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「不登校問題、私は医師もカウンセラーも信じない」~不登校もいじめも過去最多について⑦

不登校に関して、医師やカウンセラーに頼り切ることはできない。
過去50年間、魔法のように不登校を終わらせた専門家も、
呪文のようにすべてを解いた言葉もない。
しかし不登校から戻ってきた子たちも大勢いるのだ。
という話。(写真:フォトAC)

不登校問題では、私は医師もカウンセラーも信じない】

 不登校に関して、私は医師やカウンセラーに私怨があります。
 もう40年近く前のことになりますが、学校に来にくくなっている子どもたちを指導している最中に医師やカウンセラーの指導が入って、片っぱしから持って行かれたという思いがあるからです。
 この子はまだ休ませる状況ではない、いまはまだがんばらせる段階だ――そう思って私もがんばり、その子も努力している最中に保護者が病院へ連れていき、「様子を見ましょう」「ゆっくり休ませてください」「エネルギーが溜まるまで待ちましょう」「無駄な登校刺激を与えるとかえって長引きますよ」などといわれて、親が子どもを庇うようになります。そうなると学校はいっさい手が出せなくなります。その結果、学校に戻ってきた児童生徒は一人もいませんでした。
 
 「不登校には登校刺激を与えてはいけない」という考え方が主流になるまで、担任は夜討ち朝駆け、友だちは集団声掛け手紙攻勢と、医者や心理学者が聞けば震え上がるような方法で、学校はけっこう登校渋りの子を戻していたのです。しかしこの問題に関して保護者は、毎日その子と接している教師よりも一見の医師や学者の方を信じますから、ひとたまりもありません。
 
 それから十数年たってある研修会の席で、地域では有名な専門家が、
「先生たちは勘違いしています。不登校の初期には登校刺激を与えてもいいんですよ。それで学校に来られるようになった子はずいぶんいます。それを無暗に手控えてしまうから、みんな引きこもってしまう」
 そう言ったときは、長机5台とそこに座る教師たちを十数人なぎ倒しても講師に飛び掛かって殴ってやろうとしました(実際にはしていません)。

【専門家たちはいまも答えない】

 専門家たちがどれほど不登校の親たちを苦しめて来たのか、最近拾ったばかりの次の文を読めばよく分かります。
 納得できる答えが得られなかった私は、塾、カウンセリング、心療内科セミナーなど、藁をもすがる思いで不登校脱出の糸口を探し奔走しました。
(略)
 「どうすればウチの娘は学校に行くのか?」
 ありとあらゆる所にその答えを探し求めました。
 しかし、「これだ!」と思える娘の受け皿はありませんでした。
 例えば、学校に配置されているスクールカウンセリングは、そもそも日程が少なく、しかも、不登校児童が多いので予約が取れずカウンセリングが思ったように受けることができません。
 「お母さんもカウンセリングに来てください」と言われましたが、予約が取れたのが約1カ月後で「ふざけんな!」と思いました。
 親向けの不登校の講演会も参加しましたが、インターネットで調べて出てくるような内容で、私たち親が具体的にどうすれば良いのかわかりませんでした。
(略)
民間の不登校専門のフリースクールは、内容は良さそうでしたが、金額が驚くほど高く、私に支払えるような金額ではありませんでした。
 子ども専門の心療内科は、「予約待ちが半年後…」という所はザラです。私は一般の心療内科に行きましたが、そこでも待ち時間が2、3時間かかりました。しかも先生と話せるのは5~10分ほど。処方される薬は娘に合わず行かなくなりました。
 このように、不登校の受け皿は、公的機関、民間企業も含めてありますが、実際に活用できる機関はないに等しいと私は思いました。
 どこに相談に行っても、「しばらく様子を見ましょう」「見守りましょう」と言われます。
 しかし私は「親が何もしないでいることで子どもは本当に良くなるの?」そう思いました。
 一向に変わらない娘。死んだ魚の目のように部屋にこもる娘。少しでも学校や勉強の話をすると荒れる娘。私は不安で気が狂いそうになりました。

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【誤った助言】

 何もしてくれないだけならまだしも、専門家の誤った指導が殺人事件にまで結びついたこともあります。

 1996年、東京都文京区に住む一人の中年男性がカウンセラーの元を訪れます。不登校の子どもの家庭内暴力に苦しんでのことです。
 何回か通う中で指導されたことは次のような点です。
「1番大切なのは親の愛」
「受容すること」
「子どもを受けとめてあげなさい」
「本当に苦しんでいるのは、むしろ子どもの方」
「親が信じて待てば必ず子どもは正しい方向に進んで行く」
「子どもたちの問題行動を前にしてまず大切なのは彼らが言葉に出来ない気持ちを行動の背後に訴えているのを読み取る努力をすることです」
 いずれもこの世界ではよく口にされることです。よく理解した上で父親は重ねて、
「言ってみれば、奴隷のようにこき使われるのが耐えがたい」と訴えたら、先生は「そういうことも一つの技術です。お父さん頑張ってください」と言いました。私は、「ああ、これも一つの技術なんだ」とストンと胸の中に落ちてきて、ホッとしました。
鳥越俊太郎・後藤和夫著「検証◎金属バット殺人事件『うちのお父さんは優しい』」(明窓社 2000))
 以後、父親は息子に殴られるままになり、やがて耐えきれなくなって金属バットで殺すことになります。家族を対象とする「金属バット殺人事件」はいくつかありますが、これもその一つです。

【専門家に頼り切ることはできない】

 不登校の問題に関して専門家たちはみんな無能だというつもりはありません。おそらく優秀な専門家が週2~3回、各1時間程度のカウンセリングを数カ月続ければ、かなりの数の不登校を解決できるだろうと想像します。しかしそんな余裕のある人はいません。
 では、不登校を解消または解決した子どもや親は、専門家に頼らずどうやって問題を解決したのでしょう?
(この稿、続く)