【代理ミュンヒハウゼン症候群】
3年前、神奈川県大和市で当時7歳の息子を窒息死させたとして、42歳の母親が逮捕された事件に関して、ネットニュースに「代理ミュンヒハウゼン症候群」という言葉が散見するようになっています。この用語、しばしば現れるものです。
「症候群」というのですから正式な病名ではなく、「繰り返し現れる」「原因不明の」「いくつかの症状(症候)の」「固まり」ということなのでしょう。「代理」のつかない「ミュンヒハウゼン症候群」は、Wikipediaによれば、
「虚偽性障害に分類される精神疾患の一種 。症例として周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自らの体を傷付けたりするといった行動が見られる」
ということになります。詐病というよりは実際に体を傷つけたり薬物を使ったりして症状をつくることが多いようです。
これに「代理」のつく「代理ミュンヒハウゼン症候群」は、幼い子どもや要介護者に薬物を投与したり虐待したりして症状をつくり、「大変なのに頑張っている」「良く家族に尽くしている」といった同情や賞賛を誘おうするものです。
大和市の事件では4人の子どものうち長女・長男・三男がすでに亡くなっており、3年前に7歳で亡くなった次男も、生後五か月で一度心肺停止になっているところから、強く関与が疑われています。
私は常々、虐待というものが感情的にも論理的にも理解できないと嘆いていますが、この「代理ミュンヒハウゼン症候群」については理屈としてよくわかるので、少し落ち着いていることができます。
大和市の事件についても、継続的に見て行きたいと思います。
「症候群」というのですから正式な病名ではなく、「繰り返し現れる」「原因不明の」「いくつかの症状(症候)の」「固まり」ということなのでしょう。「代理」のつかない「ミュンヒハウゼン症候群」は、Wikipediaによれば、
「虚偽性障害に分類される精神疾患の一種 。症例として周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自らの体を傷付けたりするといった行動が見られる」
ということになります。詐病というよりは実際に体を傷つけたり薬物を使ったりして症状をつくることが多いようです。
これに「代理」のつく「代理ミュンヒハウゼン症候群」は、幼い子どもや要介護者に薬物を投与したり虐待したりして症状をつくり、「大変なのに頑張っている」「良く家族に尽くしている」といった同情や賞賛を誘おうするものです。
大和市の事件では4人の子どものうち長女・長男・三男がすでに亡くなっており、3年前に7歳で亡くなった次男も、生後五か月で一度心肺停止になっているところから、強く関与が疑われています。
私は常々、虐待というものが感情的にも論理的にも理解できないと嘆いていますが、この「代理ミュンヒハウゼン症候群」については理屈としてよくわかるので、少し落ち着いていることができます。
大和市の事件についても、継続的に見て行きたいと思います。
【実在のほら吹き男爵と彼の物語】
さて今日、これについて取り上げたのは、事件そのものに対する関心からではなく「ミュンヒハウゼン」というドイツ語っぽい発音の言葉に興味が引かれたからです。アスペルガー症候群やアルツハイマー病のように、最初の報告者の名前に由来するものなのでしょうか――。
もちろん調べるとすぐに分かりました。これは有名な「ほら吹き男爵の冒険」の主人公の名前なのです。しかも本名をミュンヒハウゼン男爵カール・フリードリヒ・ヒエロニュムスという実在の人物で、18世紀にプロイセン(かつてドイツ北部からポーランド西部にかけて存在した国)の貴族として生きた人です。
実務では誠実な人だったようですが、機知にとんだ話術にたけた人で、晩年は邸宅に人を集め、創作を交えた経験談を語っては人々を喜ばせたようです。その話があまりにも面白いので、ある人がこっそり話を記録して無断で出版したのが最初の「ほら吹き男爵の冒険(ミュンヒハウゼン男爵のロシアでの素晴らしい旅行と従軍の物語)」です。
