カイト・カフェ

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「思ったことをすぐしゃべってしまう子をどう指導したらよいのか」~指導助言の質を高める方法①

 先週24日(金)の「チコちゃんに叱られる!
 話題になったひとつは、
 思いついたことをすぐ言葉にしてしまう自分の扱い。
 チコちゃんの聞いて来た答えがよかった。
 という話。(写真:フォトAC)

 先週5月24日のNHKバラエティ「チコちゃんに叱られる」のテーマは次の三本。
① サッカーコートがしま模様なのはなぜ?
②  “あみだくじ”はなぜ“あみだ”?
③ 酔っ払うと声が大きくなるのはなぜ?
でした。その内うしろの2本に正解できて、私としては極めて珍しい好成績なのでだいぶ気分を良くしました。

【スカイウォーカー氏、ハゲをからかって後悔する】

 ところで2問終わったところで差し込まれる休憩時間のコーナーで、チコちゃんとゲストであるJun Sky Walkersの宮田和弥氏がこんな会話を始めました。
「ところで、宮田さんは何か、チコに相談があるらしいわね」
「ああ、そうですね。ちょっと、思い立ったことをすぐしゃべってしまう・・・みたいなところがあって」
「なにか失敗しちゃうの?それで」
「今、ジュンスカが、あの、35周年ツアーをやってるんですけど、お客さんも50過ぎだったり」
「一緒に年齢を重ねていって」
「一緒に年齢を重ねてきて、当時の、中学高校の時の目が輝いていた目と、今、来ているみんなの、その50代になったその目も、輝いているよと・・・」
「ああ、いいじゃない」
「そしてその前にちょうど、年齢的にこう、ちょっと・・・ね? 輝きを頭部に持っている人たちがいて、ライトが当たってちょうど、汗もかいてきたりして、目も輝いているけど頭部も輝いているのを見ちゃうと、そのまま口に出しちゃうというか」
「言っちゃったんだ。それはでもその場は受けたんでしょ?」
「受けましたけど、まあ、ちょっと、本人苦笑いしたみたいな。あんま、それは言わない方がいいかなと」
 いかにもありそうな話です。政治家をはじめ有名人の失言の大部分は《受け狙い》に始まりますが、ライブの際中に「コイツら、年をとっても輝いているな」と思った瞬間、目の中に「ハゲ頭」が飛び込んでくればつい言いたくなる気持ちも分からないではありません。しかし笑いのネタにされた方は嬉しくもないでしょう。

 自分の欠点を話題にして他人を喜ばせるのは冗談。
 他人の欠点を話題にして自分たちが喜ぶことは、普通、《いじめ》といいます。
 ひとを笑い者にして遊んでいる子どもが“冗談”“冗談”と言って誤魔化すようなら、私は必ず引っ捕まえてきてそう言いました。ジュンスカの宮田氏のやったこともそれに類するものです。もちろん宮田氏自身もそう感じたから何とかしたいと思ったのでしょうが。
 それに対してチコちゃんの話した内容が秀逸だったので、ここに記録しておきます。

【一流のプロのアドバイス

「でもまあ、ちなみに新潟青陵大学碓井先生にアドバイスを聞いたところ、

  • 普段からポジティブなことを話すように意識する。そして、
  • 会話中は「そうだな~」など相槌を打って考えを整理する時間をつくるといいと思います。
  • 一呼吸おいてみてはいかがでしょう。

とのことです」
「さっきの早食い(の話)みたいに一回箸を置く、一回ワンクッション置くのがいいんでしょうね。わかりました。気をつけます」
 チコちゃんと宮田氏の会話はこんなふうにまとめられていきます。けれど私はちょっと違うかな、と思っていました。
 碓井先生の三つのアドバイスには軽重の差があって、三番目のみ軽いのです。なぜなら話すとき「一呼吸おいてみてはいかがでしょう」と言われて一呼吸おけるようなら、苦労はないのです。そもそも一呼吸おいて喋れるようなら「思い立ったことをすぐしゃべってしまう」問題は解決済みです。早食いの人がいちいち箸を置くようだったら、それもすでに「早食い」ではありません。
 頭でわかっていることが行動に移せないといった”無意識”に関する問題を解決するには、意識しなくても行動に移せるよう繰り返し練習するか、足のツボを押して肩こりを直すように、やり易い別の何かをすることで本来の問題を解決するといった方策を取るしかないのです。
 その意味で碓井先生の最初の二つのアドバイスはとても優れたもので、チコちゃんたちが結論にした三番目は単なる付け足し、合いの手みたいな話にすぎません。

【思わず言ってしまう言葉がいいことならかまわないだろう】

 ジュンスカの宮田氏も、「50代になってもお前たちの目、輝いているぜ!」で終わらせれば良かったのです。「思い立ったことをすぐしゃべってしまう」が問題になるのは《ハゲが輝いている》だの《顔がブサイク》だのを「思い立った」からなので、《可愛い》《カッコイイ》《素敵》《すごい》などが頭に浮かんで、それで「すぐしゃべってしまう」のは何でもありません。否、その方がよほど人に好かれるし人間として尊敬もされます。多少軽くみられる場合もあるかもしれませんが、「思い立ったことをすぐしゃべってしまう」人はどちらにしても軽く見られますから害はありません。ではどうしたら前向きで美しくポジティブな言葉が口をついて出るようになれるのか――その答えが碓井先生の「普段からポジティブなことを話すように意識する」なのです。
  無意識に出る言葉が制御できないなら、意識できる言葉を前向きなものにしていく。日ごろから“良い人である自分”を前面に押し出し、良い言葉・美しい言葉で人を表現できるようにしておけば、無意識に出てくる言葉もそうなります。

【具体的な行為・活動は習慣化しやすい】

 会話中は「そうだな~」など相槌を打って考えを整理する時間をつくる
 これも優れたアドバイスと言えます。
 たとえば《一呼吸を置く》などは、たしかにそんなふうにできればいいのですが、「1秒遅れて話を始めましょう」といった具体的な話ではないので習慣化が難しいのです。それに比べて『「そうだな~」など相槌を打って(中略)時間をつくる』は、そこまで難しくありません。
 実は「一呼吸置く」も「「そうだな~」など相槌を打って考えを整理する時間をつくる」も同じことなのです。後者は前者を具体的に、しかもだれでもできる形で表現したに過ぎません。
(この稿、続く)