カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「部活動の行方」〜小学校教諭の約3割、中学校教諭の約6割が「過労死ライン」①

 先週の金曜日、朝の情報番組「スッキリ!!」(日本テレビ)と夜の番組「金曜イチから」(NHK)はともに中学校の部活問題を扱っていました。
 4月28日に発表された文科省の調査で“小学校教諭の約3割、中学校教諭の約6割が「過労死ライン」に達していた”という例の報道に関する

 ところが局の全く異なる番組なのに内容がそっくり。

  1. 教員の過剰労働から中学校の部活に注目し、
  2. 部活顧問の過酷な勤務状況を紹介するとともに、
  3. 部活動に批判的な教員の話を聞き、
  4. その解決策として外部指導者の導入に注目する

と、ほぼ一緒なのです。
 おまけに外部指導者の事例として杉並区立高円寺中学校のバスケ部を取り上げるといった点まで同じで、これには呆れました(おそらく杉並区教委は外部指導者導入の一番うまく行っている例として高円寺中学校を紹介したのでしょう。別々の学校を教えてあげればいいの
 さらにこの二番組には、教師の立場に心を寄せる者としてはいくつかの困った、本質的な問題点がありました。

 

【部活顧問の授業はレベルが低いのか】

 そのひとつは「スッキリ!!」に出ていた二人の現職教員(ともに30歳代の男女)が“部活の顧問を断る”という選択をしたした人たちで、この二人は顧問をしないことで授業準備もも十分できるようになり落ち着いた気持ちで授業に当たれるようになったと述べている点です。「金曜イチから」で紹介された部活顧問たちも「忙しくて教材研究ができない」「授業劣化だ」という話をしていました。
 番組全体がそういう方向で進んでいなかったので見過ごされたかもしれませんが、これでは「部活の顧問をしている先生は準備が不十分で授業レベルが低い」ということになりかねません。
 部活を担当して毎日朝7時から22時まで働く先生より、顧問を断ってゆとりある生活を送っている先生の方がよい教師、というでのはなかなか承服できない話です。

 

【部活は教員の本来業務ではないのか、学校教育に不要な活動なのか】

 第二に、繰り返し提示される「部活は教師本来の仕事ではない」という考え方。果たしてそれでいいのか。
 教師本来の仕事が教科教育だけだというなら、登下校の指導や深夜の見回り、万引き指導や校外で起きた暴力事件、いじめ問題への対応も「教師本来の仕事」ではありません。入学式や卒業式、修学旅行、給食指導だって本来業務ではなくなります(事実、欧米の学校ではそんなものはなさそうです)。
 しかし教育基本法第一条には「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とあり、人格や心身への関与を義務づけています。
 そう考えると部活動も生徒指導や他の特別活動と同じ枠の中にあり、学校の行う立派な教育活動のはずです。

「金曜イチから」ではスポーツ庁の官僚が、
「校長が職務命令としてお願いできるのは『部活の顧問をしてください』というところまでで、『残業してまで部活の顧問をしろとは命令できなません(法律上)。先生方は責任感が強いので、ないかあってはいけないということで、自発的に部活を見ておられるのだと思います」
などと教員の神経を逆なでするようなことを言っていました。
 しかしそれもどうかと思うのです。

 

【部活を支持する人々の不在】

 第三に、これは最も重要な点ですが、両番組とも部活に批判的な教員の話は聞いても、」部活を支持し部活をもっとやろうという人々の意見を聞いていないことです。
 もしほとんどの教員が部活顧問をやめたいと考えスポーツ庁の役人が顧問の超過労働は自己責任だと突き放したら、部活動は縮小するどころか絶滅するはずです。ところがむしろ拡大する傾向にある。だとすればそこには部活をやりたくて仕方ない人々、やらせたい人の存在を想定しなくてはなれいません。
 特に顧問をしている教師たちの中に以上に熱心な人たちがいる、彼らがいるからこそ部活動は過熱する、だとしたら彼らの話も聞かなくてはなりません。

 

【外部指導者の有効性】

 そして最後に、
 教員の過剰労働を緩和する名案としての外部指導者導入の問題です。
スッキリ!!」でも「金曜イチから」でも“これが決め手だ!”と言った扱いをしていましたが果たしてそうなのか、私は大いに疑問なのです。

(この稿、続く)