「医師も他もすべて年老いて消えていく」~“私の右足がゾウのようになった話”の後日

 結局、私の右足はゾウになることなく、治療継続・様子見ということになった。
 そして私はかかりつけ医の、あまりもの老けように気を奪われている。
 そうだ。私の周辺でさまざまなものが老いぼれて様変わりしていく。
 私が朽ちる前に、周囲がまず閉じていく。

という話。

(写真:フォトAC)

【やはりかかりつけ医は違う】 

 先々週の金曜日に右足首が痛くなり、医者に行ったところ関節炎と言われた、しかしちょうど20年前に似たような症状を放置したら足首に大量の雑菌が溜まり、20日間も入院する羽目になったことがあって、それが不安で次の週(つまり先週)の金曜日、あらためてかかりつけの整形外科医に行くことにした――と、そこまでお話ししました。

 結論から言うと、状況はあまり変わりませんでした。追加のシップと痛み止め、胃ぐすりも併用した方がいいということでそれが追加されて終わりです。
 ただし異なることもあって、今度は6枚ものレントゲン写真を撮った上でどうやら骨にも関節にも問題はなさそうで、関節炎とは言えないだろうという診断が下ったのです。それを前提に、原因は分からないものの炎症を起こしているのは間違いないので、消炎効果のあるシップを張り続けて様子を見ようということになったのです。結局、治療の方向は同じです。

 私としては「大量の雑菌が・・・」ということにならないよう、早めに抗生剤でも出してほしいところですが、むやみに寄こせというわけにも行きません。医者の診断に盾突いてもあまり良いことはなさそうです。
「心配なら血液検査をしますか?」
と言われて、それだけはやってもらうことにしました。

 私が素直に引き下がった理由はもうひとつあって、それは20年前とは決定的に異なることが2点、そのために少し安心できたからです。
 ひとつはカルテに前回38・5度もの熱があったと書かれていたこと、もうひとつは痛みがハンパではなかったことを思い出したことです。記憶では前回も同じ右足だったのですが、カルテだと左。そう言えば「これが右足だったら車を運転して病院にも行けなかった」と思いながら入院する病院へと急ぎました。それくらい痛かったのです。

 今回は平熱ですし痛みもそこまではありません。強いて言えば現在の状態は20年前に入院する一カ月ほど前、足首にできたたんこぶ様のものを押したり潰したりして遊んでいたころと同じなのかもしれません。これから悪化するにしても、今回は警戒して見ていられるので結果も違ったものになるでしょう。
 やはりカルテのあるかかりつけのお医者さんの方が、安心して診てもらえます。


【その医師も他も、すべて年老いて消えていく】 

 ところがそれとは別に、今回2年ぶりにかかりつけの整形外科医に行って、動揺したことがありました。それは医師があまりにも年老いてしまったことです。
 このまえ診察してもらったのは2年前、トイレの温水便座を取り換えようとして隠れたところのネジを手探りで捻ったら、逆に右手の親指を捻って傷めたときのことです。そのときは医師が年老いたといった印象はまったくありませんでした。もしかしたら2年の間に大病でもされたのかもしれません。

 この地に引っ越してきて30年近く。つい先日、歯科医についても話しましたが、その間に私が齢を取ったように医師たちも年齢を重ねていました。家族ぐるみでお世話になった内科と耳鼻咽喉科の医師はすでに代替わりして、かつて親しく話をしてくれた大(おお)先生とは、最近顔を合わせたこともありません。
 別の方向に記憶を巡らせれば、理髪店の夫婦も年老いていつまで私の面倒を見てくれるのかもわかりませんし、見てもらう私の髪も、ずいぶん薄くなって鋏を入れる回数も減っているに違いありません。

 近くにあったパチンコ屋がいつの間にか葬祭センターに替わり、その後しばらく廃屋のまま放置されていたのがコンビニが建って、ずいぶんにぎやかになってからもだいぶ経ちます。娘のシーナが「初めてのおつかい」に行ったスーパーのシャッターが閉じられてから、すでに20年以上も経っています。
 広いネギ畑を潰して造成した新興住宅地は、手入れの悪い家ですでに庭木が密林状態です。“新興”なのにそれだけ年月が経ってしまったということでしょう。

 私が朽ちる前に、周囲がまったく異なったものに変わって行こうとしています。