カイト・カフェ

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「ロボットは友だちだという日本の特殊事情」~しかし欧米に阻まれるかもしれない

 日本人に「ロボットと聞いて思い出すのは?」と聞けばある世代以上は「鉄腕アトム」と答え、その下の世代は「ドラえもん」と答えるはずです。「鉄人28号」と答える人もいれば「マジンガーZ」あるいは「ガンダム」と答える人もいるかもしれません(ガンダムはロボットではありませんが)。

 いま上げた5台のうち、完全な人工知能(AI)を持っているのはアトムとドラえもんだけで、あとの3台は知能・知性の部分を人間に頼っています。おそらく知性をもったロボットとなるとほとんど無敵ですから、ストーリーがつくりにくかったのでしょう。

 ただしアトムは天馬博士が息子に似せてつくったためにロボットに似つかわしくない“弱さ”や“迷い”を持っており、ドラえもんにはのび太という極めて強力な“足かせ”があります。どちらも“無敵”にならない仕組みになっているのです。

 欧米人に同じ質問、「ロボットと聞いて思い出すのは?」をすると出てくるのは間違いなく「R2―D2」と「C3PO」です(どちらも映画「スター・ウォーズ」に出てくるロボット)。ともにAIをもっていますがR2は分析専門、C3POは通訳専門でやはりここにも“無敵“にならない工夫がされています。
 他にはスピルバーグの「AI」の主人公デビッドがいますが、これも死んだ子どもの代用で、「可愛い」だけの何の力もないロボットでした。欧米の見るべきロボットはこれだけです。

 日本には山ほどのロボット・アイドルがいるのに、欧米にほとんどいない。そのことは理由があるといわれています。それはまさに「ロボット」という名前そのもののためです。

「ロボット」という単語は、チェコのチャペックという劇作家が「R.U.R.」という戯曲の中で初めて使ったといわれています。この「R.U.R.」はロボットが反乱を起こし人類を滅ぼすという話で、最後は何の救いもなく終わるものらしいのです。したがって「ロボット」という言葉自体に最初から忌まわしいイメージがつきまとっていて、その名を聞くと欧米人フランケンシュタインの怪物のようなものを思い浮かべるといいます。日本人が「ロボット」と聞いて「アトム」や「ドラえもん」を思い浮かべるのとでは大違いです。

 ですから工業用ロボットについても、日本人が「危険な仕事や汚い仕事の肩代わりをしてくれる仲間」と感じているのに対し、欧米人にとってそれは「人間の職場を奪う怪物」です。そんなことでロボットが発達するはずもありません。

 現在の日本は最高のロボット技術を誇り、実際に使われているロボットの数も世界一位です(ロボット関連の特許の出願数は第2位の米国の3倍、人口1万人当たりのロボット数は第2位のシンガポールの2倍)。

(私が言いたいのはこのあとです)
 その世界最高の技術を誇る日本のロボットが、福島第一原発では全く使われていない、それはなぜか。

 原発安全神話を信じたがために原発事故で使われるロボット開発が全くなされていなかったと説明する人がいます。しかしそんなことはありません。汎用のレスキューロボットを少し改造すればいいだけのことです。実際、東北大学千葉工業大学の研究グループが開発に成功して東京電力に熱いラブコールを送っています。
 また大型作業ロボットについて言えば、雲仙普賢岳の復興工事で、何台もの無線ブルドーザや無線パワーショベルが働いていたことを、私たちは知っています。それなのにそれらが使われない(使われているかもしれないが発表されない)。

 平田オリザという内閣官房参与が5月に韓国で講演を行った際、福島第一原発における低濃度汚染水の海洋放出は「米国からの強い要請があったから」と発言して物議を醸したことがあります。のちに慌てて撤回しましたが、こんな突拍子がないことを嘘や推測で言えるはずがありません。
 あれは菅首相の横で、確かにそう聞いたのです(ただし極秘という判断はし損ねました)。

 それと同じです。アメリカは自国軍事用ロボットの、絶好の宣伝チャンスをみすみす逃したくなかったのです。そこで様々な技術供与と引きかえに、日本の優秀なロボットの出番を封じたのです。

 たぶんそうです。