カイト・カフェ

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「レジ袋有料化反対派はどこに隠れていたのか」~世論がどこにあるのか、何を見ればいいのか分からなくなった

 白鵬は不人気な悪い横綱だったのか、
 眞子内親王の結婚に国民は反対していたのか、
 レジ袋有料化に反対者はいなかったのか、
 若者の間に反ワクチンはどれほど広がっていたのか、
 情報に多く接すれば接するほどわからなくなる現代の不思議。

という話。 

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(写真:フォトAC)

 

 

白鵬は一夜にして人格者となる】

 あれほど嫌われていた白鵬に関するメディアの扱いがこのところずいぶん和らいでいます。

 横綱在位84場所17年、幕内最高優勝45回、1187勝という圧倒的な強さもそうですが、3月11日生まれという因縁もあって東日本大震災の被災地支援に熱心に取り組んだことや、赤十字社に血液運搬車を寄贈したり台風の被災地に懸賞金の全額を送ったり、コロナ禍に際しては両国の医療従事者にマスク2万5000枚を送ったりといった社会貢献事業についても、今さらながら紹介されたりしています。
 私にとっては野球賭博問題や八百長問題で不祥事続きだった角界を、一人横綱として支えた恩義ある力士です。

 横綱としての晩年は取り口や土俵上の態度が何かと批判される人で、人気の貴乃花親方や横綱稀勢の里との対比ですこぶる悪く言われた力士でもありました。だから引退に際しても、横綱審議会は業績を讃えたり惜しんだりする代わりに厳しく責める声明を発表し、親方を襲名するにあたってもわざわざ念書をとることまでしています。
 そしてそのことがネット市民の不興を買い、猛烈な協会批判の声が上がるとともにマスメディアの扱いも急変したのです。メディアは一夜にして変わります。

 同じことは眞子内親王の結婚問題についても言えます。

 

 

【国民は最初から眞子内親王の結婚に同情的だった(?)】

 私は子ども相手の仕事をしてきましたから思うのですが、この問題は結局、結婚させるしか終わりようがありませんでした。若者とはそういうものです。現代のロミオとジュリエットですから後には引けませんし、引かないのです。

 仮に小室某君がもっと根性なしで婚約会見まで開いたこの結婚をさっさと投げ出したら、国民は喜んだのでしょうか? 眞子内親王はきっぱりと諦めて、2~3年かけて心を冷やしたあとで、新しい恋に向き合うことができるでしょうか? とりあえず誰と出会えます?

――結局いっしょにさせるしかないとなれば、二人が何年経っても世間に迷惑をかけず、うまくやっていく道を考えるしかなかったのです。しかし結婚の日程が決まり複合的PTSDという話が出てくるまで、メディアはずっと冷ややかにネット情報を引用し続けました。
 ところが日程の正式発表以降、メディアは一変します。例えば読売新聞だと、こうなるのです。
 読売新聞社が4~5日に実施した緊急全国世論調査で、秋篠宮家の長女眞子さま(29)と小室圭さん(30)が結婚されることについて、よかったと思うかを聞くと、「思う」との回答は53%と半数を超え、「思わない」は33%だった。

www.yomiuri.co.jp

 借金問題発覚以降、国民の半数以上がこの結婚に同情的だなどという話は、一度もマスメディアに載ったことはなかったと思います。少し質問のしかたを変えるだけで、「不満はあるものの、多くの国民は結婚に反対しているわけではない」という実態は見えていたはずなのに――。

 

 

【レジ袋有料化反対派はどこに隠れていたのか】

 もうひとつ例を挙げておきましょう。

 自民党の総裁選で小泉進次郎氏が久しぶりに活動を激しくし、連日、菅総理(当時)を訪ねて引導を渡したかと思ったら、石破氏とともに河野太郎氏を担ぎ上げ、そして惨敗しました。小泉・石破両氏とも岸田新内閣の名簿に名前がありません。
 するとネット上では猛烈な小泉たたきが始まり、そこでやり玉に挙げられたのが環境大臣として小泉氏が行った「レジ袋の有料化」です。要するに再び無料にしろという話です。

 私はレジ袋の有料化に最初から反対で、その論点は要するに、
「タダでもらえるゴミ袋がなければ、食べ終わったコンビニ弁当など、屋外で出たゴミを持ち帰れないじゃないか」
とその程度のものでした()が、今回ネット市民から出てきたのは、
「場所の広いスーパーならいいかもしれないが、コンビニだと会計の済んだ品物をひとつひとつマイバッグに詰め替えるお客がいるため、レジ待ちの列が常に長いまま、イライラする」
とか、
「どう見てもSサイズでは間に合わないのに、客とSだのMだのやりあう不毛」
マイバッグをもたない客が手に持てる分の買い物しかしなくなり、売り上げが減った」
マイバッグを店内で持ち歩く客が増え、万引きが増えた」
「結局、レジ袋を自分で買うから我が家では削減になっていない」
「有料にしたことで、店はどんだけ儲かっているんだ?」

等々・・・。
 これだけ不満があるというのに、反対派はこれまでどこに隠れていたのか――つい3か月前、ある場所で「やはりレジ袋は無料に戻せ」と書いてひどい目にあった私としては、大いに疑問です。

 引用したネット市民の声は、Yahooニュースにあった5日付の東スポWebの記事「小泉進次郎氏肝いり「有料レジ袋」廃止か」に対する反応です。
 記事の糸口は元東京五輪パラリンピック担当大臣、桜田義孝衆院議員のツイートですが、失言が多すぎて人望のない国会議員の、しかも単なるつぶやきを記事として取り上げた東スポWebは、手ぐすねを引いて待っていたのでしょう。誰かが「有料レジ袋反対」と言い出してそれに乗っかる瞬間を。そんなものかもしれません。

kite-cafe.hatenablog.com

 

 

【世論がどこにあるのか、何を見ればいいのか分からなくなった】

 東京都が若者を対象に予約なしでワクチン接種を受けられる企画をしたところ、とんでもない人数が集まって混乱したということもありました。都の失策には違いありませんが、私も十代・二十代には反ワクチン・非ワクチンがまん延していると思い込んでいました。テレビや新聞、ネットのニュースをしょっちゅう見ているからです。

 情報に接すれば接するほど間違った方向に引きずられる、それよりも己の感性や己の常識にしたがった方がいい・・・と、それでは困るでしょ? みんなが自分だけを頼りにし始めたら世の中はメチャクチャです。

 メディアは何をみて世界を判断し、どう考えて情報を整理し発信しているのか、とくと考えてみたいところです。