「子どもの自由を最も大切にする保護者に」~子どもの導き方のあれこれ⑦

 教師で言えば根っからの民主主義者、自由と平等・博愛を愛する子ども中心主義。
 親に置き換えると、
「友だちのような親子関係を築きたい」と本気で思っている保護者、
「小学生の間くらいは自由に伸び伸びと育って欲しい」と願っている親、
「大人の顔色をうかがうような子どもになってほしくない」と考えている人々――、
 そんな人たちは“願い”が現実に降りてきたとき、
 とんでもなくひどい目にあうかもしれない。

という話。

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(写真:フォトAC)

【友だち親子の実相】

 “友だち”というのは支配と服従のない平等な関係です。指示することもされることもない互いに自由な関係とも言っていいでしょう。ということは「友だち親子」になってしまったら、指示も命令もできないということになります。
 宿題をしなくても、寝坊をして学校に遅れそうになっても文句は言えません、友だちですから。
 どこどこの高校に進んでほしいとか将来はこんな生活をしてほしいとかいった夢を、持ったり語ったりすることもダメです。友だち同士で語るのは自分の夢だけであって、相手にこうなってほしいと願う友だち関係など普通はないでしょう。

 最近「友だち親子」で評判になっているのは日本テレビ水曜ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」菅野美穂浜辺美波の演じる親子ですが、見ていて明らかなのは、まず母親が天真爛漫なガキだということです。
 世間体だとか他人の思惑だとかいったことをほとんど気にしない、娘が高校で吹奏楽部の一軍に入れなくても、大学受験で国立に落ちてもまったく苦にしない。娘がマンガ・アニメオタクでいつまでたっても彼氏できなくても「母ちゃん本当は心配していたんだよォ」というくらいで、実際に何かをやった様子はまるでない。
 娘が苦しいとき、母親に代わって慰めてくれたのは向かいのビルの壁についている大きな象印のマークといった塩梅です。

 あまりの天真爛漫さにやがて娘の方がしっかりせざるをえなくなって「いい歳して、天然、暴走、世間知らずなかーちゃんが放っておけない!」ということになります。
 さすがは北川悦吏子の脚本、「友だち親子」の本質を余すことなく描いています。

 学校でも私の知っている若い英語科の先生(正確には同僚だったころは若かった先生)も、心配なくらい子どもっぽい部分を残す人で、担任のクラスではすぐに生徒と友だちみたいな関係になってしまいました。ただし子どもの間に入るとまるっきりの「ドラえもん」のジャイアンで、自分の思い通りにならないとすぐに暴れる。
 宿題をやって来ない生徒がいる、旅行学習が予定通り進まない、合唱コンクールで金賞が欲しい――それをジャイアンの体で行うので、生徒の方が根負けして何とか担任を支えようとする。テレビドラマの母娘そのもので、それで落ち着いた楽しいクラスができるのです。

 いずれにしろ、親として、教師として、特別で変な才能がないとなかなかうまく行くものではありません。日ごろは友だちのようなふりをして、いざというときに指導に入るようでは最低です。


【自由に伸び伸びとには才能がいる】

 「小学生の間は自由に伸び伸びと」もよく聞く話です。しかし小学生の間じゅう「自由に伸び伸びと」育った子の中には、中学校に入っても高校に進んでも、相変わらず「自由に伸び伸びと」しかできない子がいます。勉強とか部活とか、制約の多いものは一切ダメなのです。
 人間は簡単には変われません。楽な方から苦しい方への転身するのは特にたいへんです。

 考えてみると「小学生の間は自由に伸び伸びと」とおっしゃる親御さんも、宿題はやらない、片付けはしない、家事の手伝いも一切やらず好き勝手にやっていいと思っているわけではありません。よく聞けば、人並みに勉強をして、身の回りのことやお手伝いもそこそこにできて、その上で「自由に伸び伸びと」育って欲しいと願っているのです。でもそんな子は、エリートでしょ? 放っておいて育つわけがありません。ですからそんな子を育てようと思ったら、かなり困難な育児をうまくしておく必要があります。

 「大人の顔色をうかがわない子」だって同じです。相手が怒ると分かっていることを平気でやったり、何を言っても「カエルの面にナントカ」では困るじゃないですか。
(「大人の顔色――」については、別の意味でまた扱います)

 

【そうは言っても、子どもには自由で伸び伸びと生きてもらいたい】

 しかしそうは言っても支配-被支配の親子関係はギスギスしますし、子を管理し尽くすのもエネルギーがいります。できれば友だちのように、これといった指示はしなくても簡単なアドバイスだけで正しい選択のできる子であってほしい、困ったときには相談も持ちかけてほしい。子どもの時期からオドオドと大人の顔色をうかがい、好きなこともできない子ではかわいそうです。

 世の中には私たちが願うような親子関係、師弟関係を創り上げている親や教師がいくらでもいるのです。
 彼らはどうやってそれを果たしたのでしょう。

(この稿、続く)