記憶を整理しておく意味もあって長々と書いてきましたが、もう最後です。
せっかく大金を使って行った旅行なのに楽しいことはほとんど書かずイタリアを誉めることもなく来ましたが、最後ですので少しぐらいはサービスしておきましょう。
イタリアが日本に対してほとんど無条件で優れていると考えられるのはデザイン性です。いたるところで意匠が凝らされているのです。
たとえば最初に泊まったホテルの電気スタンドには赤い革のベルトが巻きついていました。まるで今ズボンから外して置いたという感じです。枕もとの灯りは、大きな長方形を壁にはめ込んだものでただものではありません。
風呂場に行ってみるとバスの、かつてカーテンのあったところはガラスの片扉になっていて、なんとなくすっきりとした感じです。そしてトイレの水洗のボタンはステンレスの大きな板にはめ込まれた大小二つの円で、そのどちらかを押すようになっているのです。他も同じで、昨日言ったように私はしょっちゅうトイレに入っていましたから、あちこちを見比べてほんとうにすごいと思いました。
↓こちらは一般的トイレのボタン
ただし意匠を優先すれば機能面で問題のおこる場合もあります。ボタンらしきものがたくさんあって片端押さなければならない場合もあれば、どこにあるのかまったく分からない場合もあります。洗面台で、ボタンがないのでてっきり自動だと思ってさまざまなやり方で手を入れるのですが水が出ない。困りきっていたら後から来た人が床のスイッチを踏んで水を出したのには呆れました。
街を歩けば、あんな古い風景になぜこんな電車が似合うのか、ほんとうに不思議なくらい近未来的な路面電車が走っていたりします。ローマの電車は風景になじみすぎて、一瞬石造りの建物の一階商店街かと思ったほどです。さらにフィレンツェからローマに向かうユーロスターの座席はA・B・Dの3列。Cは通路なので席番がないのです。デザイン性だけでなく、こんなふうに粋なところもあります。
ローマは多民族都市ですからさまざまですが、古都フィレンツェは趣が異なります。とにかく歩いている人の服装のセンスがいい。私などファッションに何の興味もなく知識もないのですが、それでも感心させられるほどです。そして困ったことに、それを着ている男女がいずれも美しいのです。
(この稿、続く)