「夢の偏差」①

あまちゃん」以来、NHKの朝の連続ドラマをVTRに撮り、夜、夫婦で見るのを楽しみにしています。子どもが家を出て以来、そんなことでもしないと夫婦の間がもたないのです。
 この4月からは「まれ」。主演の土屋太鳳さんという人がとても魅力的で、脇を固める助演俳優も充実しています。能登が舞台でテンポも良く、なかなか面白そうなのですがしかしひとつ、妙に引っかかります。それは中心的主題である“夢”の問題です。

 主人公の「希(まれ)」は破天荒な父親の反動で、逆に慎重になりすぎるような女の子です。小さなときから「こつこつ地道に」が口癖で将来は公務員になると決めています。しかし一方で子どものころに一度は夢見た「ケーキ職人」になるという“夢”もあって、そのはざまで揺れ動くというのが今週のストーリーです。気になるのはその中で、ケーキ職人になることには価値があり、公務員(物語の中では具体的に輪島市役所職員)になることには価値がないという扱いがなされていることです。希のボーイフレンドも高校を中退して輪島塗の職人になろうとしていますが、ここでも高校に行くよりも職人になることに価値があるという強いメッセージが込められています。しかしそれでいいのでしょうか。

 おりしも昨夜のNHKニュースでは、
 経団連がまとめた大手企業の春闘の回答状況によると、16日までに集計した62社の月額の賃金の引き上げ額は定期昇給を含めて去年より805円増え、平均で8502円となりましたった。賃金の増加率は2.59%で、8800円となった平成6年以来21年ぶりの高い水準である。業種別では最も高いのが自動車の9835円で増加率は2.91%、機械金属が8641円で2.95%、繊維が7905円で2.59%、食品が7663円で2.45%の増加率
とのことです。月額で9835円なら年間12万円弱です。軽くコンピュータ1台が買えます。

 人生に真剣な夢があってどんなことがあろうと実現しようという想いのある子ならいいのですが、何の夢もない子、金さえあればいいという子、そうした子どもはとりあえず大企業を目指せばいいのです、給料が高いのですから。金は邪魔になりません。
 そんなに高い給与はいらない、安定していること、基本的に17時に帰宅で来てアフター5を楽しむ生活をしたい、そういう人は公務員を目指せばいい、人は望むものを手に入れればいいのです。

「希」は小さなころから「こつこつ地道に」と公務員を目指してきた子です。それが希の夢でした。それを無理に捻じ曲げてケーキ職人の道を歩ませることに何の意味があるのか、そう私は思います。幼稚園や保育園の年長クラスの女の子に聞けばおそらく三人にひとりは「大きくなったらケーキ屋さんになりたいです!」と言います。これだけの人数に「夢を追え!」というのはあまりにも酷です。

 さて、一見つまらない話のように聞こえるかもしれませんが、これがなかなか含みのある問題なのです。

                              (この稿、続く)