「基本的には相応が有利なようにできている」~障害のある子どもの就学をどう考えるか①

 孫世代の就学について相談を受けた。
 障害のある子を特別支援学校に入れるべきか、
 普通学校の特別支援学級にすべきか。
 そこで私はこう答えた。

という話。  

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(写真:フォトAC)


 都会に住む義理の姉(妻の実姉)が2年ぶりに訪ねてきて一泊していきました。三姉妹の長女で、もう一人の次女にあたる義姉が3年前に亡くなってからは、距離はあるものの心理的にグンと近づいたのですが、コロナのために長く会えずにいました。私ともウマが合います。
 ひと晩いろいろ話した中で、義姉の友人のお孫さんの就学についての相談がありましたので、ここに記しておきたいと思います。何かの参考になるかもしれません。

【義姉の相談を受ける】

 内容はこうです。
 友人のお孫さんはダウン症で、生まれたときからさまざまな支援を受け、本人にも母親(義姉の友人の娘)にも多くの友だちができていた。その中の特に仲のよい友人親子との関係で、小学校の就学は特別支援学校へと早々に決めていたようです。
 しかしそんな理由で簡単に決めてしまっていいものだろうか、普通学校から特別支援学校への転校という話は聞くがその逆はない。だったらまず普通学校の特別支援学級に入学してから、先のことはあとで考えたらどうか、と義姉の友人は思うのだそうです。
「その件で母娘の対立があるわけではない。娘は私(義姉の友人)の言うことはほぼ確実にきくから私が本気でそう思うなら言えばいいだけのことだが、それだけにむしろはっきりと言えない、どうしたものか」
という内容でした。
 私はこんなふうに話しました。


【無理をすれば伸びるときもあるが置いて行かれる】

 教育制度は都道府県によって若干の違いがあるから一概に言えないが、娘さんは単独で(あるいは夫婦だけで)特別支援学校就学を決めたのではないと思う。特にダウン症は生まれたときから発見しやすいから、保健所・教育委員会を始めとしてさまざまな支援を受けてきたはずだ。小学校入学に関しても、市町村の就学指導委員会とか来入児審査会とか、何らかの就学に関する判定委員会が関わっての決定と思う。
 そうだとして、結論から言うと、やはり専門家の判断に従うのが得だろう。

 お祖母さんが普通学校にと言うのは、そこに可能性があると思うからだろうけど、そのあたりの損得勘定は難しい。ウチの子よりも優秀な子どもたちに囲まれて、そこで引きずられるように実力を伸ばしていく可能性もないわけではないけど、置いていかれるということもある。それは高校などでは顕著だよね。
 実力不相応のランク上の学校に入れば、何とか一緒に伸びていけそうな気もするけど、置いて行かれた子の立場はかなり微妙だ。それでもよかったという子はたくさんいるけど、高校で置いて行かれるというのは、月日を重ねる度に授業が分からなくなっていくわけだからかなりシンドイ。1ランク落としておけば気持ちよく学習できたのかもしれないのにね。


【基本的には相応が有利なようにできている】

 私は中学校の教員をしていた時につくづく思ったのだけど、その子に合った教育を受けるって本当に大事だよね。例えば1学年150人の学年があるとするよね。その学年で定期テストの成績を並べると下から10番目くらいまでは確実に普通学級にいる。特別支援学級の子が最下位層にいるなんてことはあり得ないのだ。だって最初から最下位層にならないための勉強をしているのだもの。

 例えば数学だったら計算問題や、応用でも比較的楽な問題を選び出してそれを解けるようにする。解ける問題がどれか見抜く力も付けてもらっている。証明問題のようなやっかいなものには手を出さない。
 それじゃあ真の学力はつかないなんて言う人もいるけど、この子、数学者になるわけじゃないでしょ? 一定レベル以上の学習は入試には必要かもしれないけど人生には必要ない。それに東大受験生だって満点合格するような勉強はしていないよ。大切なことは受かることだ。だったらまず、合格最低点が取れるようにするのが作戦じゃないかい?

 普通教室で勉強がわからなくなっちゃった子は気の毒だ。今の私が突然、薬学部の授業かなんかに投げ込まれて、わけがわからなくても前を向いていなさい、内職をしてはいけません、寝るなんてもっての他だと言われても苦しいだけでしょ? 分からなければ聞けばいいようなものだけど、とりあえずどこから聞いたらいいのかもわからない。そんな状況なのに“たまには手を挙げて発言しなさい”などと言われるのは恐怖だな。
 普通学級で授業が分からなくなっちゃった子というのは、ずっとそんな目に合っているわけだ。その点、支援学級の子はいつでも先生がそばにいて、分かりませんという前に手を貸して導いてくれる。学年の最下位層にいなければ、高校入試に選択肢も見えてくる。

 

【地域の人間関係は不変じゃない】

 今は特別支援学級の例で示したけど、支援学級と支援学校の間もそうだ。支援学校に行ってしまうと地元の友だちから引き離されてしまう、すると大人になってから支えてもらえない――そう考える人もいるけど私はそうは思わないね。子ども社会なんて薄情なもので、中学校を卒業して別々の高校に進学すると、同学年・地域子ども社会は解散して高校別に再編成されてしまう。社会に出れば職業別・企業別社会だ。それぞれが地元に戻って関係を作り直すのは定年退職後だな。暇ができて地域のために働くようになって初めて、自分の周辺を見直すわけだ。
 そんな中途半端な関係に期待しすぎてはいけない。それよりもいま世の中にある支援の仕組みを、うまく活用する方が何倍も有利だ。

(この稿、続く)