カイト・カフェ

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「児童館という現場」〜子どもたちの危機⑨

 児童館は教育機関ではありませんから基本的に学習指導や生活指導は期待されていません。しかし「子どもの集うところ事件あり」ですから当然トラブルはつきもので、それをほったらかしと言うわけにはいきませんから必然的に生活指導・生徒指導的対応を取ることになります。
 そして気づいたのですが、私たち児童館の学童保育事業(正しくは放課後児童健全育成事業)は、一面、ものすごく生徒指導に向いた場でもあるのです。とにかく時間が無尽蔵で、親御さんが迎えに来るまで、問題解決のためなら1時間でも2時間でも子どもに向かい合っていられます。現場検証なんていくらでもできます。

 学校はそうはいきません。
 例えば休み時間に起った子どものケンカは休み時間のあいだに解決するしかありません。授業が始まれば少なくとも一度は中断しなければならないのです。それが小学校の高学年や中学生なら「この件は放課後もう一度話すから」で済みますが、小学校の低学年だとそういうわけにもいきません。小さな子どもは1時間もすると何が起こったのか忘れてしまうからです。幹の部分は覚えていても枝葉となるときれいさっぱり忘れてしまいます。

「忘れたら忘れたでもいいや」といった簡単な場合もありますが、ケガを伴ったりするとそうもいきません。じっくり話を聞いて事実を明らかにしなくてはなりませんが、だからと言って授業を犠牲にして当事者に関わり続ければ、その間にクラスはあっという間に無法地帯です。担任が来ないからとおいって別の教員が授業を進めてくれるわけでもないのです。それが担任教師のジレンマです。

 ところが児童館には職員が何人もいて、一人くらい特定の子どもに関わり続けていてもあとは何とかなります。事件に関わる職員は後顧の憂いなく存分に指導を続けることができるのです。

 児童館はまた、毎日保護者と顔を合わせることができるという点で学校より遥かに有利です。
 今日あった事件について今日、報告できます。小さなことも大きなことも、その都度きちんと話すことができるのです。
 さらにまた、子どもの保護者に対する態度も、保護者の子どもに対する対応の仕方も観察できます。家庭のちょっとした変化のうかがえることもありますし、何より親子関係のかたちが見えます。
 心配なことを話す日のために良いことは常に報告しておくという作戦が立てられます。ついでに、毎日連れてくる幼稚園や保育園の妹や弟は三年以内に児童館に来る可能性のある子ですから今から観察しておくと都合のよい場合もあるかもしれません。

 そして三つめ。
 学校の職員は必ずしも地域の住人ではありません(普通は人事上避けます)が、児童館のパート職員は大半が地元の人間です。あからさまな情報が語られることは少ないですが子供についての有益な話を収集することができます。

 もちろん学校のもつ有利さは児童館の比ではありませんが、ここでの生活・生徒指導、結構面白いものだと私は思っています。
 地域の子どもを育てていきたいのです。

(この稿、もう少し続く)