カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「子どもが学校に行かないと言い出した時に、親としてなすべきこと」⑤〜再び自宅へ

 学校から高速を使って40分で自宅に戻り、娘を乗せてまた単身赴任の町に戻ると、私はインターチェンジ近くのショッピングモールに娘を下ろし、金を持たせて夕食を取りウィンドウショッピングでもして時を過ごすように指示しました。心配しないよう、妻にメールして娘を預かっていることも知らせました。
 それから学校に戻って滑り込みでPTA役員会を開き、日常の仕事を終えて娘のところに戻ったのはすでに10時近くです。私にとっては遅い夕飯の時刻でもありました。

「部活はもう続けられない」と娘は言います。それはいっこうにかまいません。
「けれど辞められない、引き留められる」そうも言います。他人に強く言われると断れない性格です。そしてそれ以上に、心の奥底では《まだやれる》という思いが燻っているのかもしれません。辞められないのは状況ではなく、それまでたいへんな資本をつぎ込んできた自分自身の思いなのです。
 一般的に言っても、こういう時は他人の出番です。本人が決められなければ誰かが決断して責任を取ればいいのです。この場合は親が適任で、あとで娘が後悔して「お父さんがどんどん話を進めてしまったから・・」と恨んでも、自分で決めて自分で責任を取るよりは楽です。学校にも行けないような状況を子どもに任せてはいけません。
 ですから対応としてはとても単純なはずですが、「学校に行けない」という状況がそう簡単に済むはずもありません。「そう簡単に済むはずがない」という思いが、私の心の中に渦巻いていたのです。学校に行かせるためのもうひと押し、最後の一手が必要なのですがそれが分からない。

 私は、とにかく明日、登校することが大切だと考えていました。明日行けば明後日は少し楽になる。そうなると土日二日間を挟んでも何とか学校に行き続けることができる。
 なんといっても部活以外には問題がなさそうなので、その部分を切り取れば後は何とかなる、そう思ったのです。そこにはまた15年半に渡って続けてきた皆勤を断ち切るのはもったいないという思いもありました。親も頑張りましたが無理をさせたという後ろめたさもあり、なんとかあと1年半を頑張らせたいとも思っていたのです。しかし娘は、ガンとして受け入れようとしません。

 そこで私は次の3点を申し渡しました。

  1. 明日、顧問の先生に連絡をして部活を辞めると伝えること。直接伝えられなければ電話でもいいから必ず明日行うこと。
  2. 土曜日に父が挨拶に行くのでそのことも伝えること。時間をとっていただくこと。
  3. その間、顧問の先生や部活の友だちと話し合ってはいけない。話すことがあっても何も決断してはいけない。

 そしてできれば明日・明後日は学校に行くこと、それも申し添えました。

 それから再び娘を乗せて自宅に戻り、妻には何も言わず何も聞かないように指示して4回目の高速道路に乗り、アパートに戻ると時計はもう1時を過ぎていました。

(この稿、続く)