カイト・カフェ

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「美しきイタリア」②〜イタリア奇行《最終》

 旅行前、かつての教え子の一人に「イタリアはイケメンばかりだそうだからよく見てきて」とか言われましたがほんとうに多い。フィレンツェは街中がタカラヅカみたいです。
 息子のアキュラも「生まれたときからこんなに差があるんじゃ話にならない」と絶望します。
「だけど」とアキュラは続けます。「これだけイケメンが多いとボクたちの知らない別の基準があって、その中でブサイクとイケメンとに分かれるんだろうな」 と妙な納得の仕方をしています。もしかしたら「ボクはイタリアに生まれてもブサイク組かもしれん」とさらに絶望しているのかもしれません。

 そして別な意味で私も首を傾げます。見ていると小学生以下の子どもと初老以上の人々に、将来の、あるいはかつての、イケメン・美女を探すのが難しかったからです。正確に言えば“割合が合わない”。
 小学生にはすぐにそれと分かるブサイクがたくさんいて、初老の男女は――確かに味のあるいい顔がばかりなのですがイケメン・美女の成れの果てという感じではありません。
 もしかしたらイタリア人の顔に特殊なメイクや細工をすると、それがイケメン・美女になるのかもしれません。そう思って見るとイタリア美女のメイクアップ には同じ流れがあるように見えてきます。ちょうど日本で、かつての高校生がどれもこれも似たような顔になっていたのと同じです。
 いずれにしろ、イタリアのイケメンはイタリア美女と結ばれる可能性が高いですから、アキュラが日本人の恋人を奪われる危険性もイタリア美女を獲得する可能性も、ともに低いと考えて間違いなさそうです。

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 最終日、一通り旅を終えてローマのレオナルド・ダ・ビンチ空港に着くと、ロビーにはたくさんの日本人があふれていました。久しぶりに大量の日本人を見て私は少しほっとして、少し興ざめし(まだローマですから)、しばし観察に時間を使いました。
 確かに巨大な目ん玉のイタリア人をたくさん見たあとでは、日本人の目は細く釣りあがって見えます。日本人のカリカチュアは眼鏡・つり目・出っ歯ですが、ヨーロッパ人がそう感じるのは無理なからぬことかもしれません。

 けれどもちろん私はこちらの方が好きです。
 アキュラは小さなころからバタ臭い顔立ちの女の子が好きで将来は外人の奥さんをもらうとか言っていますが、あんな巨大なおメメの彫りの深い顔が、30センチ以内に近づいてきたら私だったら無意識にも避けてしまいます。

(イタリア奇行 終了)