男爵自身は出版に強く抵抗したみたいですが人気は高く、以後200年以上に渡ってさまざまな作家によって書き継がれてきました。
「ほら吹き男爵の冒険」の特徴のひとつは、出版されるたびに逸話が増え、脚色されて、どんどん本来のものから遠ざかってしまったことです。中には何世紀も前から流布していた民話が元になっているものも相当にあり、ミュンヒハウゼン男爵自身が本当に語ったものがどれくらいあるのかさえ分からなくなっています。そのあたりは日本昔話で読む「一休さんのとんち話」と同じようなところがあります。
もちろん調べるとすぐに分かりました。これは有名な「ほら吹き男爵の冒険」の主人公の名前なのです。しかも本名をミュンヒハウゼン男爵カール・フリードリヒ・ヒエロニュムスという実在の人物で、18世紀にプロイセン(かつてドイツ北部からポーランド西部にかけて存在した国)の貴族として生きた人です。
実務では誠実な人だったようですが、機知にとんだ話術にたけた人で、晩年は邸宅に人を集め、創作を交えた経験談を語っては人々を喜ばせたようです。その話があまりにも面白いので、ある人がこっそり話を記録して無断で出版したのが最初の「ほら吹き男爵の冒険(ミュンヒハウゼン男爵のロシアでの素晴らしい旅行と従軍の物語)」です。
男爵自身は出版に強く抵抗したみたいですが人気は高く、以後200年以上に渡ってさまざまな作家によって書き継がれてきました。
「ほら吹き男爵の冒険」の特徴のひとつは、出版されるたびに逸話が増え、脚色されて、どんどん本来のものから遠ざかってしまったことです。中には何世紀も前から流布していた民話が元になっているものも相当にあり、ミュンヒハウゼン男爵自身が本当に語ったものがどれくらいあるのかさえ分からなくなっています。そのあたりは日本昔話で読む「一休さんのとんち話」と同じようなところがあります。
【読み聞かせのアイデアにしておけばよかった】
正直に言うと、私は「ほら吹き男爵の冒険」について、一編の逸話ですら読んだことがないのです。
調べてあちこちから引用すると、
十羽ものカモを、猟銃を使わずにベーコンとひもで捕まえた話や、足が恐ろしく早いウサギを捕まえてみたらとんでもないウサギだった話、大きな怪物に船ごと飲み込まれてしまったが知恵をしぼって助かった話、チーズでできた島の話。
火打ち石がないから自分で自分の目をたたいて火花を散らし代用したとか、放った棒で一気何羽もの鳥を串刺しにしたとか、斧を投げたら月まで飛んでいって取り戻すのに難儀したとか、
およそくだらない物語ばかりです。しかしそこがいい。
私は我が子が2歳から10歳くらいになるまで毎日読み聞かせをしてきた人間です(二人の子の年齢差がありますから、合わせておよそ14年間やった)。しかし何を読むかについてはいつも苦労していました。
また小学校の教員としても読み聞かせをする機会が多く、「韓国の民話」「アラブの民話」みたいな面白くて長続きする良書に出会ってうまく行ったこともあれば、「銀河鉄道の夜」に手を出して授業を4時間も潰してしまった、ということもありました(絵を描かせたかった)。
調べてあちこちから引用すると、
十羽ものカモを、猟銃を使わずにベーコンとひもで捕まえた話や、足が恐ろしく早いウサギを捕まえてみたらとんでもないウサギだった話、大きな怪物に船ごと飲み込まれてしまったが知恵をしぼって助かった話、チーズでできた島の話。
火打ち石がないから自分で自分の目をたたいて火花を散らし代用したとか、放った棒で一気何羽もの鳥を串刺しにしたとか、斧を投げたら月まで飛んでいって取り戻すのに難儀したとか、
およそくだらない物語ばかりです。しかしそこがいい。
私は我が子が2歳から10歳くらいになるまで毎日読み聞かせをしてきた人間です(二人の子の年齢差がありますから、合わせておよそ14年間やった)。しかし何を読むかについてはいつも苦労していました。
また小学校の教員としても読み聞かせをする機会が多く、「韓国の民話」「アラブの民話」みたいな面白くて長続きする良書に出会ってうまく行ったこともあれば、「銀河鉄道の夜」に手を出して授業を4時間も潰してしまった、ということもありました(絵を描かせたかった)。