カイト・カフェ

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「教員という名のハケン」~私たちは県から市町村に貸し出されているハケンなんです

 本校のALTは契約形態が違うので問題ないのですが、市内の大部分の学校は人材派遣会社からの「業務委託(請負)」という形態を取っているのでとても厄介な問題を抱えています。それは学校が「業務委託」で派遣されたALTと雇用関係にないため、指示を出したり打ち合わせしたりすると労働者派遣法違反になるという問題です。これを「偽装請負」といいます。

 労働者は派遣会社との間に雇用関係を持っていて、そこに労働者が受け入れた労働条件があります。その労働条件を無視して無理難題を言われたら困るので、派遣労働者は派遣会社の指示だけを聞くように強く制限されているのです。

 したがってALTの場合も、学校は1時間の授業全部を、あるいは前後半に分けてどちらかをといったかたちで、授業を丸投げするしか方法がなくなります。むろん夜10時までかかる研究会など論外です(ただし市教委がその分の金を出してくれて、派遣会社がALTとの間で話をつけてくれれば別です)。

 ところでこれとよく似た労働者が学校にいます。誰かというと、私たちの大部分です。

 私たちの大部分は県費職員と呼ばれ、県の試験を受けて県に採用され、県の職員としての身分を持っています。県立学校(高校とか特別支援学校)の先生はそれでおしまいです。
 しかし義務教育の教員は市立とか村立の学校に勤務しているわけで、いわば県から市町村に派遣されているようなかたちになっています。ですから労働者派遣法の理念から言えば私たちは県教委の指示は受けても市町村教委の指示は受けないで済む、ということになりますが実はそうではありません。双方の指示に従わなくてはならないのです。

 歴史のある組織形態ですから何となく整合性があって、それほど問題があるわけではありません。しかしそれでもこまごまとしたことで面倒な場面もあります。

 例えば似たような内容の書類を別形式で出さねばならないとか、報告を市教委と県教委の双方に出さなければならない場合と一方だけでいい場合と、どう区別したらよいのかとか。困ったときに誰に相談したらよいのかとかいったことです。
 県教委の指示と市町村教委の考えが合わないこともままありますが、そこはあからさまに出てきませんからあまり問題はありません。

 厄介なのは感染性の病気が広がったときで、しばらくは市町村教委に報告したり相談したりしますが、県の保健厚生課に連絡したところから突然学校は県(県庁)と直結し、市町村教委を横に弾いた感じになります。保健所も絡むのでそうしないと動いていかないのです。
 ちょっと申し訳ないような気がしたりもします。

 私は以前、市の職員からこんなことを言われたことがあります。
「市立学校の勤務時間内につくった書類は市に帰属するのは当り前でしょ。それを使って別のところで仕事をするなんてことが許されていいわけはない」

 学校が授業で使っている自作資料や授業のスキルはその大半が別の市や町にいるときにつくったものです。
 彼の理屈で言えば一切かつての市や町においてくるべきものですから授業ができません。

 こんなところにも二重帰属の厄介さがあるのかもしれません。