カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「通販の返品手続きは驚くほど簡単で、しかもオマケ話つきだった」~母がテレビコマーシャルで不要な薬を買ってしまって

 95歳の母がテレビを見て頻尿・夜尿の薬を買ってしまった。
 利尿剤を飲んでいる身なのに。
 さっそく返品手続きをしたのだが、その過程で思わぬ提案があったのだ。
 「次回、同じ電話から注文があったら受け付けないこともできますが――」
 という話。(写真:フォトAC)

【母が通販で不要な薬を買ってしまった】 

 先週書いたようにウサギのミースケの老衰がひどくて心配していたら、今度は今年96歳になる母の様子も何となく変で、食事を食べたり食べなかったり、目の前にある食べ物を見落として別の食事を用意したりと、心配なことが増えてきました。

 先週は金曜日に家を訊ねたら、こたつの上に未開封の見慣れない薬があって、すぐ横に振込用紙があります。訊くと、
「ああ、それ振り込んでおいてちょうだい」
 みると振込額が1万4000円余りで、薬ひとビンにしては金額が大きすぎます。
「1個1万4000円もする薬って何?」
と訊くと、
「1個じゃない」
と棚の方を指さします。そこには同じような小箱がふたつ置いてあります。しかし3個1万4000円だって安くはない。
 箱の裏を読むと効能は、
「体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿で、ときに口渇があるものの次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ・・・」
 なんだかあれもこれもでよく分からないので今度はネットで調べると、「尿トラブル対策商品」で「排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿」に効く薬のようです。あっても困らないもののような気もしますが、母は紙パンツ暦も長いため頻尿や夜尿の苦になる人ではありませんし、足のむくみを嫌って利尿剤を使っている状況ですから、この上オシッコに関わる薬を飲み始めるとコントロールが難しいのです。

【薬の購入は本当に難しい】

 母はその辺りの理屈が分からなくなっています。
 足のむくみなんてそれで死ぬ人はいないのですから放っておけばよさそうなものを、やはり見た目が気になるようで、医者に行くと必ず足を見せて「これを何とか」と言うのです。
 むくみは水分が身体の下の方に降りてから上がってこないためで、運動をして足の筋肉を鍛えて水分が上がってくるようにするか、水分のそのものの摂取を減らして、あとは寝ているときや座っているときに足を高い位置に上げているとか、その程度のことしかできないものです。
 しかし母は熱中症が怖いので水を飲み、むくみが怖いので利尿剤を飲み、さらに失禁が怖くて頻尿や夜尿を抑える薬を飲もうというのです。
 老人の身体は「三すくみ」「四すくみ」の状態で、薬も「あちらに良ければこちらに悪い」「さじ加減がいつも微妙」。とても難しく、理解してもすぐに忘れてしまいます。
 
 母はテレビコマーシャルで「あれこれオシッコ関係にとても良い」と紹介されてすぐに電話をかけ、ひとビン一か月分6000円ほどの薬を初回三か月分、そのあとも三か月ごとに三箱ずつ送られてくる契約を結んでしまったようなのです(初回注文には割引があった)。毎日飲むとなると飲ませる管理も私の仕事です。
 必要ありませんし高いし、面倒くさいことこの上ないですからさっそく返品交渉です。幸い開封した箱はひとつもありませんでした。

【返品手続きは驚くほど簡単でしかもオマケつき】

 その日は遅かったので翌朝、電話窓口が空くと同時に返品手続きを始めます。いつもこうした作業では担当者に繋がるまでにとても時間がかかるのですが、今回は一発でつながりました。運がよかったのか、先方の受け入れ体制がしっかりしていたのか、そもそも苦情や返品が少ないのか、そのあたりは分かりません。

 担当者の対応もスムーズで話しやすく、返品の条件や手順を丁寧に説明した後で書類の書き方なども確認され、さあこれで最後だというところまできてようやく返品理由を聞かれます。答えなくてもよかったのかもしれませんが、言わない理由もないので事情を説明すると、
「それでしたら次回発送分以降も必要ないということで、キャンセルの手続きをしておきましょう」
 あ、そうか、それはやめてもらわなくてはいけない。そしてさらに、
「もしよろしかったら『次回、同じ電話から申し込みがあった場合は受け付けない』ということもできますがどうしますか?」
 そんなやり方があるのかと目からウロコ。私は、
「大丈夫だと思いますが・・・」と言いながら、「念のためお願いします」と言い直すと、
「では、次回お電話をいただいた際に『ご家族とよくご相談の上で』とお断りするか、受け付けたことにして実際には手続きしないか、両方のやり方がありますがいかがいたしましょう」
 そんな細かなことまで、とびっくりしながらも、前者でお願いしました。

 頻尿の薬など欲しがるのは基本的に老人だけです。そうなると私の家と同じようなことがあちこちで起こってくるのかもしれません。何度も繰り返されれば企業だって大変で経費も掛かります。気持ちよく返品を受け取ってさらに二度と同じことが起こらないように対策を打っておく、考えてみれば当然のことなのかもしれません。
 次回、別の製品で同じことが起こったら、こちらから尋ねてみようと思いました。

 ところで、前にも申し上げましたが(*1)、母だから通販1万数千円で済んだのですが、私以下の世代が90歳になるころには何が起こるか分かりません。ネットショッピングやネットバンキング、投資、ギャンブルに慣れた人たちですから、家に居ながら何をしでかすかわからないのです。私たち自身がしっかりしているうちに、手を打っておく必要があるかもしれません。
 何か、運転免許返納みたいな制度があるといいのですが――。