「円安・ドル高」

 これだけテレビで円安ドル高と言われると子どもから質問されることがあります。ところが為替レートの話、手順を間違えると思わぬドツボにはまったりします。

 この問題の厄介さは二つの点にあります。

 その第一は円安と言われるにもかかわらず、1ドル=80円→90円→100円と数字があがってしまうからです(逆に円高だと100円→90円→80円と数字は下がります)。それが感覚的にうまくつかめないという点。

 もう一つは為替変動というのが、貿易やサービスなど実際の経済活動によって起こる面と、マネーゲームとして動く場合の両側面があるからです。これが同時に動くため分かりにくいのです。

 まず前者については、円高とドル安、ドル高と円安はそれぞれ同じものだということを最初に押さえます。

 相手が中学生以上なら、1ドル=80円が1ドル=100円になるというのは「ドル紙幣」という商品が80円から100円に値上がりしたことだ(ドル高)、しかしこれは円の方をそろえると100円=1.25ドルから100円=1ドルになる、つまり「100円玉」という商品が1.25ドルから1ドルに値下げしたことになる(円安)だから「円安」と「ドル高」は同じなのだと説明します。

 しかし小学生だとこの時点ですでにアウトになりますから、「円とドルはシーソーのように片方が上がると片方が下がる」と機械的に教えてもいいでしょう。

 そしてそこまで説明した後で、円安と円高という言葉を意識から遠ざけ、ドル高・ドル安だけでものを考えるように仕向けます。なぜならニュースは常に「1ドル=○○」で表現するからです。ドルだけで考えると1ドル=100円→120円はドル高(=円安)、1ドル=120円→100円はドル安(円高)と言われてすぐに理解できます。

 さて後半ですが、為替レートは国際的な経済活動によって変動します。たとえば外国から石油をバンバン買って国内で売った時、石油会社は消費者から円で支払いを受けますが、外国へはドルで支払わなくてはなりません。そこで「ドル」を求めて日本中に声をかけます。ドルが足りないのです。足りないものは必ず値上がりまします。これが「ドル高(=円安)」です。

 逆に日本がバンバン輸出してドルの支払いを受けると、国内でドルがだぶつき円が不足します。これが「ドル安(円高)」です。

 ただし現実には、為替レートはこうした普通の経済活動によって動かされる面より、「今ドルを買っておけば明日は値上がりするだろう」とか、「早く手放さなければ明日は下がってしまう」とかいった思惑によって動かされる面が強いのです。

 現在起っているドル高(=円安)も、「今日80円のドルを買っておけば明日81円になっているかもしれない」という思惑からスタートしました。80億円分のドルを買っておけば翌日は81億円です。

 しかしそれも小学生には難しいでしょう。

 小学生に教えてあげることのできるのは、以下のことだけです。

「ついこの間まで1ドル=80円ほどだったのが今は100円でしょ。ということはアメリカの1ドルの品物があっという間に80円から100円に値上がりしたのと同じだ。だから外国のものを買ったり外国旅行をしたら苦しくなるよね。80万円で行けた旅行が100万円もかかるのだから。

 円とドルはシーソー。だから外国の人が日本のものを買ったり日本に観光旅行に来るのはすごく安くできるよね。このまま行けば日本の車や電化製品が外国でバンバン売れるようになる。そして外国からたくさんの観光客が来てくれる。

 ただしこちらからが出ていきにくいけどね」