「戦争への系統樹」�B

 度重なる国連安全保障委員会の非難声明・経済制裁にも関わらず、金正恩政権は核開発・ミサイル実験をやめようとしません。それどころか研究開発を無制限に加速させている様子さえあります。

 私たちははじめ、何らかの理由によって中国に熱意がなく、そのために経済制裁が意味をなさないのだろうと想像していましたが違っているのかもしれません。

 今回、中国が威信をかけたG20首脳会議の真っ最中に3発もの中距離弾道ミサイルを発射させたことは、いわばガキの金正恩が皇帝・習近平にビンタを食らわせたようなもので、それにもかかわらず中国報道官が「アメリカによる高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備決定のせいで、北が反発し弾道ミサイルを相次いで発射している」などとトボケたことを言わざるを得ないのは、結局中国は北朝鮮をまったくコントロールできていないからかもしれないからです。

 私たちは中国に期待をかけましたが、実は北朝鮮は中国の言うことをまったくきかない。さらに中国東北部北朝鮮を行き来する物資を抑えることもできない、もしくはしてはならない事情がある、だから経済制裁にも耐えられる、そうした事情があるのかもしれません。

 そうなると北朝鮮は糸の切れた風船みたいにどんどん勝手に動いてしまう。今後もミサイルを打ち続けて技術を高めるとともに、早晩、小型核爆弾の開発にも成功していつでもどこでも自由に攻撃できるだけの能力を身に着けてしまう。そのときどの国が一番刺激を受けて変化を遂げていくか。

 私はそれが日本である可能性を心配しています。目の前に銃口を突き付けられ、黙っているわけにはいかない――そう考える人は少なくないと思います。分からないなりに防衛予算だけは増やしておかないと安心できないという人もいるかもしれません。

 中国は――尖閣を理由に防衛力を高めればガンガン文句を言ってきますが、北朝鮮を理由とすれば舌鋒も柔らかくならざるを得ません(それがいやなら北朝鮮を何とかしろ!)。今がチャンスです。

 昨年は国会前で特定秘密保護法や安保法制について毎日のようにデモが繰り返されましたが、これ以上北朝鮮の脅威が高まればデモを見る国民の目も冷たくなっていきかねません。日本の軍拡に反対する勢力は急激に縮小していきます。

 次第に精度を増したミサイルも落下地点にいる艦船を避けるほどの技術はないでしょう。まかり間違って客船の近くに落ちて船を沈めてしまうとか、何らかの事情によって日本本土に到達してしまうということになれば国内世論も黙っていません。

 私たちが歴史を一歩前進させるとき、系統樹の枝の先にどんな小枝が広がっているか見通すことは困難です。ましてや10年後に選択している枝が何なのかを正確に予測することは不可能でしょう。

 それだけに日々、世界がどのように動いているか、真剣に見続けなくてはならないのです。そして世界と歴史を見続ける習慣と目を、子どもたちにつけてあげなくてはなりません。

 北朝鮮がヤバイ、中国がヤバイといって慌てて軍備を拡張すべきではありません。しかし何もせずにボンヤリ見ていてもいいほど世界は生易しいものでもないのです。