カイト・カフェ

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「世間は分かってくれない」~教員の仕事は呆れるほど理解されていない

 教員が車に積んだコンピュータやバッグを丸ごと盗まれ、情報が流出したとされる事件が後をたちません。これから年度末に向け、テスト処理やら通知票やらの時期になるわけですが、先生方、くれぐれもご注意ください。盗む人間はテスト成績がほしいワケではありません。コンピュータやバッグ(の中の現金など)がほしいのですから、それらが車外から見えないことが大切です。先日検査に行かれたA先生が、一旦ご自宅に寄って荷物を置いてから病院に行くと言うようなことをされていました。こうした注意深さは、やはり必要でしょう。

 昨日は「情報セキュリティ講習会」というのがあって、係ですので出席してきました。昨年も開かれたものですが、成績や名簿などの重要情報が今も校外に持ち出されていることに、市の担当者はずいぶんと苛立っているようでした。私物のコンピュータを持ち歩かずに済むよう、学校に職員分のノートパソコンを配備してほしいという言葉をグッと飲み込んで話を聞いていたのですが、どうにも会話が噛み合ってきません。

(市の情報担当者)「仕事と言うのは本来職場で行うべきものでしょ。なんでいちいち持ち帰っちゃうんです?」
(私たち)「いや、それじゃあ仕事にならなくて・・・」
と押し問答の末、女性の先生が、
「学校には主婦をやっている職員も大勢いるんです。仕事を持ち帰ってはいけないとなると、女性は、特に既婚者は教員を続けることはできません。女は教員になってはいけないということになります」
と、ヒステリックになりそうなのを抑えながら発言すると、
「役所の女子職員だって、夜の仕事がある日は一旦家に帰って家事をしてきますよ」
 私たちはそこでフリーズします。
「『夜の仕事がある日は』って・・・私たち、それが毎日なんです」
すると、
「え?」
(あ、この人たち全然わかっていないや)

 私たちの仕事がどんなものか、世間の人は本当に知りません。ゆっくり順を追って、
「それ以前の下準備はサービスいうことにしても、8時20分からは授業があるでしょ? 昼食も子どもを置いて外に行くわけじゃないから、食べながらいろいろな話をしたり食事のマナーの指導をしているわけ。その前に配膳指導、その後に下膳指導もあるから、昼休みは制度上あるだけで、実際には休んでなんかいません。
 それから午後の授業をやって、4時に下校時間になり、一部の生徒が帰るよね。その後職員会議とか学年会とかいった会議があって、時には7時・8時まで続くこともあるけどとりあえず勤務時間終了の5時に終わったとして、夏だったらそこから部活に行って、全員を帰宅させると7時。
 さて、テストの採点をしたり、明日の授業の準備をしたり、体験学習や修学旅行の計画を立てたり、PTAの仕事をしたり、避難訓練の計画を立てたり、教室の整備をしたりっていう仕事、いつやればいい?」
 そんなふうな話し方をすると、ようやくここで「あ」くらいは言ってくれます。

「私たちは勤務時間として縛られる9時間以外に、常に最低2時間くらいの仕事を持つ11時間(以上)労働者だ」
 そんな言い方をして初めて、家に仕事を持ち帰らなければならない事情が飲み込めてきます。

 さて、その余剰の2時間分の中には、学級担任・教科担任として以外の校務があります。本校は三十余人でそれを分担しているわけですが、分掌表上の校務、全部で何項目あると思います?

 答えは60個。それぞれに平均3人が配属されていますから、延べ180人分の仕事を30名あまりで行っているのです。こんなこと世間の人は理解してくれませんよね。