令部は「モーニングレポート」というより簡便な書類に書き換えて統合幕僚部に提出します。「モーニングレポート」は口頭で説明するときの補助資料のようなものですから、要点だけ書かれていればいいのです。そしてこの段階で「日々報告」は破棄します。
 つまり「モーニングレポート」のできあがった段階で「日々報告」はすべて消去されなくてはならなかったのですが、実は一部不特定多数の自衛官のフォルダに、消去されないままの「日々報告」が残ってしまったのです。

 確信犯的に残した人もいたかもしれませんが、続きをあとで読もうと思って忘れてしまった人、ちょっとした廃棄手続きが面倒で放っておいてしまった人――そう考えると何通残っているのか誰にも分からない。

 ないはずの日報に気づいたとき、もしかしたら私のような不埒者は「もみ消してやれ」と考えたかもしれません。しかし「掲示板」の仕組みを考えると、自分が発見したものを消去しても別のところから出てくるかもしれない。そうなるとせっかく「世のため平和のため」に消去しても、「消した」自分の罪だけが残ってしまうかもしれないのです。
 いずれ発見されるものなら、もうこんなバカな仕事から手を引くためにも、今のうちに報告しておいた方がいい――そう考えたのかもしれません。
 それが私のひとつの推論です。

【ファイリングの問題】

 今回の“発見”は小野寺防衛大臣が「日報」の統合を図って、過去の記録をすべて見直すところから出てきたものです。
 小野寺大臣の意図はよく分かります。途中で抜き取られるような「報告」の形式はやはりダメなのです。
「モーニングレポート」にまとめられた段階で「日々報告」が破棄されるようになっていたのは、それも理にかなっていて、段階ごと整理され成長していく「報告書」をすべての段階で残しておいても、意味がないばかりか後々調べるのが大変になります。
 今回のようなことが2度と起こらないよう、文書管理の原則をきちんと見直し、みなが守れるようなシステムを構築しなくてはなりません。

 あるべきところになく、ないはずのものが後から出てくるような仕組みは間違っています。それは学校も同じで、ファイリングの仕組みというものを、もう一度見直しておく必要があるはずです。

【無責任のホウレンソウ】

 かつて勤務した学校の校長先生が、こんな訓示をされたことがあります。
「先生方、スピード違反、交通事故、その他の不祥事、問題さまざま、何があってもまず学年主任の先生に相談してください。
 けっして一人で抱え込んではいけません。先生が一人で抱え込めば、それは先生ひとりの罪です。
 例えば交通事故を起こして報告しない――。もちろん事故は先生おひとりの罪ですが、報告義務違反を一人で背負うことはありません。学年主任の先生に報告すれば、それだけで責任の半分は引き受けてもらえます。
 その学年主任の先生は、必ず教務主任の先生に相談してください。これで3人、責任は三分の一ずつとなります。さらに教務主任の先生は副校長先生に、副校長先生は私に、私は教育長に、教育長は統括指導主事に、統括指導主事は県の教育長にと、次々に報告を上げていく。そのたびに責任割合の分母ばかりが増えて行って、ほら、10人の手を経れば責任は10分の1。そんな10%の責任なんて、もうないも同じじゃないですか。これが有名な公務員の『無責任体質』です。みんなで責任を分け合っちゃうので誰も責任を取らなくて済む。
 だから先生方、ご自分を守るためにも、自分ひとりで判断するのではなく、必ず上の人に報告・連絡・相談をするように、お願いしますね」

 それが本当かどうかは分かりませんが、ひどく感心したのを覚えています。
 政府だって同じなのかもしれません。「もみ消すかどうかは上司が判断すればよいことだ」という無責任の論理の積み重ねが、結局、小野寺大臣への報告という形で出てきたのかもしれません。
 それが第二の推論です。

【ところで】

 ところで、実は国会で話題になっている「日報」が何なのか、今でも私はよく分からないのです。

 4月2日に小野寺防衛大臣が報告したイラク派遣時の日報は、外付けハードディスクの中から発見されたと言いますから電子データとしてまとまってあったものなのでしょう。「のべ376日分約14000ページ」と言いますから、1日平均40ページほど、「日々報告」としてはほぼ妥当なページ数です。

 ただし今月5日に空幕(航空自衛隊航空幕僚監部)で見つかった3日分の「日報」です。これは朝日新聞の記事にもあるように「定時報告」とタイトルされた文書で、写真を見るとワープロ表計算ソフトで作成されたものですが、もともとは手書きを予定された書式で、パンチ穴があるところをみると紙ベースで保管される書類です。

 内容として、
 各日の運航経路や時刻、空輸内容、人員や機材の異状の有無などが所定の欄に記載されていた。
そうですから自衛隊機1機について1枚提出すものなのでしょう。したがって似たようなものは日々何十枚も上がっているはずです。もしかしたら航空機だけでなく、車両1台1台についても提出しなければならないものなのかもしません。そんなものをいちいち保管していたら倉庫はいくつあっても足りませんから「保存期間は1年」ということになっているのでしょう。

 報道ではこれも「日報」ということになっていますが、どういう区分けになっているのでしょう。「のべ376日分約14000ページ」がこの「定時報告」のpdfファイルだったっりすると、大した内容は書かれていないような気もします。

 それにしてもコンピュータ上で作成して紙で保管する書類(保存期間1年)って、何なのでしょうね。
 学校にもそんな書類は山ほどありますが、防衛省もずいぶんと遅れたところです。

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 (左)空幕由来「定時報告」 (右)「モーニングレポート」と「日々報告」

(参考)

kite-cafe.hatenablog.com

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