社会を振り回す人々

 5日の土曜日に北海道の泊原発が停止し、これで日本国内の全50基がすべて停止したことになります。

 その翌日の「サンデーモーニング」では泊原発停止のニュースとともに大飯原発も扱っていたのですが、その中で珍しい映像が出ました。原発の再稼働を求める住民の「原発がなくなったらどうするのよ。この町に何が残るっていうんだ」という発言です。私はちょっと驚きました。福島原発事故以来、「サンデーモーニング」は一貫して「反原発脱原発」でした。それが逆に傾いたように感じたからです。

 そのあともこの小さなブレは続き、前の週までの「せっかく全基止まるのだからこのまま脱原発」といった雰囲気は影をひそめ、もっぱらこの日まで原子力政策の全体像を示せなかった政府・民主党への批判ばかりでした。

 思うに「サンデーモーニング」は社会の流れを見誤ったのです。民主党政権(少なくとも野田政権)は早い段階から原発再稼働を決めており、夏を迎える前に国民の批判を押しつぶしてでも大飯再稼働に走るから、それに対して猛烈な批判を続けていけばいい、そう踏んでいたに違いありません。ところが“再稼働派”は意外に弱く、5月になって泊原発が止まってもなお大飯再稼働の見通しは立っていない。自ら煽った反原発の流れが、想像以上に強かったのです。

 このまま進んで夏を乗り切れず、大停電や計画停電、あるいは企業の連鎖倒産といった事態をまねけば、逆に「反原発」が叩かれる、「サンデーモーニング」は真っ先にやられる、そんなふうに考えたのでしょう。いま静かに「反原発」の立場を離れようとし始めました。

 いやそれ以前に「サンデーモーニング」のスポンサーたちが弱ったのかもしれません。視聴率を上げてくれるのはいいが、企業が成り立たないような方向へは進めては困る、そんな圧力があったのかもしれません。

 またそもそも大電力不足となれば、今度こそ「使用電力ピーク時のテレビ放送の中止」が本格化しかねません。「1973年のオイルショックの時にはやったのだから、今できないはずがない」。誰だってそう思います。

 同じようにあれほど強く大飯再稼働に反対し、政府をばかにしていたていた橋下徹市長も、

「(大阪の)節電策に住民の支持が得られない場合、再稼働を容認する」(4月26日)

あるいは

関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼働が認められない場合、代替エネルギー促進などにかかる行政コストの確保のため、『増税も検討しなければいけない』と述べた」(4月27日)

といった状況で、ゆっくりと方針を変えようとしています。

 テレビ局と政治家に共通するのはポピュリズムです。両者とも視聴率や票のためなら平気で態度を変えます。“反原発”が受けると思えばそちらになびき、“親原発”が潮流と見ればそちらに流される。ただその見極めが私たちより一瞬早いから、社会をリードしているように見えるだけなのです。8月になればこの人たちはこう言っているに違いありません。

「だからあれほど言ったじゃないか。政府がはっきりとしたエネルギー政策を示さないからこの電力不足だ!」

 我が国の学校制度も教育政策も、こうした人々にさんざんに振り回されてきました。“教育の崩壊”も“学力低下”も“教員の質の低下”もぜんぶ妄想です。この人たちが視聴率や票のために生み出した夜行する百鬼です。

 教員は常に忙しく眼の前の子どもたちにくぎ付けにされていますが、時おり顔をあげて教育の行く末を見据え、適切な手を打たなければなりません。そうしなければ私たち自身が“教育を殺す手先“にされかねないからです。