ADHD再考


 ADHD(Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)は通常「注意欠陥多動性障害」と訳されますが、「多動」に目が奪われると読み間違いをすることがあります。確かに多動な子はたくさんいますが、それよりも衝動性の方が特徴的なように思われるのです。  衝動性というのは簡単に言うと、「思いついたことをすぐ口にしてしまう」とか「カッとなるとすぐに手が出る」とかいったものですが、中でも非常に特徴的な姿として思い浮かぶのは、興味あるものが目に付くと、群集を掻き分ける様子もなく、まっすぐ進んで行ってしまう姿です。大人になると多動性は薄くなるが、衝動性は消えないと言われています。  また同じADHDの子でも注意欠陥が優位な子の中に、多動とはとてもいえない子がいます。プロフィールを400字程度で書いたときに「ボーとして」といった表現が五つも六つも使われてしまうような子です。まさに「のび太ジャイアン症候群」と言われた時代の「のび太」タイプの子で、多動ではないのでADHDであることに気づかれない場合もありますが、よく観察すると衝動性(特に、思いついたことをすぐに口にする、行動に移す)傾向はあるようです。  ADHDについて改めて考えてみたいと思ったのは、しかしこうした整理のためではありません。典型的なADHDと思われる子の中に、被虐待の子がいるという話を最近聞いたからです。  チェックリストにしたがってADHD検査をする、と完全に適合するのにADHDではない子。それをADHDと見分ける指標は、一種の夢遊状態だといいます。幼いころから暴力を受け続けた子は、痛みを逃れるために、身体から意識を飛ばす(つまり夢遊病のように分離させる)ことができるらしいのです。「自分の世界に入り込んでしまっている」といった言い方をする人もいます。  そうなると今度は「のび太」型ADHDと重なる部分が出てくるのでまた厄介ですが、落ち着きなく多動でありながらしばしばボーっと夢遊状態になる子、そんな子がいたら最優先で対応しなくてはなりません。ADHDで死ぬ子はいませんが、虐待で殺される子はいるのですから。