カイト・カフェ

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「難読漢字をやたら知っている子たち」~いびつな言語感覚①

  小学校3年生の女の子に、この字は何と読むのかと問われました。
蠱毒」「髑髏」

「蠱惑(コワク:あやしい魅力でまどわすこと)」という言葉を知っていたので「コドク」ではないかと思ったのですが、自信も持てないのでネット検索に頼ることにしました。
 すると、
蠱毒(こどく)とは、古代において用いられた、虫を使った呪術のこと。蠱道(こどう)、蠱術(こじゅつ)、巫蠱(ふこ)などともいう」
 具体的には、
「器の中に多数の虫を入れて互いに食い合わせ、最後に生き残った最も生命力の強い一匹を用いて呪いをする」(Wikipedia
とのだそうです。
「髑髏(ドクロ)」の方はもちろん知っていました。

 ところで、なぜそんな難しい字を知っているのかというと、マンガに出てきたのだそうです。それを一生懸命、写してきたらしいのですが、現代の小学三年生女子、恐るべしです。

 これは以前ブログにも書いたかと思いますが、もう40年も前のこと、私は勤めていた学習塾で不思議な少年に会いました。当時全盛だった暴走族に限りなく憧れる子で、自転車(そのころもチャリと言った)の荷台に座り、1m四方もある大きな白旗をはためかせて得意になっているような子です。
 白旗の意味も知らなければ、その旗に絵を描くだけの根気もなかったようです。右の二の腕に「Spector」、左には「愛國」とマジックで書いて、両方とも読めない子でもあります。しかしおそらく「髑髏」も知っていたはずで、「極道」とか「死んで貰います」とかも平気で書けたはずです。当時の不良たちは難しい漢字が大好きでした。
 しかしこの子の場合、漢字や英単語の知識はそれ以上、増える可能性はありませんでした。何といっても不良少年の単語力には限界があったからです。しかし現代のマンガ少女は違います。マンガやアニメが提示する知識はハンパではないからです。

 私は歴史の授業で平安時代を教えるとき、しばしば呪術の話をしました。なにしろ平安貴族というのは、朝おきてまず自分が属している星の名を7回唱え、楊枝で歯を磨き、手洗いをしてから仏や神に祈る、食事を終えて爪を切る。丑の日であれば手の爪を、寅の日であれば足の爪を切る。それから吉兆を占って今日行くべき方向、忌むべき方向を占うといった調子ですから、一日中、呪術・占術に縛られているのです。もちろん家の建て方も街づくりもすべてその世界にあります。

 だから陰陽道だとか四神信仰だとかは触れざるを得ず、そういった話はとても新鮮だったのです。ところがある時期から、それがまったく新鮮ではなくなってきた。たぶん「ポケット・モンスター」が流行し始めたころから、子どもたちは妙に難しい世界に顔を突っ込み始めたのです。

(この稿、続く)