カイト・カフェ

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「私の右足がゾウのようになった話」~関節に菌が入るとこうなる

 20年前、突然、右の足首が腫れ、ゾウの足みたいになったことがあった。
 大量の雑菌が入ったということだが、そこから20日間の入院。
 しかし私は慌てず、颯爽とうしろも振り返らずに病院に向かった。
 そして今・・・。
 
という話。

(写真:フォトAC)

【右足がゾウになる】 

 もう20年も前のことですが、スキー場の帰りに階段で右足首を捻ってしまい、シップを張ったものの痛みがしばらく続いたことがありました。一カ月ほど違和感を抱えながら過ごしているうちに、右足の甲の足首に近い方に、ちょうど小さな子どもが頭を打った時のたんこぶのような直径3センチほどのふくらみができてきまいました。
 
 私が子どものころ、大蔵大臣に水田三喜男という人がいて、禿げ頭のおでこの中央に同じような大きなふくらみがあり、大人の話によると、あれは脂肪の塊で取っても取らなくてもいいものだということでした。
 私の足首にできたのも似たようなものと思い、押すと潰れて、しばらくするとまた膨らんでくるのが面白くて、また一カ月ほど遊んでいました。痛みはあったりなかったりです。
 ところがそんな遊びにも飽きたある朝、強い痛みに目が覚めて右足を見ると、象の足のようにパンパンに膨れ上がっていたのです。

 まだ現役でしたので急いで学校へ行って午前中分の自習計画を立て、取って返して病院に行くと、医師はまずレントゲンを撮って骨に異常がないことを確認し、「これはもしかしたら雑菌が入ったのかもしれないねえ」とおっしゃって、「調べてみるから」と注射器で足首の腫れた部分から体液を抜くと、鎮痛剤と張り薬を出してくれました。


【鮮やかに、うしろも振り返らずに入院する】

 翌々日、勤務の最中に電話が入ります。聞くと、
 「大量の雑菌(*)が入っています。病院の手配をしましたのですぐに入院してください。早くしないと一生歩けなくなります。入院の目安は20日間です」
 40代後半でしたから一生歩けないと言われると私もビビリます。その場で子どもたちには自習にしてもらい、校長先生に報告すると、3時間ほどかけて20日分の自習計画を立て、自家用車に飛び乗って家で最低の準備をして、そのまま病院に駆け込みました。

 困ったのは翌日が土曜参観の日で、PTA主催の学級対抗大綱引き大会まで入っていたことです。
 しかし40代後半ともなるとあまり悩むこともなく、参観授業の方は急遽音楽専科の先生に代わってもらい、PTAの方は学級会長に電話をして「よしなに頼む」とお願いして終わりです。みんな大人ですから何とかしてくれるでしょう。
 そして思った通り、すべては順調に動いたようです。綱引き大会などは「担任がいなかったから優勝できた」と周りから揶揄されたほどだったと言います。

 私は私で内臓や頭の病気ではありませんから、ただじっとしていればいいだけの元気な患者。ちょうどやっていた日韓共催ワールドカップサッカーのほぼ全試合をテレビ観戦し、トールキンの「指輪物語」を全巻読んで、さらにワイドショウと呼ばれるニュースバラエティを片っぱし見て、ああ世の中はこんなものを見て教育を学び、ここから言葉を借りて学校批判をしているのだと、怒りながら社会勉強もして呑気に過ごしていました。ある意味、有意義な二十日間でした。
(しかし退院してからは、遅れを取り戻すのがメチャクチャ大変だった)

 児童、学校、同僚、保護者、その他たくさんのひとに迷惑を掛けました。しかし恩返しをする時間はいくらでもあると思い、実際に時間はたっぷりありました。
*そのとき検出された菌は黄色ブドウ球菌(食中毒かい?)や嫌気菌(けんききん)。友だちにメールで知らせると「仕事に嫌気(いやけ)がさしたの?」とか尋ねてきて、これにはイヤになりました。 


【20年目のゾウの足】

 さて、なぜそんな昔の話をしたのかというと、いま、目の前にある私の右足が20年前とよく似た感じになっているからです。

 先週の金曜日、朝、起きると右足の甲の足首に近いところに違和感があって、押すと飛び上がるほど痛くてちょっと驚きました。これが別の場所だったら心配もしなかったのですが、20年前のこともありますし、たまたまその日が94歳の母を整形外科に連れて行く日だったので、ついでに診てもらうことにしました。いつもかかっている整形外科ではありません。

 医師は足首のレントゲンを二枚撮ると骨に異常のないことを確認し(ここまでは基本的手順らしい)、
「どうも関節炎のようですね、その位置は」
 私が20年前のことを話して心配を伝えると、
「可能性はなくはないが、極めて低いでしょう」
 そして10日分のシップと鎮痛剤を出してくれました。私も一応引きさがりました。

 ところが最初は強く押さえないと痛みもなかったのに、月曜日の夜中に強く痛み出し、足首から下全体もむくんだようになってきたのです。そこで恐れて再度、病院に駆けつけました。しかし医師は、
「うん、赤味もなくなったし腫れも引いてきたね」
(あれ? 金曜日、赤かったっけ? 腫れていたっけ?)
「もうあなたの心配するような可能性はないよ。良かったね?」
 釈然とはしなかったのですが、前夜の痛みはすっかり消えていたので不承不承引き下がりました。

 ところが昨日(木曜日)の朝、見ると足はゾウのように(というほどでは、まだありませんが)膨らんでいたのです。
 20年前、たんこぶのように膨らんだ個所を潰して遊んだときのように、腫れた部分を押すと粘土のようにへこんで、やがて戻ってきます。皮膚の下にたっぷり膿が入っている感じです。

 いつもの整形外科は昨日休診日でしたので、今日、行ってこようと思います。
 やばいです。今回はワールドカップもありませんし。