「超小規模校では教師の仕事量にとんでもない不公平が生れる」~不登校の子たちにオンライン学習を③

 離島やへき地、時には都会のど真ん中に生まれる超小規模学校。
 そこではどんな基準で学級数を決め、教師を配置しているのだろう。
 そしてどんな生活をしているのだろう。
 「二十四の瞳」みたいな、のどかで平和な雰囲気なのだろうか。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200622065619j:plain(「夏の能古島フォトACより)

【特別支援学校・マンモス校・超小規模校――行ってみないと分からない】

 私たちは自分自身あるいは子どもたちの経験から、学校というものをよく知っているつもりでいます。しかし特別な学校、例えば特別支援学校だとか、人数が多過ぎて体育館で全校集会もできないマンモス校だとか、逆に全校児童5名の超小規模校とか、そんな学校でどんな学習が行われているか、どんな日常風景なのか、経験のない人にはまず想像のつかないことです。


 私自身は、超とは言えませんが全校生徒1300名のマンモス中学校と、全校児童18名の小規模小学校の両極端の経験があります。特別支援学校の経験はありませんが、妻が専門家なのでおおよそのことは分かっているつもりです。それぞれたいへん特徴的で面白い世界です。

 例えば1学年10クラスを越える大規模校では、修学旅行のバスに乗るための練習もしなくてはならないといったことは、経験がなければ思いつきもしないでしょう。450人が一斉に動けばあちこちで混乱が起きて、出発までに恐ろしく時間がかかってしまうのです。旅先でいちいち20分もかけてバスの乗り降りをしているようでは日程はすぐに行き詰まってしまいます。
 また、この規模になると金閣銀閣のレベルの寺院でも、自校の生徒だけですぐにいっぱいになってしまいますから、旅行隊を二つに分けて同じ場所に同時に入館しないように工夫したりします。そんなことも、実際に大規模校の職員になってみないと分からないことでしょう。
 他にも大規模校ならではの面白い話が山ほどあるのですが、今は小さい方のお話です。

 

【学級数はどのように決まるのか】

 学校には定数法(正式には「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」)というのがあって、1クラスの児童生徒が40人を越えると二クラスに分けなければならないのがよく知られていいます。
 例えば1学年に児童数40人のクラスが1学級しかなくて、そこに転入生がひとり入ると翌年は20人と21人の2クラスに分けなくてはなりません。80人の学年だと40人ずつの2クラスですがそこに転入生が一人は言って81人になると27人ずつの3クラスに、といったふうです。
 学級数を増やさずにチームティーチングで指導する(1クラスに2人の担任)ということも可能ですが普通はしません。また小学校1年生は例外で、1クラスは35人まででそれを越えるとクラスを分けることになります。

 この規定は保護者にも案外知られていて、我が子が41人のクラスでギュウギュウ詰めの生活をさせられるか、20人あるいは21人の少人数の学級で丁寧に面倒を見てもらえるかの瀬戸際ですから、対応が違っているとすぐにクレームが入ります。 4月の末には一人転出することが分かっているような場合は41人でスタートせざるを得ないので、そういうときは丁寧な説明が必要となります。

 では逆の場合、児童生徒数が少ない方にはどういう規定があるのでしょう?
 これについては「隣り合う学年(4年生にとっては3年生と5年生)のどちらかと合算した場合、児童生徒数が16人以下だと学年は異なっても同じクラスにしなくてはならない」が原則です。
 模式的な言い方をすると、3年生が8人、4年生も8人だとすると、2学年をひとつにして1人の担任(学級担任・教科担任)のもとで16人が学習しなくてはならないのです。こうしてできクラスのことを、複式学級と言います。

 ただしここでも小学校1年生だけは例外で、2年生の児童との合計が9人以上だと単独で学級を形成することができます。例えば新入生が4人しかいなくても、2年生が5人以上だと単独のクラスとして始められるわけです。もちろん翌年、進級して人数がそのままだと「16人以下の場合は~」というルールが復活して二つが一つのクラスにならざるをえません。

