人と人間

 人(ヒト)というのは生物学的な私たちであって、人間というのは社会的存在である私たちのことだ、という話を聞いたことがあります。ヒトとヒトの間にあるので「人」「間」と書くと言うのです。そうした考え方からすると、人間個人という言い方は存在しなくなります。

 例えば、私が口うるさい教師であるかどうか、ということは、一面私の個性に関わる問題ですが、一方でクラスや生徒たちのあり方に関わってきます。いくらおっとりとした性格でも、クラスが荒れていて生徒たちがすべきことをしなければどうしても口うるさくなります。逆に、かなりカリカリした性格でも、クラス全体が落ちついていればいろいろ言わずにすみます。

 同様に、いわゆる不良グループのAという個人の性格の一部も、別の構成員B・C・Dの性格に規定されています。

 例えばAは万引きなどしたくないのに、B・C・Dがやる以上自分もやらなければならない、そういう場合が非常に多いのです。イジメグループの中には、時に心の中で手を合わせ謝りながら、泣きながら相手を蹴ったり殴ったりしている子がいます。すべては関係性の中で行われるのです。ですから更正するのは容易ではありません。

 ではどうすれば良いのか?

 まず考えられるのは、それでもなおA個人を更正させることです。ただし悪の道からひとり足抜けして「良い子」の道に乗り換えようと言うのですから簡単にはすみません。暴走族や不良グループなら確実に凄惨なリンチにあいますし、小中学校ならいじめ、良くても「オメエ最近マジメじゃん?」といったからかいに耐え続けなければなりません。ひとりで足抜けさせるときには、そうした覚悟をさせておくことも必要です。

 第2の方法はグループを丸ごと更正させてしまう方法です。これにはかなりの力が必要です。全員を一気に封じ込め、悪いことが何もできないようにしておいて、一人ひとりの変質を待つのです。とにかく悪いことを繰り返すことで成立しているグループですので、それらを止めるだけでかなり質が変わってきます。

 最後に、とにかく物理的に彼らを遠ざけてしまう方法も考えられます。しかしそれはできる場合とできない場合があります。