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「跡継ぎのいなくなった墓をどうしよう」~墓と仏壇と家①

 父は次男なので私の家には仏壇というものがありません。したがって今回父が亡くなり仏壇を購入することとなったのですが、そのとき初めて知った(というか、気がついたというか、考えざるをえなくなった)ことがあるので世間知という観点から記しておきます。

 それは跡継ぎのいない仏壇は誰かに引き取ってもらわなければならない、お参りする人のいなくなった墓は遺骨を移すか寺に引き取ってもらわなければならない、ということです。

 問題は私の家ではありません。私の伯父(父の兄:故人)の家のことです。
 伯父は10年以上前になくなり、その家には伯母が一人で住んでいます。子どもは娘がひとりで、比較的近くにはいるものの他家に嫁いでいます。もちろん姓も夫のものを名乗っています。

 伯父の家には仏壇があって、そこには私の祖父母と伯父の位牌があります。また菩提寺にはその三人の入った墓があります。伯母は今も健在ですがこの方が亡くなったとき、仏壇や位牌、墓はどうなっていくのか。このあたりは父が亡くなるまで、まったく考えていなかったことです。

 選択肢は大雑把に三つだそうです。

 ひとつは他家に嫁いだ娘が「私が守る」と宣言し(これを「祭祀承維者になる」というのだそうです)、仏壇を(それが無理なら位牌だけでも)嫁ぎ先に持って行き、墓も娘が守るという方法。ただし娘は良いとしてもその娘が死んだあとのことは改めて問題になります。

 二番目は、嫁ぎ先で婚家と実家の両方の名を記した両家墓という墓を建てて合祀することです。ただこの場合も婚家の跡継ぎが代々継いでいくと、いつか墓石に刻まれた別家の名が鬱陶しくなってきます。

 三番目の方法が、遺骨を永代供養にし、墓は潰して寺に返してしまう方法です。永代供養にはかなりのお金がかかるそうですがいたしかたありません。仏壇も廃棄しますが、位牌はそういうわけにいきませんから縁者に引き取ってもらいます。

 そこで話が私に戻ります。
 伯父の一人娘(私の従妹)が先にあげた三つのうち、どの選択をするかは不明です。しかし一番・二番の方法を取るといつか切羽詰ってしまうわけですから、三番目が最善の方法でしょう。その場合は、祖父母の位牌もあるわけですから、私が預かってもいいように思っています。是非そうしましょう。それが今回学んだことです。

 ただし、この問題は私の妻の実家にもあてはまっていて、妻の実家は娘三人が全員他家に出ていますから状況は同じです。仏壇の中には取りあえず義父がいるだけですが、将来その位牌や墓はどうして行くのか。
 こうした問題は少子化の今日ではあちこちで起こっているはずです。

「家」だの「家系」だの「跡継ぎ」だの、そういったことはまったく気にしていませんでしたし、言葉の上で「嫁をもらった」だの「亭主」だの「主人」だのを使っていても意識の上ではまったく男女同権(というかむしろ女尊男卑)に暮らしてきたのに、ここにきて突然、具体的な問題で、「家」だの「跡継ぎ」だのに掴まってしまっています。厄介なことです。

 ちなみに、上のほうで意図的に書かなかった第四の方法もあります。それは永代供養もせずに墓を放置するというやり方です。この場合、墓の管理料が払われなくなったところから督促状が出されるようになり、それに答えないと一定期間ののち、墓は無縁墓地として潰され、墓石は墓地の横に放置されるようです。
 これはいい加減にあつかうというより、自然に朽ちさせるという考えに基づいているみたいです。しかし先祖の墓を意図的に無縁墓地にするのは人倫にもとります。自分が元気なうちに、そうならないよう何とか知恵を出し合うべきでしょう。