 へき地や離島の小中学校にはそんな複式学級がいくらでもありますが、驚いたことにドーナツ化現象のために、今や都市のど真ん中に複式学級が生れることもあったりします。

 理屈上は三つの学年が一緒になる複々式、さらには全校1クラスの単式学級というの考えられますが、実際には複式以上の学級を持つ学校は日本にはありません。各学年1名しか在籍しない全校児童6人の小学校でも、1・2年、3・4年、5・6年の3クラスで運営しています。

 

【小学校の先生の数はどうやって決まるのか】

 学級数は各学年の児童生徒数によって決まりますが、学校の先生の数はどうやって決まるのかというと、その学級数に応じて決まくるのです。
 定数法による職員数の計算はとても分かりにくいので、文科省が示した例(「教職員定数の算定について」)を参考にすると、小学校は下のようになります。

f:id:kite-cafe:20200622065929j:plain 分かりにくいのは0.5、0.75といった表記で、これは計算上2校を1人、あるいは4校を3人で賄おうとするものです(だれかが2校分を1人で賄う)。ただし「標準」は最低値を示すものですから市町村立学校の場合、地方自治体が予算を出して0.75人のところに1人を当てることも少なくありません。
 表の一番の上段の3学級の例では担任外教諭が0.75人となっていますが、現実的には1人として、その1人分は教頭とする場合が多いようです。教頭の仕事は特殊でどうしても必要です。事務職員の0.75人も1人とする地方自治体が多いと思われます(そうでない例、つまり2校勤務の話も聞いたことがありますが)。

 小学校の小規模校についてまとめると、3学級の学校では校長・教頭・養護教諭(保健の先生)・事務職員がそれぞれ1人、担任教諭が3人となります。
 3つのクラスに3人の担任教諭、小学校はそれでいいのです。しかし中学校はそういうわけにはいきません。教科担任制ですので先生が3人では足りないのです。

 

【中学校の先生の数はどうやって決まるのか】

 中学校の場合は下の表のとおり、3学級の学校では校長と養護教諭が一人ずつ、教頭が0.5人、教科担任が7.5人、事務職員が0.75人ということになっています。

f:id:kite-cafe:20200622070011j:plain 教頭先生の0.5人というのは先ほどと同じで、右半分とか左半分とか言うことではなく、教科担任の7.5人と合わせて8人という計算です。教頭先生にも授業を受け持ってもらわないと授業が回っていきません。

 しかし考えてみるまでなく中学校の教科担任は9教科10人(技術科と家庭科を別にすることが多いので)。不足の2名はどうするのでしょう?
 この場合は教員免許を2種類以上持っている先生に2教科担当してもらうか、特別に都道府県の許可を受けて誰かが免許外で教えるとか、あるいは市町村の予算で定数外の先生に来てもらうとか、さらにあるいは似たような数校を一人の先生に巡回してもらうとか、さまざまな方法で凌ぎます。
 事務職員の0.75人を1人にするのは小学校と同じです。

 

【そうなると教師の仕事は、小中であまりにも不公平になる】

 さて、同じ3学級の学校なのに小学校では教諭が3人、中学校は教頭先生を含めて8人です。ずいぶん差があります。

 小学校の3人の担任教諭の負担は半端ではありません。中規模以上の学校なら理科や音楽、家庭科や図工に専科の先生(上の表の「担任外」)がつくこともありますが、3学級校は配置がないので全教科・全授業時間を自分ひとりでやらなくてはならないのです。
 しかも先週お話しした通り、係の仕事は一人十業務十主任で忙しさも半端ない。

 一方、中学校の2・3年生の音楽や美術は週1時間しかありませんから、これらの教科では毎週3時間くらい授業をやれば教科担任としての仕事は終わってしまいます。さらに言えば体育や音楽、あるいは美術や技術家庭科でも、全校生徒10人といった中学校では全学年一緒に授業をやった方が効果的です。1学年3~4人ずつの体育ではバレーボールやバスケットボールの試合さえできません。音楽の合唱だって3~4人でやるよりは10人でやった方がやりやすいでしょう。そこで授業をひとつにまとめてしまうと、一部の教科担任は週に1時間も授業をやったらあとは係の仕事しかない。一人十業務十主任でもさすがに時間を持て余すようになります。
 この不公平を、超小規模校ではどのように補っているのでしょう?

(この稿、続く)