「井上真央に勝負を仕掛ける」〜夢の偏差②

 NHK朝の連続ドラマ「まれ」を見ながら、進路指導と重ね合わせて考えることはふたつ。

 ひとつはケーキ職人とかパテシエとかいう仕事がいかに人気で、しかも職業としては狭き門かということです。確かな数字を持っているわけではありませんが、身近な話題としてあちらでもこちらでもパテシエ志望は目白押しです。しかしケーキや菓子を毎食食べる人もそうはいませんから、職業としてはすでに飽和状態でしょう。安易に進められる職業ではありません。

 もう一つは主演女優の土屋太鳳をはじめとする若手女優陣の充実ぶりです。いったいこの世代にはとんでもない女優さんが目白押しです。
 能年玲奈橋本愛武井咲有村架純剛力彩芽広瀬すず足立梨花川口春奈二階堂ふみ松岡茉優優希美青西内まりや。その上の世代に堀北真希井上真央綾瀬はるか上戸彩長澤まさみ戸田恵梨香沢尻エリカ北川景子・・・と美人、怪優がいくらでもいます。

 私が子どものころなど殺陣もできない時代劇女優や、音程があってる瞬間の方が少ない美人歌手、司会者の横で1時間ただ立っているだけのアシスタントとかいった芸能人がいくらでもいました。しかし今はそういう時代ではありません。
 何を言いたいのかというと、子どもが「女優になりたい」とか「歌手になりたい」とか言ってきたとき、安易に応援してはいけないということです。とりあえず反対しなくてはなりません。

 ウチの娘が橋本愛武井咲に勝負を挑み、堀北真希井上真央を壁を突き破ろうとしている、と聞いて尻込みしない親は普通ではありません。こんな状況で「夢のためにがんばりなさい」というのは無責任です。ましてや最後まで面倒を見る気のない友だちやらボーイフレンドやらが応援するのは間違っています。

 取りあえず反対して説得し、引きずりおろして潰さなくてはなりません。それで潰れるようなら、もともとたいした夢ではないので潰したことに罪悪感を持つ必要はありません。
 しかし、そこまでやってなおも子どもが突破しようとするなら、それはほんものですから今度はみんなで応援しましょう。そこまで思いつめた気持ちに蓋をして放置するのは危険です。
 オーデションでもコンテストでもなんでもいいから短期決戦で徹底的に受けさせ、実力を試させるのです。
 大丈夫。受かりっこありません。今、活躍している若手の女優さんたちは10万人に1人といった逸材ですから、“ウチの娘”が才能ある女優となる確率も10万分の1しかありません。そしてもしその10万分の1の逸材だったとしたら、それはもう天職ですから安心して送り出せます。

 私は、子どもに平凡な道を歩ませようとするのは親や教師の義務だと思っています。なぜならたいていの子どもは“平凡”だからです。
“普通の子”を特別な世界に送りこんだらかわいそうですし、誰かが立ちはだかって壁にならないと子どもはホイホイと間違った道に迷い込んでしまいます。

 それに“平凡な道”を選んでもそれがさっぱり平凡でないことは、生活を始めてみればすぐにわかることです。私は30年間も公務員でしたが、退屈したり暇を持て余したりしたことは一度もありません。そしてとてもやりがいのある仕事でした。 

(この稿、続く)