カイト・カフェ

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「日本の子ども全員に『敵を打ち負かすための学力』をつけることでエリートの戦闘能力を高める施策」~日本はどうなっていくのだろう③

 今日、7月4日はアメリカ独立記念日です(1776年)。合衆国では「独立記念日(Independence Day)」と呼ばれるのが一般的ですが、単に「7月4日」("Fourth of July")と言うことも多いのだそうです。

 ところでこのindependence、「独立」以外に「(精神的)自立」の意味に使われることも多いのですが、日本語の「自立」とは少しニュアンスの異なったところがあります。それは一匹狼の印象がつきまとうことです。そういえば「スター・ウォーズ」のアナキン・スカイウォーカーはもちろん「ハリー・ポッター」シリーズの三人の主人公もしばしば仲間に相談せずに勝手な行動をとってしまいます。基本的に他人と調和を保ったまま何かをすることが苦手、ないしは嫌いなのです。一方、日本的な「自立」には一匹狼の匂いなどまるでありません。日本の「自立した大人」は他人の援助をうまく引き出せなくてはならないのです。

 そうした微妙な、しかし決定的な違いは、さまざまな局面で現れます。

 私は先月6月6日の「デイ・バイ・デイ」に「どうやらPISAの言う“学力”には『敵を打ちのめすための知識・技術』という意味があるらしい」と書きました。その文脈で言うと“生涯教育”も『戦(いくさ)のための再教育』『武器の再調達』といった様相を帯びてきます。PISAが生涯教育の重要性を説くときにイメージしているものはまさにそういうものです。日本のように「老後の楽しみ」「第二の人生の過ごし方」といったのんきな話ではありません。
 さて、そういう“学力”違いを意識したうえで、果たして私たちは“学力向上”に取り組んできたのか。

 実は、この「“学力”は『敵を打ちのめすための知識・技術』」という考え方は政府のレベルでは共有されていました。例えば「総がかりで教育再生を(最終報告)」(平成20年1月31日 教育再生会議)の序文には、こんな表現があります。
「知」の大競争がグローバルに進む時代にあって、今、直ちに教育を抜本的に改革しなければ、日本はこの厳しい国際競争から取り残される恐れがあります。
 つまり「知」の大競争に打ち勝つために教育改革を行うのだと明記されているのです。

 さらに「これまでの審議のまとめ−第一次報告−」(平成20年5月26日 教育再生懇談会)では、
 国際的に通用する人材や次代を担う科学技術人材の育成のためには、初等中等教育段階において、世界トップの学力と英会話力を身に付けさせることや、小学校における理科の指導体制など理数教育の充実が重要。
 すなわち人材育成のために「全員に」世界トップの学力と英会話力を身に付けさせるというのです。「世界のトップ・クラス」ではなく、「世界トップ」です。

「一将功なりて万骨枯る」みたいにならなければいいと思うのですが、それは今回の中心課題ではありません。 

                      (この稿、続きます)