俺が思った通りにお前がやれ

 忙しい忙しいと言いながら、それにもかかわらず教員たちが運動会の縮小を言いださない(逆に大掛かりにしたりする)のにはそれなりの理由があります。/運動会のもつ教育効果を強く信じているのです。

 つい一昨日そんなふうに書いたのに、それとは反する話を聞きましたので紹介します。ほんとうにがっかりです。

 市内のA小学校が今年から半日開催だそうです。A小は児童数800人にもなろうかという大規模校ですから、半日開催となると短距離走もできません。組体操だってやれるかどうか分かりません(このあたりは聞いてくるのを忘れました)。綱引きをやって大玉送りをやり、各学年の出し物を一つずつやってリレーをやったら終わり、とそんな感じではないかと想像しています(違っていたらゴメン)。

 ことの発端は数年前、あの無茶苦茶に暑かった夏の翌年の運動会です。熱中症や将来の皮膚がんを心配する保護者の強硬な申し入れに折れて、学校が全児童をテントの下に入れるという愚挙に出たのです(愚挙というのは言いすぎ、他にやりようがなかったのですから)。その数30基あまり。職員の負担の大きさは容易に想像できます。

 おまけに運動会の行われる9月15日前後は雨にあうことが少なくない(旧の敬老の日9月15日は雨の特異日です)。風が多少とも強くなれば、全テントの脚を折らねばなりません。そんなことが何回も繰り返されました。

 さらに「子どもを熱中症や皮膚がんから守る」という正義は近隣の学校に伝染しやすいから、年々テントを貸してくれる事業所等が少なくなります。それぞれ遠くのA小より近くの学校に貸したがるのです。

 そしてついに本年、運動会の全テント計画は頓挫します。ただし困ったことに「子どもを熱中症や皮膚がんから守る」という“正義”は撤回できませんから、テントが張れない以上、「暑くなる午後を避けて午前中で終了」という選択肢しかなくなります。

 それで保護者は満足したのか。

 一部の保護者は「子どもを熱中症や皮膚がんから守るためにはしかたないな」と諦めていることでしょう。他の一部は「なんで教師はもっと努力してテントを張ろうとしないのか」と憤っているはずです。これらは“俺が思うとりにお前がやれ”と考えるタイプの人たちです。

 しかし大部分の保護者たちはただがっかりしているだけでしょう。この人たちはもともと熱中症だの将来の皮膚がんだのといったことは本気で考えてはいないのです。子どもがのびのびと成長していく姿をただ楽しんでいるだけの人たちです。

 熱中症なんて適切な休養と水分補給で補えるものです。皮膚がんなんて、かつてのガン黒少女と同じように「黒ければ黒いほど偉い」と信じて幼少期に皮膚を焼いた私たちが、バタバタと皮膚がんで死んでから考えればいいことです

 生半可な“正義”が通ったばかりに、子どもたちは大きな成長の機会を半減させてしまいました。これが本当に、親たちの望んだことだったのでしょうか。