カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「来てますよ、来てますよ・・・」~忍び寄る”老い”の自覚

 昔、大型タンクからポリタンクに灯油を移す際、うっかり現場を離れてかなりの量の油を土に流したことがあります。そこで以後、どんなに寒くても現場を離れないように心がけています。ところが、

 先日、同じように灯油を移している最中、ふと畑の一角に気がついて、そこに植えてあるタマネギとサヤエンドウの様子を見に行ってしまったのです。そして灯油のことを忘れ、部屋に戻り、だいぶ時間がたってから突然思い出して飛び上がりました。時間からすれば全量を流していても不思議のない時間でした。しかしほんとうに凍りついたのはその後なのです。

 慌てて勝手口から飛び出して大型タンクのところに向かうと、なんとそこにはポリタンクはなく、もしやと思って収納庫を見ると二個ともきちんと満杯になって置かれていました。もう一度慌てて室内に入り、妻に聞くと、
「私はやってない」
 何のことはない、私が忘れていたのは大型タンクのバルブを閉めることではなく、きちんと閉めて2個目のポリタンクも満杯にして収納庫に納めたというその後の行動全部だったのです。

「明日の記憶」という映画の中でアルツハイマーになりかけた渡辺謙が検査を受ける場面がありました。机の上に置かれたハサミやペンなど五つほどの品物を記憶させ、そのあとハンカチで覆い隠して中のものを言わせるというものです。自然の流れとして観ている私も一緒に検査を受けるような感じになったのですが、しかし渡辺謙さんと一緒で、そのテストをパスできませんでした。ショックでした。それが2年前のことです。

 昨年春のX線撮影で肺に異常がありそうだと言うことでCTを撮ったら、肺は問題ないが「心臓の血管が石灰化しています」とのこと。そう言えばここ数年心電図の異常が連絡されていました。
 しかしよく分からないので、石灰化ってどういう意味ですかと訊くと
「要するに血管が骨になりかけてるのです」。
 どんなことに注意したら言いのでしょうと問うと、
「加齢のためですからやることはありません」。
 治療とかは必要ないのですかと訊ねたら、
「胸が苦しくなって息ができなくなったら病院に来てください」。
・・・・・はあ。

 秋口から急に太り始めました。原因不明。
 しかしもともと体重の増減は激しい方で、増やすも減らすもコントロールしやすい体質だったので安心していたのですが、今回ばかりは様子が違います。目標6kg減のうち2kgまでは軽くクリアしたのにそこから動かない。減ったと思うとまた増える。要するに汚れたフライパンを洗ったら昨日今日の汚れはすぐに取れたのに、以前のものはこびりついて容易に取れないという感じです。心臓が怖いので運動で減らすこともできない。

 年を食うというのはそういうことで、去年より今年の方が確実に悪く、だから来年はもっと悪いだろうという事態を受け入れなければなりません。

 私は若い人が羨ましいいと思ったことは一度もありませんし、今から若い時代に戻るなんてとてもやりきれないと現在でも思っていますが、老齢もまた受け入れがたいものがあります。

 ただ以前も申し上げたとおり「昨日よりは今日の方が伸びているから明日はもっと伸びている」と単純に信じられる子どもたちが、その価値に気づいて大切にしてくれたらいいなあと、それは本気で思います。