カイト・カフェ

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「男の子の育て方」③

 二十歳の女の子と男の子を見比べると、これはどうしたって女性の勝ちです。
 女の子はほぼ完成が見られ、良いにつけ悪しきにつけ手が入らない感じになります。ところが二十歳の男なんて、いくらでも手の入れがいがある感じです。と言うよりはまだまだ手を入れなくてはどこに行ってしまうか分からないのです。

 再三紹介していますが元医療少年院所長の小栗正幸氏は、非行の最大のリスク・ファクター(非行に走る要因)は「男の子であることだ」と語っています。男の子に生まれること自体が危険なのです。

 確かに、まず暴力性という点ではるかに女の子をしのぎます。保育園児や小学校の低学年児童で、すぐに手や足を出すのは男の子です。
 衝動性という点でも女子と同等というわけにはいきません。左右も確認せず車道に走り出て交通事故に合うのはたいていが男の子です。注意欠陥という側面かもしれません。
 危険に対する認識も弱いところがあります。高いところへ登る恐怖感もスピードに対する恐れも、女子に比べてずっと薄いように感じるのです。女児に比べると、はるかに自閉的な面も強い傾向があります。

 しかし何より問題なのは、そうした暴力性や衝動性、注意欠陥の傾向や危険回避に関する能力の低さよって、男の子はしょっちゅう叱られたり怒られたりしているということです。
「なんで言われたことが守れないの」「またお前か」「何度言ったらわかるの」「お母さんを困らせたいの?」
 そう言って叱られるのはみんな男の子です。叱られているうちに一部の男の子たちは、気分が悪いですからさらにどんどん悪くなって行ってしまいます。
《そんなに悪く言われるなら、もっと悪くなってやる》
 それは案外、普遍的な考え方です。

 一方、そういうことの少ない女の子は一様に可愛く、病気やけがの少ないことも合わせて、「女の子は女の子に生まれたというだけで一生分の親孝行をしているようなものだ」と言われたりしています。しかし男の子はダメです。

 私は基本的に、男の子の養育というのは心理学でいう行動主義的であるべきだと思っています。特に幼少期はそうです。簡単に言ってしまうと飴と鞭の丁寧な使い分けです。イヌやネコを育てるように、叱るときはその場で即座に鬼の形相と雷鳴のような大声で怒らなくてはなりません。誉めるときもその場で即座に、今度は舐めるように抱きしめ、身体をさすり、愛情と喜びと感謝を10倍くらいに増幅して与えるのです。
 大切なのは「その場で即座に」。
 そうでないと、あの子たちはみんな忘れてしまいます。
《あれ? そんなこと、ボクやったっけ?》

 それと同時に、男の子の指導では障害者支援の技法を限りなく多用しなくてはならないと思っています。
 それは例えば大きな行事やできごとの際には予め全体像を示しておくとか、予行演習やイメージトレーニングをしておくとか、一指示一内容だとか、手順の説明だとか、視覚支援(映像・画像によって示す)とかいったことです。
 とにかく「結婚して子どもができて2〜3年」そのくらいまでかかる息の長い仕事ですから、じっくり取り組みたいところです。

(この稿、終了)