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「日本がウクライナにならないために」〜なんだか本当に不安になってきた 2

 かつて総理大臣だった鳩山由紀夫さんは「友愛」を旗印に、「友愛の精神をもってちゃんと話し合えば必ず理解は得られる」というようなことをおっしゃいました。もちろん私も鳩山氏からきちんとお話をいただけばたいていの無理は聞こうという気になります。ただしそれは「友愛の精神」のためでなく、彼がお金持ちだからです。毎年お母さまから億単位のお小遣いをもらえるような人と仲良くしておいて損はありません。私にだって崩せない一線はありますが、相手が鳩山さんだったらその線はグンと手前に引き寄せられてしまいます。 

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 ドナルド・トランプ氏はディール(deal)の達人だそうです。
 確かにこの一年余りの様子を見ていると彼の一挙手一投足、一言隻句には世界を揺るがす力があります。しかしそれがディールだとするとディールの訳語は「恐怖を与える」とか「脅す」ということになります。本人は「取引」のつもりでいるかもしれませんが、権力や暴力、財力やある種の魔力を背景として行う取引は「取引」とは言えません。

 電話口でいきなり外国の元首を怒鳴りつけて電話を切ったり、晩餐会の最中にミサイルを打ちまくったりといった逸脱行為は、確かに外国の首脳を震え上がらせるだけの力があります。
 動画に残る自らの発言も平気で覆し、「そんなことを言うはずがない」「フェイクだ」と蹴飛ばし、セクハラで訴えられれば「私ほど女性を大切にする人間はいない」と正反対から堂々と立ち向かう厚顔は、誰にもまねできません。

【大統領は尻尾を捕まえられている】

 常々申し上げているように、世の中に怖い人間は二種類しかいないのです。「何をするか分からない人間」と「自分が愛する人」です。

 トランプ大統領はもちろん前者で、だからこそ「戦争するぞ」という脅しも効力を発揮するのですが、だからと言って過信をしてはいけない。
 もう世界はトランプ氏のやり方に慣れてきたのです。その虚を突いて北朝鮮は何年も前から切望してきた――そしてオバマ前大統領が絶対に与えることのなかった――米朝首脳会談をいとも簡単に手に入れることができたのです。

 トランプ氏は得意のディールで相手を捻りつぶし、誰も果たせなかった北朝鮮問題の解決を一瞬で行った偉大な大統領となるつもりかもしれませんが、相手は四半世紀に渡って瀬戸際外交を行ってきた百戦錬磨の強者です。逆に手もなく捻られて、してはならない約束をさせられる羽目に陥るのではないかかと、とても心配なのです。

 それは例えば、5月の米朝首脳会談がだらだらと長引いて、7月、9月、11月と実務者会議を重ねている間に核やミサイルの研究が進み、いきなりハワイ沖あたりに大陸間弾道弾に相当するミサイルを撃ち込まれてICBMの完成を誇示されるとか、あるいは逆にICBMを諦める代わりに核と近中距離ミサイルの保有を認めてしまうといったことです。

 核保有を認められるとなると、米中英仏露に続く6番目の国となります(インドやパキスタン核兵器保有してこそいますが、国連常任理事国と肩を並べる「保有を認められた国」ではありません)。親子3代、四半世紀に渡ってすべてをなげうって目指してきたその夢を、金正恩が諦めることなど絶対にありません。
 国内的にも「核開発と経済発展を同時に進める併進路線」「アメリカと肩を並べる核大国」と煽ってきた旗を降ろすのは命とりです。核廃棄は、したくなってもできることではないのです。 必ず、「核保有国として認める」方向に話をもってきます。

【日本がウクライナになる】

 そうなったら、日本はロシアに対するウクライナみたいな存在になってしまいます。  韓国は北朝鮮と同じ民族ですからいわば極東のクリミアで、文在寅大統領の様子をみると案外あっさりと国民を差し出して南北統一ということになりかねませんが、日本はそういうわけにはいきません。

 北朝鮮主導の南北統一となったら、日本はクリミアのように核ミサイルをもった独裁国家と直接向かい合うことになります。そうなると今のソウル同様、大都市のあちこちに数千もの防空壕をつくり、繰り返し避難訓練をすることになります。日本は韓国に比べると人口も多く大都市も分散していますから防空に使う予算もハンパではない。

 学校はかつて火災に対する避難訓練をやっていればよかっただけですが、今や地震避難(海岸近くでは津波避難も)、不審者対策避難の訓練までやらなくてはならなくなっています。それに空襲避難訓練も加わります。これまでの災害避難と異なり加害者のいる避難、つまり繰り返し人間不信を植え付け、憎しみを掻き立てるような訓練です。それが何十年も、あるいは何百年も続くのです。

 第二次世界大戦中、日本だけでも数百万人の犠牲者を出してようやく手に入れた空襲の危機ない世の中を、手放さなければならないのです。そんなことを後の世代に残すわけにはいきません。

【どうしたらよいのか】

 ほんとうは私は、北朝鮮が明確な核廃棄と民主化計画を公開するまで経済制裁を強めたまま放置すればいいと思うのです。というのは昨日も言ったように、北朝鮮の現体制の保障などということはすぐに行き詰まるに決まっているからです。
 世界が許しません。

 もちろんそうなるとこれは「21世紀のハルノート」ですから北朝鮮は出てくるか内部崩壊しかなくなります。出てきたら叩きます。
 北朝鮮が暴発したら数百万人の犠牲者が出るなどという話がありますが、そんなことはありません。湾岸戦争だってイラク戦争だって相手が戦闘能力を失うのはあっという間でした。現在ウワサされる北朝鮮が戦争遂行能力を失うまでの最短時間は15分です。私はそれを信じます。

 イラクやその前のアフガニスタンのとき大変だったのはその後の占領政策で、北朝鮮の場合はそれを、この国の消滅を好まない中国にやってもらえばいいのです。民族対立も宗教対立もない国ですから、イラクやアフガンに比べたらずっとうまくいくはずです。
 朝鮮半島の南北統一は少し遠のきますが、いま一緒になるよりは半島の人々にとっても世界にとってもいいことでしょう。とりあえず北朝鮮には普通の国になっていただきます。

 以上、「なんだか本当に不安になってきた」私の妄想です。

【さて、それにしても】

 ドナルド・トランプさんは
北朝鮮が、『ミサイル発射しない』と言ったことを信じる。北朝鮮は、平和を求めている。わたしも、今がその時だと思う。わたしは、(米朝)会談で北朝鮮を含む全ての国にとって、最も偉大な取引をするかもしれない」と述べ、金正恩(キム・ジョンウン)委員長との会談を、自身の政権の成果としてアピールした」3/11《日》フジテレビ系《FNN》)  
そうです。
 あのおめでたい変なおじさんを、誰か引き留めてください。