「ゲーム機をいかにせん」

「ネットゲームにはまり込んでまったく勉強しなくなった息子からモバイルを取り上げた。ところが三日も経たないうちに『今度こそ勉強を頑張る』『時間を決めてきちんとやる』『夜10時以降は絶対にやらない』と繰り返し訴えられている。今までだって約束を守れたためしはないじゃないかと言うと、『今度は違う。ほんとうに反省した。絶対に約束を守る』、そんな言い方をして涙を流さんばかりに哀願する。どうしたものか」

 そんな内容の相談を受けました。その返事を以下に載せます。これまでもたびたび相談を受けていたお宅への返事なので、少しつっけんどんで冷たい感じがするかもしれませんがご容赦ください。

(以下、本文)

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 何度も約束を破った息子ともう一度約束をするべきかということですが、誰が考えてもその約束が守られないことは目に見えています。彼は約束を“守らない”のではなく“守れない”からです。

 では約束をしない(機器を渡さない)ということになると、そのあとはどうなるのか。

 ひとつ考えられるのは、果てしない交渉が延々と続く可能性です。「今度は絶対守る」「一週間頑張ったらいい?」「どうしたら返してくれる」「少しぐらいならいいじゃない」・・・その結果、親が根負けして機器は再び本人の手に渡り、また同じように「時間を決めてやりなさい」「守れないなら取り上げます」が繰り返されます。これまで続いたことと同じです。

 機器を返さない場合の第二の可能性は、息子さんの果てしない探索です。家中かき混ぜて少しでも隙があれば機器を探り出し部屋に運びます。見つかれば返しますがまたいつか持ち出します。その果てしない繰り返し。

 第三の可能性は、友だちのところに入り浸ること。いつまでも帰ってきません。

 第四の可能性は、暴力による奪還です。この場合は母親が標的になります。父親が単身赴任だとさらに可能性は高まります。

 以上は一般的な反応で、お宅に必ずしも当てはまるものではありません。しかし中学校の現場では、そんな話は山ほど聞かされます。

 では今回、もう一度約束をするとして、そのあとどうなるか。

 その場合も一手遅くなるだけで結果は同じです。今までと同じことが今後も続くだけです。

 それを避けたければ、家中にあるゲーム可能な機器をすべて壊してしまうか、これまで続けてきた“約束ゲーム”を放棄して機器を息子に明け渡すか、最終的にはふたつにひとつだと私は思います。しかし普通の家庭は、そのどちらも選択しません。

 ちなみにそうなることを恐れて、私の家ではゲーム機を最初から一台も買いませんでした。中学生のころ、親に内緒で中古を友だちから買ったことがありますが、すぐに私が発見し返させました。高校生のころ、母親の古いコンピュータをネットにつなげて遊んでいるのを見つけたとき、そのコンピュータは私が踏み潰しました。おかげで息子は他のお子さんよりずっとゲームの時間が短かったはずです。しかしそれで勉強時間が伸びたわけではありません。極めて不勉強で、その報いを受けました。

 ゲームのせいで勉強ができないのではありません。勉強しないことをゲームで紛らせているのです。最初はゲームにはまっていましたが、途中からはゲームに逃げているのです。それが本質です。ゲーム機を持っていてもいなくても、壊してしまっても手元に置いても、隠しても、どっちみちたいして勉強時間は増えも減りもしなのです。

 問題の核心は、なぜ彼は勉強をしないのかです。

 他から遅れてしまったか、努力してもトップを取れないとか、もともと勉強なんか大嫌いなのだとか、本人に関わる問題はすぐに(いくらでも)思いつきます。しかし家族全体の問題として突き詰めることは、これも普通の家庭ではしないことです。