育てにくい子


 親の育て方と無関係に、「最初から育てにくい子」というものが世の中に存在する、このことは案外意識されていません。

 正確な数字ではありませんし日本の研究でもありませんが、確かアメリカでは2〜3割の赤ん坊が「育てるのが難しい子」と分類されていたように思います。

 彼らはしばしば理由もなくかんしゃくを起こします。不意にパニックを起こすかと思うとなかなか回復しません。ある子はしばしば走り出して迷子になるので親も目を離せませんし、気も休まりません。しょっちゅう怪我ばかりしています。食事は食べ散らかすし、一瞬だってじっとしていてくれません。

 多分こういう子たちとうまくつき合うには何十ものワザが必要なのですが、それに熟達するころには彼らはずっと先を進んでいたりします。

 そうした子たちがうまく育たなかったからといってその親を責めるわけには行きません。もともと難しい課題が与えられているのですから、そう簡単にはいかないのです。

 これほど決定的な差ではありませんが、私自身が二人の子での間でそれを味わいました。

 上の子は女の子でしたが、年をとってから親になったせいでさほど不安もなく、そこそこうまく育ちました。ですから、年をとってから親になるのも悪くないな、と思っていたのですが、下に男の子が生まれたとたん、そうした自信はあっという間に瓦解してしまいます。

 10ヶ月で歩行器ごと玄関に落ちて額に三針の裂傷。1歳で肩から湯を浴びて大やけど、1歳2ヶ月で風邪のための長期入院(退院の日に別の風邪を院内感染した)、2歳で押入れの上の段から飛び降りて骨折・・・その他細かな傷は山ほど。

「この子、小学校に上がる前に死ぬんじゃないか?」

と本気で思ったのもそのころです。

 結局一姫二太郎で、女の子が育てやすかっただけなのです。

 ただ、人類が急速な変化を遂げている(そう考えている人もいますが)のでなければ、20年30年前だってそういう子はたくさんいたはずで、それが小学校に入るころにはまがりなりにも45分間机に座っていられる子に変化していたのです。

 現在は違います。

 ある教育評論家は

「子どもは学校に来てはいけない。学校に来ていいのは児童と生徒だけだ」

と言ったりしますが、現代の学校には子どもが子どものまま入学してきます。私の息子も小学校入学には間に合いませんでした。

 それがなぜなのか、どこに問題があるのか、改めて考えてみる必要があるでしょう。