カイト・カフェ

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「自動販売機は外に置いておけばいい」~自販機が盗まれることを考えなくてもいい国

「あっと驚く衝撃映像」といった番組が好きで「衝撃映像」という言葉を見ただけで自動的にチャンネルを合わせるクセがあります(ただし先月の編成替え特番では数が多すぎて、最後はさすがに食傷気味でしたが)。その多くはアメリカやイギリスから買いつけた番組の焼き直しですから必然的に海外映像中心なのですが、毎回ほぼ100%確実に出てくるのがコンビニのカウンターの映像です(そこに強盗がやってくる、外から自動車が飛び込んで来る)。不思議なことに、そのほとんどが真上からのショットなのです。

【店員が監視対象にならない国】

 防犯カメラは隠しカメラではありませんから、もし強盗が入ってきたら顔が映るような(顔が映るから強盗ができないと人に思わせるような)位置にあるべきです。それが真上にあってカウンターにあるレジスターの中身が見えるように設置されているというのは、これは基本的に強盗用ではなく、アルバイト店員によるつり銭のちょろまかし防止用なのです。欧米では店員が重要な監視対象なのです。
  この点で、日本のコンビはどうなっているのでしょう。

 もう辞めてしまいましたが娘が東京のマクドナルドでバイトをしていたとき、大学の先輩アルバイトから非常呼集がかかってファミレスに集められ、同じ大学のマクドナルド店員だけで重要会議が開かれました。4年生でもうマックのバイトから足を洗わなければならないのだが、最後のご奉公に何とか売り上げを1%でもいいから上げたい、ついてはアイデアを募るという会議だったのです。もちろん自主的な会合で店長には内緒でした。娘は日が浅くて商売の限界とか予算の限界とかが分からないのでかえって言いたい放題で、たくさんアイデアが出せてとても面白かったと勇んで話をしてくれました。

 これが日本のアルバイトの現実です。アルバイトを監視の対象にする必要などありません。日本中でアルバイトもパートも、派遣社員も日雇いも、必要とあれば平気でサービス労働をし、会社のためにアイデアを出す、それがこの国のありふれたやり方です。

【欧米の基準で教員を見てはいけない】

 文化は高いほうから低い方へ流れます。したがってたくさんの研究者がアメリカへ出かけアメリカで最先端の理論や制度・方法を学び、日本に持ち帰ります。しかしこと労働や教育といった国民性に関わる問題で、まったく国民性の異なる国のものをそのまま持ち込むことに、どれだけ価値があるのでしょう。

 たとえばアメリカの初等中等教育の教師たちは、日本でいうパート労働に近い待遇で、賃金の低い分、午後4時には帰宅して家事にいそしめるような形になっています。「低賃金」はアメリカの場合「能力のなさ」の証明ですから、主婦業に縛られている女性か、よほど情熱に溢れた教育者でない限り、進んで担い手になろうという仕事ではありません。そこでどうしても教員評価や再教育が必要となります。

 ところが日本の場合、今でも教職は人気の上位にあり、厳しい競争を勝ち抜いた人だけがなれる仕事です。こんなところで教員評価や再教育を持ち込んでも、単に運用コストがかさむだけです(それに気分も悪い)。勤務時間をきちんと守り、不正をせず、やるべき仕事をきちんと果たすということを最低条件とした場合、これに✕のつく教員を何人見つけ出すことができるでしょう。

 日本では屋外に出された自動販売機は単なる自動販売機です。しかし多くの国には、それを「外に置いてある貯金箱」と見る人がたくさんいます。グローバリズムの流れから、だから日本でも自動販売機は店内に置くべきだという人はまずいません。

 しかし教育という成果も危険性もすぐには見えない分野では、アメリカはいくらでも平気で入り込んできます。