「愛は伝わらない」~はっきり言葉で言わないと、子どもは理解してくれない

 昔、人に言われてこんなアンケートをとったことがあります。

  1. あなたのお父さんやお母さんは、あなたのことをどう思っていると思いますか。
  2. お父さんやお母さんから言われた言葉で、覚えていることを教えてください。

  結果は惨憺たるものでした。
 1の答え・・・「バカだと思っている」「いない方がいいと思っている」「生まなければよかったと思っている・・・」。
 2の答え・・・「バカ」「死ね」「あっちへ行っていろ」「お前なんか生まなければ良かった」「お前はいらない」

 もちろん世の中の親たちがいつもこんなことを言っているはずはありません。虐待の場合を除けば、ふつうは「普通の子育て」をしています。にもかかわらずアンケートでこんな結果が出てくるのは、それが客観的な事実はないものの、子どもの主観的な事実のだからなのです。

 親たちは普通の子育てをしているのに、何かの拍子でたった一回出た言葉がその子の心に楔(くさび)を打ち込むのです。
 親たちの方はタカをくくっています。「親子なんだからほんとうの気持ちは伝わっているはず」「言わないでも分かるはず」。しかしそこには何の根拠もありません。

「親の背中を見て育つ」という言葉がありますが、国民の8割が農家で1割5分が商家だった時代ならまだしも、今や子どもたちは、家族のために一生懸命働いている親の姿などまったく見ていません。現在は大半がサラリーマンなのです。土日だって、塾だの部活だのと忙しい子どもの目に、親など入ってきません。そんな時代にあって、放っておいても愛は伝わるなどと考えるのは、あまりにも楽観的に過ぎます。
 “愛”は態度と言葉で、意図的に表わしていかないと、伝わらないのです。
 そして十分に愛が伝わっている中で、「あっちへ行っていろ」といった言葉が使われてもまったく問題はないのですが、そうでないと大した意味なく使った言葉でも、それはまっすぐに子どもの心臓の、正鵠を射ってしまうのです。

 先のアンケートで親のひどい言葉を書いた子どもも、大半は元気で過ごしていて、その子自身にも親子関係にも問題がありません。きっと無意識のフォローが十分に効いているのでしょう。それが普通です。けれど一部にはそれを本気で信じている子もいます。
 そんな子どもの親には、一応、声をかけておく必要があります。

 子どもを愛していない親なんかいません(実はいますが、いないことにしておきましょう)。いるのは愛情表現の下手な親です。会話に変化球を使いすぎるからかもしれません、あるいは素直な物言いが恥ずかしいからなのかもしれません、いずれにしろ屈折した話しぶりが子どもに対しては「表現が下手」ということになる人が案外多いのです。

 もちろん子どもの側に問題のあるケースだってあります。なんらかの事情で親の愛情表現を受信しにくい子たちです。そういう子には、その子に分かるような“愛”の注ぎ方を考えなくてはなりません。


 お父さん、お母さん。今、この子はとても心配な位置にいます。自分が家族の中で必要欠くべからざる存在であること、大切にされていることを理解させるのは容易ではありません。しかしこれから、私と一緒に方法を考えていきましょう。