カイト・カフェ

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「飛び抜けて優秀だったあの子たちの秘密」~あのクラスの話①

 かつて担任していたクラスの同窓会に、10年ぶりに出席しました。4年・5年と受け持って涙一斗、流して別れたクラスです。本当に切なくてこだわりがあったので、何回か誘われた同窓会ですが一度も出席できず今日まできてしました。しかしそれから10年がたったので一度会っておこうと思ったのです。
 6年生のときの担任も来てくれていて、親しい人なので思い出話にも花が咲きます。その中の一言、
「私、このクラスを受け持ったとき、T先生はずるいと思いましたよ。本当に先生、2年間も楽をしてきたんだなあと思って」
 確かにその通りです。

 担任をしているあいだも、専科や補充に入ってくれた先生から「T先生のクラス、中学生の女の子と保育園の男の子がいるみたいね」と言われたりしていました。女子が飛びぬけて優秀なのです。その、まるで中学生みたいな女の子が小学校4年生のクラスを動かすわけですから、楽でないはずがありません。たとえば・・・、

 忙しさに紛れて社会見学のレク係の指導を怠っていたら、金曜日の放課後、数人の女の子がやってきて、
「レク係の仕事、何もしていいないので土日にやってこようと思います。画用紙とマジック、借りて行っていいですか」
 そこで自由に持って行かせたら翌週の月曜日、バスが動き出すと颯爽と車内レクを始めます。私はそのときになって初めて、小学生のバス旅行の車内レクというもの、こういうふうにやればいいのだと知りました。すべてがそんな調子です。

 なぜそんなすばらしいクラスになったのか。旧担任の一人に聞くと、
「クラス編成の成功、組み合わせの妙です」(私のご指導のおかげとは言いませんでした)
 しかし私は別のことを考えていました。それは低学年教育の勝利ということです。先にあげた車内レクなど、何の学習もなしにできるはずはないのです。1年生から3年生までのどこかで、それと似たようなことを学んできたに違いありません。

 3年生までのもう一人の担任で学年主任をやっておられたのは、K先生という中年の女性教師でした。この先生についてはKマジックという言葉が使われ、先生の手にかかると子どもが魔法のように動くと言われていました。
 私もその噂を聞いていましたから、後にその教え子を担任するとも知らないまま、何回か授業を見せてもらったことがあります。しかし“魔法”の常で、なぜそうなるのかは分からずじまいでした。

 ただしKマジックはK先生がいなくなって解かれることはなく、子どもたち(少なくとも女の子たち)の中にしっかり根付いていたのです。

「先生本当に、2年間も楽をしてきたんだなあと思って」
 まったくその通りです。優秀な子たちだから誉めてあげられる、誉めてあげるとまた喜んでさらに良い仕事をする。だから私もさらに誉めて上げられる。すると子どもたちはさらに良い仕事をしてくれる、それだけですんだ二年間でした。
 見方を変えれば、1年生から3年生までの教育がすべてを決めるということです。低学年教育恐るべし。                             

(この稿、続く)