カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「夏休みの廃止、これしか道はないが実現しない」~教員の働き方改革に万民が納得する解決策を見つけた!③

 1日の授業を上限5時間として、その代わり夏休みをなくすというアイデア
 不可能ではないが実現しないだろう。
 教員が減っても、そのぶん学校の数も減らせばいいのだから。
 そして地域がなくなる。
という話。 f:id:kite-cafe:20211116185044j:plain(写真:フォトAC)

 日常の授業時数を減らして、その代わりに夏休みも学校を開くというアイデアに関して、それぞれがどんな反応をするか考えています。

【児童生徒はもちろん不満】

 これは怒ります。夏休みがないなんて最低です。しかし教員同様、これまでの教育改革で子どもの意見を聞いたことなどありませんから今回も無視してかまわないでしょう。意向調査しなくてはならない理由はありません。

 進学・就職や進級の準備期間という意味合いもある欧米の夏休みと違って、日本の夏休みは避暑が最大の目的です。高温多湿の日本で真夏に子どもを集めたって勉強になりません。それどころか危険です。
 しかし幸いなことに一昨年あたりから、高冷地ですら一気に冷房設備が入るようになっています。ですからそもそも夏休みの必要性自体がなくなりつつあったのです。

【政財界は・・・、意外にも大反対する】

 学齢期の子どものいない人たちにとってはどうでもいい話、夏休みも授業をすると聞けば「ほう」と感心する人が大半かも知れません。ところがあに計らんや、経団連・商工会議所・各自治体からどっと抗議の声が上がります。
「学校の夏休みがなくなったら、飲食・観光業がつぶれるじゃん!」

 そうです。現状では親が自分の都合に合わせて夏季休暇を取り、子どもを連れて自由に海なり山なりに行けばいいのを、学校の夏休みがなくなると土日しか遊びに出かけられません。誰かに仕事を任せて休みを取ればいい大人と違って、子どもは勉強を代わってもらうわけにはいかないのです。
 土日しか観光客が来ないとなると、当然、飲食・観光業は軒並み収入減。海水浴場やキャンプ場を持つ自治体では土日のたびに大渋滞です。利用者の側からすれば一年前でもホテルの予約が取れない、ディズニーランドはすし詰め状態、海外旅行は望むべくもない――。

 私が知恵を授けましょう。
 昨日お話しした通り、教師には「子どもの来ない出勤日」が13日あります。そのうち5日を現在の夏休み期間中のどこかに置くのです。月曜日から金曜日までを休みにすれば、前後の土日も含んで9日間の夏休みになります。これなら海外旅行にも行けます。
 しかしそれでも全国同一の夏休みだと観光地は吸収しきれません。そこで夏休みを割り振るのです。例えば新潟県なら7月最終週を上越地方、8月第一週は中越、第二週が下越といった具合です。それを年ごとローテーションします。これだったら観光地は平準化して潤い、行く側からするとホテルもとりやすくなるはずです。このやり方はすでにドイツで実証済みですから間違いありません。先生方もこの時期に年休をまとめ取りしてもらいましょう。

【夏休みの廃止、これしか道はないが実現しない】

 学校の仕事は減らさない、人員は増やさない、という条件の下で教師の労働を軽くしようとしたら、長期休業の廃止が唯一の方法です。教員の労度環境が一般のサラリーマンと一緒なら、先生たちも納得するでしょうし世間のやっかみにも合わずに済みます。
 しかしこのアイデアが実現することはありません。中体連の全国大会や甲子園大会が開けなくなる、中高生の短期留学ができなくなる、夏休みを前提としたあらゆる行事が難しくなる、教員の研修機会が減るなど、夏休みをなくさないための言い訳はいくらでもあるからです。それに夏休みは世界の慣習ですから、それを大胆に削ってしまうような大変革は、日本人は苦手です。
 教員の過重労働がこのまま続き、療休者と退職者が増え、教採受験者が減って日本全国が教師不足にあえぐ日を待ちましょう。

 実は行政にはもっと簡単なやり方があるのです。小規模校の統廃合です。
 1学年1クラスで全6クラスの学校をふたつ統合しても同じ規模(1学年1クラス全6クラス)ということはしばしば起こります。その場合、規定教員9人の学校を二つ合わせたにも関わらず、新しい学校の教師は9人のままです。つまり1校分節約したことになるのです。もちろんそこまで極端な例でなくとも、統廃合はかなりの数の教員削減に役立ちます。
 統廃合は校舎の管理費も維持費も半分ですから自治体は予算的に助かりますが、学校を中心として動いている地域社会は崩壊します。田舎だけの話ではなく、東京都でも23区内と八王子市内ではそうなるでしょう。

 先生がいないから学校を統合します、地域は解体されます――大胆な働き方改革をしない以上、それも致し方ありません。

(この稿、終了)